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第三十二話 荒れ果てた城
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「お、王妃?」
「伯爵夫人じゃ不満か、ってことだ。侯爵領を継げば王妃同然の身分になるけど、まだ先だしな。セント・ヘレニアの王妃になりたかったんだろ?」
「セント・ヘレニアの?」
思わず声が裏返り、オウムのように繰り返してしまう。
「お、王妃になりたかったのは・・・それが私に期待された仕事・・・いわば任務のようなものだったからです。今は責任を負わなければならない一族もいませんし・・・」
「そっかー?じゃあ、リエールの王座いらない?」
「・・・」
考えたこともない。
さっきまで、王のいやらしい手から逃れたいとそればかりを考えていたのに・・・
「私、王妃になりたいわけじゃありません」
「そうか?」
「本気です。今は・・・」
ルシアナはケイレブの耳に口を寄せて小さな声で囁いた。
「はやく、ふたりきりになりたいです」
「よしっ!!」
ケイレブが騎士たちに向かって大きな声で叫んだ。
「おい、お前たち!俺は先を急ぐからな。今日の宿は手配したのか?」
「野宿ですよ、若殿。当たり前でしょ」
「ルシアナ用のテントは」
「準備する暇も与えずに飛び出してきたじゃないですか。寝るなら馬の背で寝ろって言いましたよね?」
「兵糧集めるのが精一杯でしたよ。急げ急げって急き立てて」
「くそっ!!」
ケイレブが悔しそうに歯噛みすると、騎士たちは全員大笑いした。
「まあ、いいじゃないですか!奥方が返ってきたんですから!」
「ヒューヒュー」
冷やかされ、ルシアナの頬は真っ赤に染まった。
いつの間にか、兵士たちはルシアナをケイレブの妻として、当然の存在として受け入れてくれていた。
ただ、それがうれしかった。
ケイレブの兵は二手に分かれ、ビルを隊長とする部隊がクローディーヌ妃をハイランドまで送っていった。
その後、アバルから侯爵の名代がハイランドを訪れ、正式な同盟が結ばれた。
リエール王は、ケイレブの言った通り城壁から吊るされた・・・らしい。
クローディーヌ妃が国を去ると同時にハイランドとの同盟が破棄され、国を弱体化させた責任を問われたと表向きには伝えられているが、本当は家族や恋人をひどい目にあわされた自分の護衛騎士たちに殺されたらしいと、風の噂で聞いた。ケイレブはその話しを聞いてもひょうひょうと笑っていた。
「ま、新しい王がまともなら同盟を結んでやってもいいがな」
ですって。
********************
そしていま、ルシアナは目の前の皿の中に浮かぶ緑色のなにかを見て呆然としていた。
「奥様、お口にあうかわかりませんが・・・」
(お口にあうって・・・これ、ただの草じゃない?)
ケイレブの城に連れて行かれたときには、その荒廃ぶりに気を失いそうになった。
(もしかして、リエールをくださいって言ったほうが良かったのかしら?)
ちらりとそんなかんがえすら頭をよぎる。
不吉な予感はした。
リエールを出てから10日ほど馬で移動したが、近づくにつれ、道がなくなっていった。
石畳の道は領地に入った途端に姿を消した。かつては石畳がしっかりと敷かれていたのかもしれないが、今は見る影もなく、敷石はどこかに転がり、草やひどいところは木までもにょきにょきと伸びていた。
さらに、城に近づくと、城壁は崩れ落ち、防御の役目をはたしていない。敵が攻めてきたらひとたまりもないだろう。
しかも、城そのものの壁もところどころ残っているだけで、下で寝られる屋根を探す必要があるほどだ。
リエールは後宮すら豪華絢爛だったのに、ここは廃墟、とでもいったほうがいいありさまだ。
城に到着すると、入口で出迎えたのは、やせっぽっちの子どもたちばかりだった。
みな顔も体も洗っていないらしい。シラミ等だけの髪の毛と垢の匂い・・・
(修道院で恵まれない方のお世話をしていてよかった。今の私には理解できる。この子どもたちには世話をする人がいないんだわ)
ルシアナが微笑みかけると、子どもたちは歓声を上げた。
「うわあ!すごい美人だ!」
「この人が奥方様?」
「俺達のかあさんになってくれるんだろ!」
「かあさん!?うれしいなあ」
(か、かあさん?ではこの薄汚れた子どもたちは、ケイレブの隠し子?)
ルシアナが目を見開くと、ケイレブが慌てた。
「ち、ちがうぞ!ルシアナ。コイツらはみんなみなしごだ。この城に住み着いてたんだよ。領主は親も同然だから、そういう意味だから!」
「そ、そうですか・・・安心しました。お子がいらっしゃるのなら先に仰ってくださいな」
「だから、いないってば!」
なんだかもやもやしていると、大人の使用人らしい人たちが姿を見せた。
「旦那様、おかえりなさいまし!婚約者の方をお連れになったんですね!」
(こ、婚約者?いたの?!)
