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42. アデルの回想
しおりを挟む「サファイア…」
サファイア達がいなくなってから何も手につかない。
僕はどうしてしまったんだ。
サファイア達がいない屋敷はこんなにも静かだったのかと改めて実感させられた。
猫の長老が心配そうに僕を見ている。
長老がこの時間に屋敷にいるのは珍しいな。
「長老…サファイアが屋敷を出て行ってしまったんだ」
『なぜ迎えに行かないんじゃ!早く迎えに行かないか!』
長老がニャーニャーと激しく鳴いている。
きっと僕を慰めてくれているのだろう。
猫の言葉が分かれば良いのにな。
こんな時、亡くなった犬のザジが居てくれたら…と思ってしまう。
ザジはサファイアのお気に入りで僕が嫉妬をするくらい仲が良かった犬だ。
優しくていつも側にいてくれる僕の友達だった。
サファイアが以前に誘拐された時にサファイアを守ろうとして、犯人と戦い大ケガをして年齢なのもあったけど天国に召されてしまった。
悲しい時はいつも側にいてくれたのにな…。
ボーとザジの事を考えていたら長老が部屋からいなくなっていた。外のパトロールにでも行ったのかな?
長老はこの辺り一体の猫のボスらしい。沢山の子供達がいて協力して暮らしているみたいだ。子供のうちの何匹かは連れて来たことがあるので知っている。
…そう言えばサファイアとの最初の出会いも長老が連れて帰って来たからなんだよな。
後からサファイアに聞いたのだが森の出口付近で困っていたサファイアに声をかけてついて来るように長老が言ったらしいんだよね。それがなければ僕はサファイアに出会うことが無かったんだよね…。長老に感謝しないといけない。
初めは何て可愛い猫なんだ!って思って世話していたんだけど…まさか満月の夜に人間に変身するなんて…驚きだったよ。
しかも、すごい可愛い女の子…一目惚れだった。
それまでの僕は誰に対しても興味なんて持てなかったし、何でみんながそんなに人に興味を持てるのか不思議でしかたなかったんだよね。だけど、サファイアに会えた事でその気持ちが理解できたんだ。
サファイアの全てを知りたい!
僕の事も知って欲しい!
僕以外の人と仲良くしないで!
僕だけを見てよ!
初めての恋心と嫉妬心、執着心…いろんな感情をサファイアから教えてもらえたんだ。
今は家族の愛情もだね。
この寂しいという気持ちを感じる事ができる様になったのもサファイアのおかげかな…。
僕は人形王子から人間になれたんだね。
寂しいよサファイア…早く僕の元に帰って来て欲しい。
待っているよ…。
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