全寮制男子校

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2ーCが活躍した球技大会が終わって一週間が経った。ふと思った事がある。
若潮に飯を奢ろう。翔にサッカーでボコボコにされて居たしな…。

無料は一ヶ月しか期間が無いので早い方が良いと思ったのもある。
 
しかも今日は都合が良い。

翔は家の用事で一時帰宅しているし和也は新歓でチームを組んだクラスメイトと予定を入れられていた。
どうせ一人で飯を食べるより可愛い後輩と食べようと授業終わりの放課後に若潮が居る1ーBに向かう。


多分忘れていたんだ俺は…。ワカメと後輩が同じクラスだって事を…。


教室に近づいて行くと俺を見た一年達が騒いでる。まぁ滅多に一年の教室には行かないから当然かと思う。


そして若潮の教室に到着した。
まだクラスには人が結構残っている。これなら居るだろうと廊下側の生徒に声を掛ける。



「すまない…若潮を呼んでくれないか?」



『はっはい!』



一気に顔を真っ赤にして若潮の所に猛ダッシュして行った一年。上がり症なのか?どうでも良い事を若潮が来るまで考える。



「あ!剛さん!どうしたっすか?」



「いや…今日俺暇なんだよ。良かったら一緒に夜飯食わねぇか?どうせタダだし」



「えっ!良いんですか?良かったらお願いします!邪魔にならない様にしますんで」



「いつもの二人は用事で居ないから気を楽にしてくれ。
じゃあ夜七時に部屋に来てくれ。二年棟の208だから」



「二人が居ない…(チャンスか!?)あ!了解です!時間になったら行きます!」




良い返事だ。
俺は若潮の頭を撫でて(またやってる…)立ち去ろうとした時だった…。




「あーーーーー!」




全方から橋本を引き連れてワカメが俺をオックオンして向かってくる。俺はそれで思い出したのだ。



「そう言えば…同じクラスだったな…」



「くっ!すんません…」




申し訳なさそうに若潮が項垂れる。いや…若潮の所為では無いので俺の全然使えない対人スキルを頭から引っ張り出してくる。




「何でお前がここにいるんだ!ここは俺の教室だぞ!」




知ってるよ。
俺の対人スキルは何の役にも立たなかった。
でもよ…俺は先輩だこんなクソでも後輩なんだ。キレようとする俺の頭を頑張って鎮めてみる。
しかしこいつは何回俺がキレても効果が無いので本当にどう対応して良いのか分らない。



「若潮に用があったんだ…もう終わったから帰るとこだったんだよ。」


「俺のセイジになんの用だよ!!」



「それはお前には関係ない」



「っ!それを決めるの俺だ!そうか!お前だろ!?セイジを誑かしてるのは!あいつ最近の傍にきてくれないんだ!」



「本人に聞いたら良いじゃねぇか…俺は関係ない」




話だけ聞いていたらワカメは若潮を好きって事だよな…?なのに自分から傍に行かないで生徒会や橋本と一緒にいる。本当にワカメの思考が分からない。




「ごっ…!先輩どうしたんっすか?」




騒ぎを聞きつけ若潮来た。お前今俺の名前を呼ぼうとしたろ?まぁこいつはもう俺に興味は無いだろう。俺の名前はもう聞いてこない。



「なんかこいつがお前が傍に居ないと寂しいって言ってるぞ」



「ちょ!なんてこと言うんだよ!ただ若潮は友達だから友達は俺のだろ!?だから俺の傍にいないとダメなんだよ!」



「お前が何てこと言うんだよ!」



若潮よ…良いツッコミじゃねぇか。
これは何も言わないで傍観が一番だな…。
でも何故かワカメは俺を攻撃対象として文句を言ってくる。そんなに殴られたのが悔しいか?




「くそ!なんでこんなヤツにっ!お前本当に最低だな!二年のイケメンと常に一緒にいて!若潮も好きなのか!!ズルいぞ!」



「はっ?お前自分で何言ってるか分かってんのか?」




この会話のやり取りに呆れてしまう。もうここに居ても拉致があかない。



「若潮…俺は先に行く。後でな」




制止される前に踵を返す。うちの学校は四階に1年生の教室があり三階に二年の教室が入ってる。
上級生になれば階段を上がる段数が少なくなる。

さて…自分の荷物を取りに階段を降りようとした。
ん?何か聞こえるぞ…。
そこで気づく物凄い足音と怒号が俺の背後から聞こえくる。
なんだ?と振り返ったら俺の身体はもう地面から離れていた。

階段から落とされたのは分かった。取り敢えず頭を守らないと…。
スローモーションの様に周囲が見える。若潮に羽交い締めにされているワカメや引きつった顔をしている橋本。周りの生徒。




もうすぐ地面に叩きつけられると覚悟した。




「うおっ!ぶねっ!」




多分ワカメに逢いに来たんだろう。俺が階段から降ってきたのに己の身体を盾にして俺のクッションになってくれた会長に感謝する。
でも当たり所が悪かったみたいだ…。



「ぐぁ…っ…」



「おい!大丈夫か?っ何があった!?」



頭が痛い。
額が濡れている感覚がある。説明しようにも苦しくて声がでねぇ…。



「俺は!悪くないこいつばっかり目立つから!カズヤとか本当は俺と居たいんだ!もう一人はもうすぐ友達になるからあいつも俺と居たいんだ!お前だけずるいぞ!」



「祐が…やったのか?」



「こいつがやったんだ!剛さん!大丈夫ですか!クソっ!橋本保健室に…」



「頭を打ってる!動かすな…救急隊を呼ぶ。祐!お前には聴きたい事がある。そこのお前っ!祐を生徒会室に連れけ行け」



俺の傍に若潮と橋本が居るのが分かる。身体が全然動かない。若潮がタオルで俺の頭を抑えてくれていた。助かる…。
俺の周りだけが忙しなく動いているのは分かった。



「剛さん…っ…」



何故か切なそうな橋本の声が聞こえてきた。俺が覚えているのはそこまでだった。
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