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第十話 つらい過去
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※トラウマ注意※
ルシアナが襲われる場面があります。過去のことですが、閲覧にご注意ください。
********************
体の下には、冷たい石畳。背中から入り込み冷たさだけが、この寒さの原因じゃない。
あちこちから伸びてくる手。思いやりも優しさのかけらもないその手は、無意味に肌を傷つける。
服を引き裂く音。
乱暴に殴る拳。
誰かが髪を引っ張り、首を締めた。空気が逆流し息ができない。
涙とどろりとした鼻血が顔を伝い、殺してほしいと願った。
聞こえてくるのは笑い声。
はやし立てる男たちの声。
酒の匂い。
にんにくと油の匂いもした。
吐き気がする。
殴られ、気を失ってしまって、どれほど後悔したか。なぜもっと抵抗しなかったんだろう。もっと死にものぐるいで抵抗すればよかったのに。何人もの男たちの手で押さえつけられていたから逃げ出せなかった?いいわけじゃない?心のどこかから責める声が聞こえる。
誰かがそっと額に触れた。無骨だが遠慮がちなやさしい手。
「もう大丈夫だ、安心しろ」
深く心のそこに染み渡る声が聞こえ、こわごわと目を開けると、そこにいたのは・・・
ーーーずっとお礼が言いたかった。
ルシアナは目を覚まし、頬がしっとりと濡れていることに気がついた。
繰り返し訪れる悪夢のせいなのか、それとも、助けられて安心したせいなのかわからない。
この夢を見たときに必ず訪れる重い気持ちを振り払うように首を振る。
もう、結婚なんかできない。
貴族の令嬢として致命的な傷を負ってしまった。
どれほど泣いてもときを戻すことはできない。
それまでは、牢にひとりで押し込まれた令嬢がどんな目に合うのか、知るはずもなかった。
・・・どうしたら良かったの?
幼い頃から婚約者も同然とされてきた王太子の心を一瞬で奪い去った聖女。
私が悪いの?
王太子の心をしっかりつかんでおけなかったから?
それとも、聖女よりも美しくなかったから?
それとも、心がきれいじゃなかったから?
取り返そうとして何が悪いの。
何が悪いの。教えてよ。
どうしても王太子の心が戻らないのなら・・・泥棒猫を排除するのは当たり前のことでしょう?
だが、あの日の経験から、自分が聖女に辱めを与えようとしたのは、重すぎる罪だと自覚した。
それなのに、聖女は私を心配して、力を込めた石を贈ってきた・・・何度も、何度も。
婚約者を奪った聖女が悪いのか、それとも排除しようとした自分が悪いのか。
答えなんてあるわけない。
だが、ただ泣いてあきらめるには、ルシアナの背負っていたものは大きすぎた。
ルシアナはベッドに体を起こした。
ここはどこだろう。ほのかなラベンダーの香り。
あの少年に案内された厨房の近くの部屋とはちがい、ベッドは広く、羽布団とシルクのシーツが使われていた。
”当家からこれ以上の好意や金品を引き出そうなんて思わないことね”
耳に刺さる侯爵夫人の声。
そのとおりだ。侯爵夫人はすべて正しい。
体は大丈夫だ。滑ってころんだだけで、ちょっとおしりとひじが痛いだけ。
ベタベタになったはずなのに、体も髪も入浴したてのようにスッキリしていた。
誰かが、気を失っている間に湯浴みをさせてくれたんだろうか。拭いただけではここまできれいにはならない・・・感謝しなければ。
ルシアナがベッドから降りようとすると、ドアの向こうからマリアンヌ夫人の怒鳴り声が聞こえてきた。
時折口を挟む低い声は、ケイレブだ。あの声をもう一度聞きたいと思っていた。
もう、願いはかなったのかもしれない。余計な欲を出さずに、ここから出ていこう。
「お嬢様?」ベッドから足をおろしたルシアナに、若い女性が背中から声をかけてきた。
「お目覚めですか?お水はいかがですか?」
渡された水はのどをつたい、体のすみずみまで染みわたっていった。
「ありがとう。すぐにお部屋を開けますね。ベッドを使わせていただいてありがとうございましたと、このお部屋の方にお伝えください。私はお借りしたお部屋に戻らせていただきますね」
ルシアナが水が入っていたコップを返しながら使用人らしき女性に伝えると、彼女は困ったような顔になった。
「あ・・・この寝間着もお借りしてしまったんですね。ご不快に思われないといいんですけど。私の服はどこでしょうか」
「あの、お嬢様。私、お嬢様の世話をさせていただくように、奥様からご指示をいただきました。テルマと申します。なんでもお申し付けいただければ・・・」
「お世話?まさか。なぜ奥様が?」
「それは、身分のあるお嬢様にはお世話係が必ずつくものだと・・・」
「私は平民です」
「まさか」
「かつては、身分もありましたが、今はすべての身分を剥奪され、平民になったんです。奴隷じゃないだけましってことなんでしょうね」ルシアナの頬がゆがんだ。