ルシアナがケイレブを振り返ると、ケイレブがぶんぶんを首を振った。
「婚約者ではない。妻だ」
「奥方様ですか!なんと美しい」
「だろ?」
「よくいらっしゃいました。領民一同、奥方様のことを心からお待ちしていました」
全員が両手を上げてルシアナを歓迎している。いままで悪女とか悪役令嬢と言われ、石を投げられていたのに・・・・
その喜びぶりは、異常にさえ見える。ルシアナは首をかしげた。
なぜここまで?
「まあ、そのうちわかるさ」
ケイレブがルシアナの前をすたすたと歩き、城に入っていった。
「少しはまともになったのか?」
「一応、領主様の部屋と大広間でお休みいただけるようにお部屋を整えております・・・もちろん、屋根もありますから、雨もしのげます」
「そうか!それは良かった!短い期間によくやってくれた」
「お食事もご用意しております。子どもたちがどうしてもと言うものですから、奥方様にスープをご用意しております」
「・・・あの、スープか?」
「世界で一番美味しいスープをお出しすると言い張っておりまして・・・」
領主夫妻の部屋は狭いが、なんとかプライバシーが保てるような空間になっていた。
領主以外の騎士たちは大広間で眠る。
ベッドもなく、藁布団らしきものが床に置いてある。だが、この城の中で一番いい寝具に違いない。
「いやーーー、言う機会がなかったんだけど。管理人に騙されて、城が荒れちまったんだ。ごめんな?」
無言で周りを見まわすルシアナを見てケイレブが申し訳無さそうに言った。
正直、驚いた。アバルは田舎なので繊細さに欠けるが立派な城だったし、最初に与えられた使用人の部屋にすらベッドがあった。
まさか、こんなに荒れ果てているとは・・・
「修道院に行ってよかった」
「ん?」
「修道院に行かなければ、この環境に悲鳴を上げていたかも」
「そうか」
「ええ」
そのままルシアナは黙りこくった。
ケイレブは不安になった。もし、ルシアナに見限られたら・・・あの使者に王都に連れて返ってくれと願えばいつでもここを離れることができるのだ。
「あのさ」ケイレブが王都の屋敷で暮らすことを提案しようと口を開いたとき、使用人頭が「お食事です」と声をかけた。
無言のまま案内されると、大広間には伯爵の帰還に合わせたのか、テーブルらしきものが置かれていた。
切り倒した木を削り、荒削りな板を渡しただけのテーブルに、切り株の椅子。
そのテーブルの上には、大きな葉に乗せられた料理が並べられているが、料理と言っていいのか、素材そのものに見えた。パンは固くてぺちゃんこだし、焼いた肉とサラダ代わりの比較的やわらかそうな葉っぱ、茹でただけの芋・・・
そして、一番手が混んでいる料理として今、ルシアナの前に木の椀に盛られたスープが置かれた。
木の椀も手作りだろう。
その中に浮かぶ、得体のしれない緑色のどろどろとした怪しい塊・・・
「・・・おいしそう・・・」
「棒読みだな」
「感情が外に出にくいんです」
「へえ?」
ケイレブは面白がって、ひじをテーブルに付いた。
ルシアナには食べられないと思っているに違いない。
修道院で気楽に過ごしていたと思っているのかしら?こんなスープすらいただけない日があったんですからね!
