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29. あれ…もしかしたら
しおりを挟む色々と事件がありましたがあれから穏やかな日々が続いています。賢人さんは会社の有休を取って暫く私の側にいてくれましたが、今はしぶしぶ会社に行っています。
「菫ちゃん、絶対に知らない奴が来ても家のドアを開けてはいけないからね。」
子供に言うような事を真剣な顔で言っている賢人さんが可愛らしく見えてしまうのは私だけなのでしょうか?
「大丈夫です。子供ではないのでそこまで心配しないで下さい。」
私が思わず吹き出して笑っていると賢人さんも笑顔になりました。
「幸せだね…。普通の毎日が幸せってこういうことなのかと思えるよ。」
笑顔で私を見つめる賢人さんにキュンキュンしてしまったのは仕方ないですよね。
「行ってくるね。」
私をギュッと抱きしめてから賢人さんは見えなくなるまで何度も後ろを振り返りつつ会社に行きました。
「普通の毎日が幸せ…か。」
賢人さんは何気なく言った言葉を私は噛みしめていました。
本当にそうよね。
何も無さすぎると退屈に感じてしまうこともあるけれどそれは幸せに慣れてしまっているのかもしれないわ。
誰が言った言葉かはわかりませんが「人生にはスパイスが必要」って聞いたことがありますが上手い表現だと思います。
たまに刺激的な事があるから幸せの確認ができているのかも…。でもこれって危険な考え方なのかしら?
「はぁ~。」
不意に溜め息が出てしまいました。
賢人さんには言えていませんが最近どうも体調が優れないのです。
色々とありすぎたので気が抜けて一気に疲れが出たのかと思っていたのですが長引いているのが気になるのです。
「やっぱり病院に行った方が良いのかしら…。」
病院に行く…。何だか少し気が進まないのです。トラウマになってないとは思うのですが以前の様にすぐに行こうとは思えないのです。
だけどもしも病気だったら大変よね…。
何気無い普通の毎日が過ごせなくなってしまうもの。やっぱり駄目!
私は思い腰を上げて病院に行くことにしました。
賢人さんが帰ってくるまでに全て終わらせたかったので家から一番近い病院に行くのが良いかもしれないわね。
携帯で検索して行ってみるとまだ建物は新しい感じのする小さな診療所という感じの病院です。
入ってみると感じの良い受付の女性に「初診の方はこちらを書いてお待ちください。」と言われて紙を渡されました。
人が待合室で沢山待っています。人気のようですね。
私は渡された紙に記入しながら待っていました。そこで一つ気になる箇所があったので止まってしまいました。
あれ…もしかしたら…。
もしかするのでしょうか?
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