全寮制男子校

mmkz

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ワカメが襲われて数日が過ぎた。

朝登校したら一階の掲示板に襲った三年生の処分が張り出されていて…。
ああ…こりゃあ進学はなくなったな。馬鹿な奴らだ。己の欲望で人生をダメにするなんて…。
 

そう言えばワカメのその後だが怪我の具合も良くなり食堂で会っても特に暴走したりはしなくなった。
やっと五歳児から年相応に進化しようとしてるんだろう。
翔には酷い怯えを見せているが色々頑張ってんだなって思う。
だから俺は素直に応援してやりたいって思った。



「ふぁ…だりぃ…」



「俺もだりぃ。ってか今日なんか放課後全校集会あるってよ」



俺の腰に手を回して翔が怠そうだ。和也も俺に寄りかかってくる。
ってか重いんだよ…二人とも自分のサイズを分かってないんじゃないのか?
まぁ…いつものか。



「全校集会?そんな連絡あったか?」



「先生言ってたぜ。昨日の放課後に話してたっけ?確か。ってか剛爆睡だったんだよ」



「あぁ…窓側の席って暖かくて眠くなるんだよ」



「大丈夫だ。剛…俺も寝てた」




この時期の窓側の席は本当に気持ちがいい…。
しかし連絡をしていた先生に申し訳ない気持ちになる。
そうか放課後に全校集会あるのか…。まぁなんかの連絡事項だろう。


特に深く考えず放課後を迎えた。



講堂の二年席に座って何が始まるのか待っているといつもの歓声が湧き上がった。



「「うるせぇ…」」



二人の眉間が凄いことになってる。



「いつもの事だろ。今更だって…はぁ…早く終わって飯食いてぇ」




「俺はお前が食いたい」



翔がにじり寄ってくる。眼が据わっているのは気の所為ではない。分かっているのだ。
翔との絡みは最近ない…。
なんかそろそろ暴発しそうな翔のオーラが怖い。



「おいっ!やめろっ」



下手したらキスされるんじゃないか?ってくらい顔が近くなった…グッと押し返し何とか翔を抑えた。

やべぇ…何処でも盛るようになってやがる…。




「皆さん!放課後集まってくださってありがとうございます。
今日集まって頂いたのは四月から新しく就任した理事長が長期出張を終え入学式に挨拶出来なかった事を悔やんでおり…その事を受け生徒会はこの時間を設け理事長に挨拶を行ってもらう事にしました。
特に一年生…ちゃんと聞いてください。それではお願いします」



なんと面倒さい事か…。
ってか理事長って新任だったんだな。それだったら一年だけで良かったじゃないか。
一気に上級生のテンションが下がっているのは分かる。
しかし壇上に上がった理事長を一目見て歓声がまた上がった。


若けぇ…。
まだ20代だろう。背が高くスタイルが良い。
パリッとしたスーツを着こなして黒髪を丁寧にセットをして眼鏡を掛けた美丈夫が挨拶を始めた。



「皆さん。私の我儘で集まってもらってすまない。私は今期からこの学校の理事長を務めることになった畠山紀之(ハタケヤマ ノリユキ)だ。
仕事の都合で入学式に挨拶出来ずとても残念だと思っていたよ…。
それで考えたんだが今週の土日を使って全学年で交流キャンプしようと思っている」


ニッコリいい笑顔で言い放った言葉に生徒が弾けるように話し始める。



『キャ…キャンプ!!!』
『何それ!!もしかして…学年が入り乱れる…』
『えぇ!憧れのあの方にお近づきできるの!!!?』
『俺!狙ってるヤツいる!ヤる!ぜってぇヤる!!』


理事長が言った言葉が講堂を一気にライブハウスに変えた瞬間だった。
うるせぇ…。
何かすげぇ事言ってる奴もいるが理事長よ。俺は嬉しくねぇ…。



「何でこんな時期に…ちっ…」



「「同感だ…」」



翔の舌打ちに俺と和也が答える。土日位ゆっくり休みたい。
この年で何が楽しくてキャンプなんぞやらないといけない?
俺達のテンションはこの体育館の雰囲気の全くの真逆だった。


「今はキャンプが流行っているから全校生徒が楽しめるように私が全力でサポートするから楽しんで欲しい。
詳しい話は明日担任から話があると思うからよろしく頼むよ。
一年生はこの学校に入ってよかったと思ってもらいたいしね…。さて私の話は以上だ。話を聞いてくれてありがとう。
それでは失礼するね」



終始ニコやかに勝手に話を完結した理事長。俺たち不満側の生徒の拒否権はないらしい。
この学校は行事をサボったら処分対象だ。
何時までも嫌な気持ちで居るのも怠くなり前向きに思考を変える。



「キャンプならBBQだよな…肉食えるな」




「あっ!それ忘れてたわ。剛と美味しいものを食えるなら良いかもしれないな」




「そうだな。まっ行くしかないだろう。それなら三人で楽しんだほうがいい…」




全校集会も解散になり俺達は帰った。明日どんな説明あるのか分からないが老体に鞭打ってる先生の負担になりたくないと思った。



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