意地になったルシアナはぐいっと緑の塊ごとスープを飲み込んだ。
ごくごくとルシアナの繊細なのどを怪しいスープが伝い落ちていく。
「おおっ」
騎士たちがルシアナを見つめて驚いている。
とん、と椀を置くと、キラキラとした瞳で子どもたちがルシアナを見つめていた。
「お、美味しかったわ。ありがとう」かなり、草そのものだったけど・・・気持ちは伝わったわ、との意味を込めて子どもたちを見返す。
「そうでしょう?こんなに美味しいもの、俺食べたことなかったんだ!」
「私も!」
子どもたちがうれしそうに笑顔を交わしている。
「ふふふ・・・そうね。私もよ」
ルシアナが笑顔を向けると、全員が歓声を上げた。
騎士たちは拍手を送りそうないきおいだ。
「さすがだな、ルシアナ・コンラッド。お前たち、伯爵夫人に乾杯だ」
「おおっ!カンパーイ」
騎士たちの歓声が大広間に響きわたり、キャッキャとよろこぶ子どもたちの声が混じった。
どうやら、ルシアナは居場所を見つけられたらしい。
「伯爵夫人じゃ不満か、ってことだ。侯爵領を継げば王妃同然の身分になるけど、まだ先だしな。セント・ヘレニアの王妃になりたかったんだろ?」
「セント・ヘレニアの?」
思わず声が裏返り、オウムのように繰り返してしまう。
「お、王妃になりたかったのは・・・それが私に期待された仕事・・・いわば任務のようなものだったからです。今は責任を負わなければならない一族もいませんし・・・」
「そっかー?じゃあ、リエールの王座いらない?」
「・・・」
考えたこともない。
さっきまで、王のいやらしい手から逃れたいとそればかりを考えていたのに・・・
「私、王妃になりたいわけじゃありません」
「そうか?」
「本気です。今は・・・」
ルシアナはケイレブの耳に口を寄せて小さな声で囁いた。
「はやく、ふたりきりになりたいです」
「よしっ!!」
ケイレブが騎士たちに向かって大きな声で叫んだ。
「おい、お前たち!俺は先を急ぐからな。今日の宿は手配したのか?」
「野宿ですよ、若殿。当たり前でしょ」
「ルシアナ用のテントは」
「準備する暇も与えずに飛び出してきたじゃないですか。寝るなら馬の背で寝ろって言いましたよね?」
「兵糧集めるのが精一杯でしたよ。急げ急げって急き立てて」
「くそっ!!」
ケイレブが悔しそうに歯噛みすると、騎士たちは全員大笑いした。
「まあ、いいじゃないですか!奥方が返ってきたんですから!」
「ヒューヒュー」
冷やかされ、ルシアナの頬は真っ赤に染まった。
いつの間にか、兵士たちはルシアナをケイレブの妻として、当然の存在として受け入れてくれていた。
ただ、それがうれしかった。
ケイレブの兵は二手に分かれ、ビルを隊長とする部隊がクローディーヌ妃をハイランドまで送っていった。
その後、アバルから侯爵の名代がハイランドを訪れ、正式な同盟が結ばれた。
リエール王は、ケイレブの言った通り城壁から吊るされた・・・らしい。
クローディーヌ妃が国を去ると同時にハイランドとの同盟が破棄され、国を弱体化させた責任を問われたと表向きには伝えられているが、本当は家族や恋人をひどい目にあわされた自分の護衛騎士たちに殺されたらしいと、風の噂で聞いた。ケイレブはその話しを聞いてもひょうひょうと笑っていた。
「ま、新しい王がまともなら同盟を結んでやってもいいがな」
ですって。
********************
そしていま、ルシアナは目の前の皿の中に浮かぶ緑色のなにかを見て呆然としていた。
「奥様、お口にあうかわかりませんが・・・」
(お口にあうって・・・これ、ただの草じゃない?)
ケイレブの城に連れて行かれたときには、その荒廃ぶりに気を失いそうになった。
(もしかして、リエールをくださいって言ったほうが良かったのかしら?)
ちらりとそんなかんがえすら頭をよぎる。
不吉な予感はした。
リエールを出てから10日ほど馬で移動したが、近づくにつれ、道がなくなっていった。
石畳の道は領地に入った途端に姿を消した。かつては石畳がしっかりと敷かれていたのかもしれないが、今は見る影もなく、敷石はどこかに転がり、草やひどいところは木までもにょきにょきと伸びていた。
さらに、城に近づくと、城壁は崩れ落ち、防御の役目をはたしていない。敵が攻めてきたらひとたまりもないだろう。
しかも、城そのものの壁もところどころ残っているだけで、下で寝られる屋根を探す必要があるほどだ。
リエールは後宮すら豪華絢爛だったのに、ここは廃墟、とでもいったほうがいいありさまだ。
城に到着すると、入口で出迎えたのは、やせっぽっちの子どもたちばかりだった。
みな顔も体も洗っていないらしい。シラミ等だけの髪の毛と垢の匂い・・・
(修道院で恵まれない方のお世話をしていてよかった。今の私には理解できる。この子どもたちには世話をする人がいないんだわ)
ルシアナが微笑みかけると、子どもたちは歓声を上げた。
「うわあ!すごい美人だ!」
「この人が奥方様?」
「俺達のかあさんになってくれるんだろ!」
「かあさん!?うれしいなあ」
(か、かあさん?ではこの薄汚れた子どもたちは、ケイレブの隠し子?)
ルシアナが目を見開くと、ケイレブが慌てた。
「ち、ちがうぞ!ルシアナ。コイツらはみんなみなしごだ。この城に住み着いてたんだよ。領主は親も同然だから、そういう意味だから!」
「そ、そうですか・・・安心しました。お子がいらっしゃるのなら先に仰ってくださいな」
「だから、いないってば!」
なんだかもやもやしていると、大人の使用人らしい人たちが姿を見せた。
「旦那様、おかえりなさいまし!婚約者の方をお連れになったんですね!」
(こ、婚約者?いたの?!)