これ以上、ここにいては自分中のなにかが崩れてしまう。お礼は言えなかったけど、話もできたし、声も聞けた。はからずも微笑みかけてくれさえした。きっと彼の笑顔はこれからもルシアナの心を暖かく照らしてくれだろう。これまで、彼を思い出すといつもそうだったように。
「服をください」
テルマはルシアナの迫力にこわごわと服を差し出した。
「これは私の服ではありません。シルクではなく、ウールの服です」
「あの・・・奥様がこの服をお渡しするようにと。奥様が若い頃にお召しになっていたお洋服だそうで・・・」
ルシアナはため息をつき、ドアに手をかけた。外で侯爵夫人とケイレブが口論していようが、知ったことじゃない。もう立ち去るんだもの。
ドアを押すと、それまでの喧騒がピタリとやみ、マリアンヌ夫人とケイレブの視線がルシアナに注がれた。
「あ・・・ありがとうござい」
「ルシアナ嬢!本当に申しわけない!俺がいちいち雑すぎるといまも母に怒られていたところです。あなたのようなレディを扱い慣れていないものですから・・・」
「ルシアナ、体調はだいじょうぶなの?気を失うなんて・・・かわいそうに」
ケイレブとマリアンヌ夫人が同時に話しかけてきた。
「あ、あの、ありがとうございます・・・おかげさまで・・・」
「食事はまだでしょう?今からでもいかがですか?」
「お部屋を用意させましたからね。案内が間違っていたのよ」
また同時に話しかけられ、半分も聞き取れない。
「あの・・・私の服を・・・」
「まあ!私の若い頃の服をテルマに預けたんだけど、やっぱり流行おくれだったかしら?ごめんなさいね。明日には仕立て屋が来ますから、少しだけ我慢して頂戴?」
「・・・え?」マリアンヌ夫人の態度のあまりの変わりように言葉を失う。修道院から着てきた継ぎだらけのウールの服で十分なのに・・・
「母上の服なんて合うわけないでしょう?ルシアナの美しさをもっと引き立てる服を用意しないと」
「そうよね。でも、明日じゃないと仕立屋が来られないって・・・」
「すみません、ルシアナ嬢。一日だけなので、我慢していただけませんか?なんなら仕立屋の首根っこをひっつかんで今すぐここに・・・」
「結構です」
ルシアナは二人の豹変ぶりに戸惑っていた。ケイレブは比較的自分に好意的だったようにも思うが・・・でもマリアンヌ夫人のこの態度は・・・
「あの、本当にご迷惑をおかけしたいわけではないんです。元の部屋に荷物がありますので、戻らせていただいても?」
「荷物なら持ってこさせます。あなたの部屋はここよ。本当は最初からこのお部屋に案内するはずだったのに、あのうっかり者が・・・」
「ルシアナ嬢、食事は?」
また同時に話しかけられ、全然話が進まない。
「元の部屋に戻らせていただきたいのですが・・・」
夫人が耳障りな甲高い笑い声を上げた。
「ほほほ、冗談がうまいのねルシアナ。ゆっくりなさい」
「ルシアナ嬢、食事を・・・」
「あのですね」
話がぜんぜん通じない。いらいらする。思わず、きつい口調で反論しそうになったとき、シンプソンが割って入った。
「お話中失礼いたします。なかなか終わらないものですから。ルシアナ様にお客様が来ておられます」
「私に?」
「はい。お兄様と仰っています。お心あたりはございますか?」
ルシアナが襲われる場面があります。過去のことですが、閲覧にご注意ください。
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体の下には、冷たい石畳。背中から入り込み冷たさだけが、この寒さの原因じゃない。
あちこちから伸びてくる手。思いやりも優しさのかけらもないその手は、無意味に肌を傷つける。
服を引き裂く音。
乱暴に殴る拳。
誰かが髪を引っ張り、首を締めた。空気が逆流し息ができない。
涙とどろりとした鼻血が顔を伝い、殺してほしいと願った。
聞こえてくるのは笑い声。
はやし立てる男たちの声。
酒の匂い。
にんにくと油の匂いもした。
吐き気がする。
殴られ、気を失ってしまって、どれほど後悔したか。なぜもっと抵抗しなかったんだろう。もっと死にものぐるいで抵抗すればよかったのに。何人もの男たちの手で押さえつけられていたから逃げ出せなかった?いいわけじゃない?心のどこかから責める声が聞こえる。
誰かがそっと額に触れた。無骨だが遠慮がちなやさしい手。
「もう大丈夫だ、安心しろ」
深く心のそこに染み渡る声が聞こえ、こわごわと目を開けると、そこにいたのは・・・
ーーーずっとお礼が言いたかった。
ルシアナは目を覚まし、頬がしっとりと濡れていることに気がついた。
繰り返し訪れる悪夢のせいなのか、それとも、助けられて安心したせいなのかわからない。
この夢を見たときに必ず訪れる重い気持ちを振り払うように首を振る。
もう、結婚なんかできない。
貴族の令嬢として致命的な傷を負ってしまった。
どれほど泣いてもときを戻すことはできない。
それまでは、牢にひとりで押し込まれた令嬢がどんな目に合うのか、知るはずもなかった。
・・・どうしたら良かったの?
