上 下
39 / 54

39. サファイアの決意 〈サファイア視点〉

しおりを挟む


満月の夜に旦那様の驚きの発言があり屋敷の中は騒がしくなっていました。

「アデル様…あの猫にしてもらえるようにアフロディーテ様にお願いするというのは本気なのですか?」

確認のために聞いてみたが…。

「ああ、本気だよ。なぜ僕は今までこんな簡単な事を思い付かなかったのだろうかと思っているよ」

本当に残念そうにしているのが怖い…。

アデル様は一国の王様になろうとする方ですのに、満月の夜に猫になってしまうなんて許される訳がありません。

もし、本当に願いが叶えられでもしたら…それを他国に知られてしまったら大変なことになります!

何としてでもお考えを変えていただかなければなりません。

「今回はサファルまで猫になってしまって…僕だけ仲間外れみたいで嫌な気持ちがしたんだよね」

アデル様…少し悲しそうです。

って、駄目です!ほだされては!

「アデル様!考え直して下さいませ。たった1日とはいえ猫になるといろいろと不便ですよ…」

「そうかな?」

「ええ、猫になる本人が言っているのですから間違いはありません」

「具体的には?」

細かく聞きますね…。

「え…と、足が短いので移動に時間がかかりますし、お食事を食べるのも手を使えませんし、おトイレも…」

そこまで言うと顔が赤くなってしまいました。

おトイレも人に見られるので本当に恥ずかしいのです。

「マナーにうるさくない世界なんて素敵だと思うけどな」

そんな考え方ができるのですね。

確かにそうかもしれませんが…。

「それに…もし猫になれたとして、その情報が他国に知られて攻められたらどうされるのですか!」

「あー、確かにそれは困るかもね。でもな~」

まだ、言いますか?

「分かりました。私はアデル様の妻として何としても止めていただかないといけないと思っております。もし、本当にアフロディーテ様にお願いをされるのなら…家を出ていきます!」

「え!やだ!やだやだやだ!!絶対に嫌だ!!!」

アデル様が子供の様に駄々をこねています。

「何で?サファイアが出ていく事につながるの?」

「私だけではありません。サファルも連れて出ます」

「え…だから何で?」

「国の事を考えるからです。今すぐにあれば冗談だったと皆に言ってください!」

「え~…どうしても言わなくちゃダメ?」

「アデル様!」

私が睨むとアデル様はチラチラと視線を外したりしながらまたふてくされている。

「分かりました!サファルを連れて出ていきます!」

私はアデル様に背を向けて部屋を出た。

「サファイア~!」

アデル様の叫び声が聞こえましたけど無視ですわ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...