ルシアナがケイレブを振り返ると、ケイレブがぶんぶんを首を振った。
「婚約者ではない。妻だ」
「奥方様ですか!なんと美しい」
「だろ?」
「よくいらっしゃいました。領民一同、奥方様のことを心からお待ちしていました」
全員が両手を上げてルシアナを歓迎している。いままで悪女とか悪役令嬢と言われ、石を投げられていたのに・・・・
その喜びぶりは、異常にさえ見える。ルシアナは首をかしげた。
なぜここまで?
「まあ、そのうちわかるさ」
ケイレブがルシアナの前をすたすたと歩き、城に入っていった。
「少しはまともになったのか?」
「一応、領主様の部屋と大広間でお休みいただけるようにお部屋を整えております・・・もちろん、屋根もありますから、雨もしのげます」
「そうか!それは良かった!短い期間によくやってくれた」
「お食事もご用意しております。子どもたちがどうしてもと言うものですから、奥方様にスープをご用意しております」
「・・・あの、スープか?」
「世界で一番美味しいスープをお出しすると言い張っておりまして・・・」
領主夫妻の部屋は狭いが、なんとかプライバシーが保てるような空間になっていた。
領主以外の騎士たちは大広間で眠る。
ベッドもなく、藁布団らしきものが床に置いてある。だが、この城の中で一番いい寝具に違いない。
「いやーーー、言う機会がなかったんだけど。管理人に騙されて、城が荒れちまったんだ。ごめんな?」
無言で周りを見まわすルシアナを見てケイレブが申し訳無さそうに言った。
正直、驚いた。アバルは田舎なので繊細さに欠けるが立派な城だったし、最初に与えられた使用人の部屋にすらベッドがあった。
まさか、こんなに荒れ果てているとは・・・
「修道院に行ってよかった」
「ん?」
「修道院に行かなければ、この環境に悲鳴を上げていたかも」
「そうか」
「ええ」
そのままルシアナは黙りこくった。
ケイレブは不安になった。もし、ルシアナに見限られたら・・・あの使者に王都に連れて返ってくれと願えばいつでもここを離れることができるのだ。
「あのさ」ケイレブが王都の屋敷で暮らすことを提案しようと口を開いたとき、使用人頭が「お食事です」と声をかけた。
無言のまま案内されると、大広間には伯爵の帰還に合わせたのか、テーブルらしきものが置かれていた。
切り倒した木を削り、荒削りな板を渡しただけのテーブルに、切り株の椅子。
そのテーブルの上には、大きな葉に乗せられた料理が並べられているが、料理と言っていいのか、素材そのものに見えた。パンは固くてぺちゃんこだし、焼いた肉とサラダ代わりの比較的やわらかそうな葉っぱ、茹でただけの芋・・・
そして、一番手が混んでいる料理として今、ルシアナの前に木の椀に盛られたスープが置かれた。
木の椀も手作りだろう。
その中に浮かぶ、得体のしれない緑色のどろどろとした怪しい塊・・・
「・・・おいしそう・・・」
「棒読みだな」
「感情が外に出にくいんです」
「へえ?」
ケイレブは面白がって、ひじをテーブルに付いた。
ルシアナには食べられないと思っているに違いない。
修道院で気楽に過ごしていたと思っているのかしら?こんなスープすらいただけない日があったんですからね!
意地になったルシアナはぐいっと緑の塊ごとスープを飲み込んだ。
ごくごくとルシアナの繊細なのどを怪しいスープが伝い落ちていく。
「おおっ」
騎士たちがルシアナを見つめて驚いている。
とん、と椀を置くと、キラキラとした瞳で子どもたちがルシアナを見つめていた。
「お、美味しかったわ。ありがとう」かなり、草そのものだったけど・・・気持ちは伝わったわ、との意味を込めて子どもたちを見返す。
「そうでしょう?こんなに美味しいもの、俺食べたことなかったんだ!」
「私も!」
子どもたちがうれしそうに笑顔を交わしている。
「ふふふ・・・そうね。私もよ」
ルシアナが笑顔を向けると、全員が歓声を上げた。
騎士たちは拍手を送りそうないきおいだ。
「さすがだな、ルシアナ・コンラッド。お前たち、伯爵夫人に乾杯だ」
「おおっ!カンパーイ」
騎士たちの歓声が大広間に響きわたり、キャッキャとよろこぶ子どもたちの声が混じった。
どうやら、ルシアナは居場所を見つけられたらしい。
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