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16. 目覚めるとそこは…
しおりを挟む目を開けるとそこには知らない景色が広がっていた。
「病院じゃない…。ここは…?」
重たい目蓋を擦りながら身体をベッドから起こし周りを見渡す。
スッキリとした無機質な感じの部屋。ベッドがあるだけで他には何もない。カーテンもベッドのリネンも全て黒色で統一されている。
ベットから見える景色は空だけ…。空が近いようなきがする…高層マンションなのかしら。
なぜ私はここにいるのかしら。確か…。
…そうだわ!病院で傷の抜糸をしてもらった後に急に眠くなってしまって意識をなくしたんだった。
あの時、棚澤医師の様子がおかしいことに気がついて…。
じゃあ、ここはもしかして棚澤医師の家?
心臓が速く動いているのが自分でも分かります。
この状況が今までの経験から良くないという事が分かっているからです。
「家まで連れて来られたのは久しぶりですわね…。油断していましたわ。」
私は溜め息をつきながら呟きました。
幼い頃から何度も誘拐犯やストーカーに遭遇してきました。しかし、家まで連れ去られたのは2回程しかありませんでした。
最初とボディーガードの人の時ぐらいです。
最初の誘拐犯の時よりあとは両親が私にボディーガードをつけてくれましたが、その人にも誘拐され…。その後は両親と祖父母が交代で私に付き添うようになりました。
それでも少しの隙をねらって声をかけられたり拐われたりとしたので結局は海外の全寮制の学校に行くことになったのです。
以前は気をつけていたのですが海外生活が長かったせいか気が緩んでいたのかもしれません。
「駄目ね…私…。皆に心配をかけているかも…。」
静かな部屋では私の小さな声でも…。
あれ?今気がつきましたけど窓が二重になっているわ。それに窓自体にも薄いフィルムが貼られている。これってガラスが飛び散らない様にする飛散防止のシートよね…。
嫌な予感しかしません。
目線を窓と反対方向にある部屋の扉に移しました。
鍵が二重に取り付けられています。しかも1つはこちらからは開けられない仕様になっているのが確認できました。
この部屋からは1人で出ることは出来ないということですね。
この部屋をいつから用意されていたのかしら…。
考えるだけで背筋が寒くなります。
どうやったらこの部屋から出られるの。誰かが助けに来てくれないと無理な状況よね。だけど…。
誰が気づいてくれるだろう…。
棚澤医師は賢い人だと思う。そう簡単には私の事を人に話さない様な気がします。
いつも病院で見かけていた棚澤医師は患者さんからの信頼も厚く監禁するような人にはとても見えない。誰も疑わないんではないかしら。
あの直前まで一緒にいた看護師さんがおかしいと思ってくれないかしら…。
…たぶん無理よね。以前少し話をした時に棚澤医師の事がタイプなんですって言っていたもの。そんな人を疑うなんてしないわよね…。
「はぁ~。」
どう考えても良い案が浮かばない。八方塞がりとはこういうことを言うのかと思ってしまう。
身体も思うように動かせないし、気持ちも重い。
こういう時は良いことを考えないといけないのよね…。そう考えるが何も思いつかない。
きっと賢人さんが助けに来てくれる。今の私に思い付く良いことをはこれくらいね。
両親も探してくれるだろうけど、どこか的を得ていない所があるのよね…。
ボディーガードに誘拐された時も、誘拐犯であるボディーガードの言うことを信じて全然違う所を探していたのを祖父母が気がついて助けてくれたのよね。あの時から両親はあてにならないと悟ったのよ。懐かしい話だわ。
今回も棚澤医師の言うことを両親は信じていそうだわ。賢人さんは細かいところまで気がつく人だから棚澤医師の嘘に気づいてくれると信じたい。
今、私に出きることは体力を温存しておくことね。
あとは信じて待つのみ…か。
賢人さん…速く見つけてくれると信じています。
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