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30. 独り言ではありません
しおりを挟む今、この状況を誰が想像できたのだろうか…。
サファルには言葉を話さないようにと注意はしたが、赤ん坊がまったく泣かず黙って目を開けて横になっている。
使用人達が不気味に思っているのが手に取るように分かる。
そりゃ仕方ないよね…部屋に入って来たらまだ予定日でもないのに赤ん坊が生まれてたんだから。
しかも、生まれてすぐのはずなのに、全く泣かないし、寝ていない。
なぜこんな事になっているのかと戸惑いながら、皆仕事をしているといった感じだな。
執事のバルダに後でいろいろと聞かれるんだろうな…。
どこまで話すか頭が痛いな。
取りあえずは、黒繭問題は解決出来たものの、肝心のサファイアがまだ目を覚まさない。
サファルが体内から出てサファイアの身体の中の状態も落ち着いているはずなんだけどな…。
サファルを連れ出して聞いた方が早いのか?
しかし…。
サファルは本当に僕に似ているな…。
今更だが、何だか不思議な感じだな。
まだ、僕の子供だという実感がない。
これから実感するのかな…それとも僕が冷たいのか?
父親は母親に比べて我が子という実感が少ないと聞いた事があるが…こんなものなんだろうか。
僕がベッドに近づくとサファルが手を伸ばしてきた。
これは抱き上げろと言うことか?
僕は静かにサファルを抱き上げた。
すると、サファルが顔を僕の額にあてた。
『おとうさま…きこえますか?』
何だ!これはサファルの声?!
顔を離してサファルを見るとニヤリと笑っていた。
あ~、この顔は僕がイタズラする時の悪い顔と同じだね…。
僕はもう1度サファルと目を閉じて額をくっつけた。
『おかあさまはまだおきないよ』
「何でなんだ?」
『たいりょくをかいふくしているから』
「どれくらいで目覚めるのだ?」
『あと1日くらい』
「そうか…」
目を開けて周りを見ると使用人達からの視線が凄かった!
そうか!サファルの声は自分にしか聞こえていないので独り言を言っていると思われたのか!
「あ~、ゴホンッ…。サファル…可愛いな。よしよし…」
何とかごまかそうとサファルを抱きしめ頬擦りをした。
『おとうさまやめてください』
サファルが拒否している。
そう言われてもこの状況を見てみろ!と言いたい所だが今話すと独り言が続いている様に勘違いされてしまう。
我慢だ…。
「サファル、ちょっと散歩しようか~」
僕はサファルを連れ出してゆっくりと話そうとしたのだが…。
「「「「ダメです!!!」」」」
部屋にいる使用人達に反対されてしまった。
あ~、ストレスが溜まるなー!
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