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31. 幸せになる自信
しおりを挟む月日が経つのは早いものでもうお腹が限界まで膨れているので出産予定日はまだ先なのですが、出産準備の為に入院することになりました。
「菫ちゃん、それは全部僕がやるから座ってて。」
入院の準備をしようと動いていると賢人さんが慌てて私に近寄ってきます。最近は心配症がひどくなっている様に見えますが…。
「これくらいは自分で出来ますよ。」
私は産まれてきた赤ちゃんが着るお洋服をたたんでいたのだが、賢人さんに取り上げられてしまったので少し頬を膨らませて賢人さんに抗議しました。
「いや…そんな可愛い顔をしてま駄目だよ。スリムな菫ちゃんのお腹がこんなに大きくなっているんだ。いつか皮膚が切れるんじゃないかと心配なんだ。だから大人しく座っててよ。」
皮膚が切れる?そんな事を考えていたんですね。想像しただけでも痛そうです。
「あっ!」
私がお腹に手をあてて思わず声を上げてしまいました。
「え?どうしたの!?お腹が痛い?」
賢人さんが心配そうに私のお腹に手をあてます。
「「あ…。」」
2人の視線が合います。
「フフッ…この子達もパパに抗議しているみたいですよ。」
そう…お腹の中で手足をバタつかせているようで、お腹を触るとボコボコと当たる感覚があるんです。それに賢人さんも気がついた様です。
「いや…ママに大人しくしないと駄目だと抗議しているんだよ。」
また2人の視線があって思わず2人ともが笑ってしまった。
「「フフッ。」」
「ママ…。変な感じですね。」
ムズムズする感じがするというか。慣れないからなのでしょうか。
「そうだよね。あっ!でも2人きりの時は菫ちゃんって呼ぶからね。その時は僕もパパって呼ばないでほしい。」
賢人さんのこだわりですね。パパって私に呼ばれたくないのかしら?
「僕はいつまでも菫ちゃんとラブラブでいたいからね。」
まるで子供が誉めてほしい時にする様な顔をしています。
「ラブラブ…ですか。クスッ…言い方がおじさんみたいですよ。」
私がそう言うと賢人さんがショックを受けたようで口を押さえて固まってしまいました。
「…おじさんは否定できないからね。うん。でも菫ちゃんから言われると傷つくから今度からおじさんは禁句だ!」
おじさんは否定しないのですね。賢人さんは私のお腹に触れながら一生懸命に子供達に話しかけています。
「いいかい、ママを困らせたら駄目だよ。いくら可愛い君達でもママがパパには一番だからね。だからあまり強くお腹を蹴ってはいけないよ。ママが驚くだろ。」
もう教育をしているみたいです(笑)
産まれてきたら意外と教育パパになるタイプなのかしら。
「あ、もうこんな時間だ。菫ちゃん、病院に送って行くよ。」
時計を見たら出発予定より時間が過ぎていました。
「ありがとうございます。」
賢人さんの運転する車で病院に行き、入院の手続きもスムーズに終わりました。
「個室だけど…大丈夫そう?」
病院の個室には良い思い出が無いと思って聞いてくれているのですね。この数年で何回も個室に入院しましたからね。
「大丈夫です。気をつかってくれてありがとうございます。」
本当にここにくるまで色々な事がありすぎました。
こんな風に私が誰かを好きになってそしてその人と結婚して子供を産もうとしているなんて信じられません。
私は一生独身だと思っていましたからね。それか結婚するなら政略結婚とかでお見合いをしてするのだろうと…。
まさかこんなに誰かを愛する事が自分に出来るなんて…昔の私は考えもしていませんでしたからね。
「菫ちゃん、どうした?ボーとして、疲れた?」
いつも私の心配をしてくれる優しい旦那様。
「いえ…幸せだな~と思っていました。」
「え?どうしたの急に…。」
少し照れ笑いしながら賢人さんが私を見つめてくれています。
「賢人さんが私を見つけてくれて愛してくれたので私は人を愛するということ…そして家族を持つことができました。感謝しています。」
私は賢人さんの手を両手で握りしめました。
「菫ちゃん…。」
賢人さんは開いている方の手で私を抱き寄せます。
「僕の方こそ…感謝してる。僕を選んでくれてありがとう。愛してくれてありがとう。家族になってくれてありがとう。」
2人で静かな抱きしめ合います。
「産まれてくる新しい家族も絶対幸せにする。…というか僕が幸せになるから絶対に幸せになる。」
「何ですかそれ?賢人さんが幸せになるからですか?」
「そうだよ。僕が幸せになるから、皆を幸せに出来るんだ。菫ちゃんと子供達がずっと笑顔で暮らせるようにするよ。だって僕は幸せになる自信があるからね。」
「何ですかそれ?」
2人で見つめあい笑った。
そして優しく額にキスをされた。
「2人なら何があっても幸せになれるよ。」
優しい微笑みを見せる賢人さんにドキドキしてしまいます。
「あ!また赤ちゃんがお腹を蹴っています。」
「僕の言うことを聞いてなかったんだね。駄目だよ、ママと良い雰囲気だったのに邪魔をして。大人しくしてるんだよ。」
そう言い終わると…2人の唇が重なりました。
赤ちゃんの蹴りがおさまったのは偶然ですよね?
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