幼い頃から婚約者も同然とされてきた王太子の心を一瞬で奪い去った聖女。
私が悪いの?
王太子の心をしっかりつかんでおけなかったから?
それとも、聖女よりも美しくなかったから?
それとも、心がきれいじゃなかったから?
取り返そうとして何が悪いの。
何が悪いの。教えてよ。
どうしても王太子の心が戻らないのなら・・・泥棒猫を排除するのは当たり前のことでしょう?
だが、あの日の経験から、自分が聖女に辱めを与えようとしたのは、重すぎる罪だと自覚した。
それなのに、聖女は私を心配して、力を込めた石を贈ってきた・・・何度も、何度も。
婚約者を奪った聖女が悪いのか、それとも排除しようとした自分が悪いのか。
答えなんてあるわけない。
だが、ただ泣いてあきらめるには、ルシアナの背負っていたものは大きすぎた。
ルシアナはベッドに体を起こした。
ここはどこだろう。ほのかなラベンダーの香り。
あの少年に案内された厨房の近くの部屋とはちがい、ベッドは広く、羽布団とシルクのシーツが使われていた。
”当家からこれ以上の好意や金品を引き出そうなんて思わないことね”
耳に刺さる侯爵夫人の声。
そのとおりだ。侯爵夫人はすべて正しい。
体は大丈夫だ。滑ってころんだだけで、ちょっとおしりとひじが痛いだけ。
ベタベタになったはずなのに、体も髪も入浴したてのようにスッキリしていた。
誰かが、気を失っている間に湯浴みをさせてくれたんだろうか。拭いただけではここまできれいにはならない・・・感謝しなければ。
ルシアナがベッドから降りようとすると、ドアの向こうからマリアンヌ夫人の怒鳴り声が聞こえてきた。
時折口を挟む低い声は、ケイレブだ。あの声をもう一度聞きたいと思っていた。
もう、願いはかなったのかもしれない。余計な欲を出さずに、ここから出ていこう。
「お嬢様?」ベッドから足をおろしたルシアナに、若い女性が背中から声をかけてきた。
「お目覚めですか?お水はいかがですか?」
渡された水はのどをつたい、体のすみずみまで染みわたっていった。
「ありがとう。すぐにお部屋を開けますね。ベッドを使わせていただいてありがとうございましたと、このお部屋の方にお伝えください。私はお借りしたお部屋に戻らせていただきますね」
ルシアナが水が入っていたコップを返しながら使用人らしき女性に伝えると、彼女は困ったような顔になった。
「あ・・・この寝間着もお借りしてしまったんですね。ご不快に思われないといいんですけど。私の服はどこでしょうか」
「あの、お嬢様。私、お嬢様の世話をさせていただくように、奥様からご指示をいただきました。テルマと申します。なんでもお申し付けいただければ・・・」
「お世話?まさか。なぜ奥様が?」
「それは、身分のあるお嬢様にはお世話係が必ずつくものだと・・・」
「私は平民です」
「まさか」
「かつては、身分もありましたが、今はすべての身分を剥奪され、平民になったんです。奴隷じゃないだけましってことなんでしょうね」ルシアナの頬がゆがんだ。
これ以上、ここにいては自分中のなにかが崩れてしまう。お礼は言えなかったけど、話もできたし、声も聞けた。はからずも微笑みかけてくれさえした。きっと彼の笑顔はこれからもルシアナの心を暖かく照らしてくれだろう。これまで、彼を思い出すといつもそうだったように。
「服をください」
テルマはルシアナの迫力にこわごわと服を差し出した。
「これは私の服ではありません。シルクではなく、ウールの服です」
「あの・・・奥様がこの服をお渡しするようにと。奥様が若い頃にお召しになっていたお洋服だそうで・・・」
ルシアナはため息をつき、ドアに手をかけた。外で侯爵夫人とケイレブが口論していようが、知ったことじゃない。もう立ち去るんだもの。
ドアを押すと、それまでの喧騒がピタリとやみ、マリアンヌ夫人とケイレブの視線がルシアナに注がれた。
「あ・・・ありがとうござい」
「ルシアナ嬢!本当に申しわけない!俺がいちいち雑すぎるといまも母に怒られていたところです。あなたのようなレディを扱い慣れていないものですから・・・」
「ルシアナ、体調はだいじょうぶなの?気を失うなんて・・・かわいそうに」
ケイレブとマリアンヌ夫人が同時に話しかけてきた。
「あ、あの、ありがとうございます・・・おかげさまで・・・」
「食事はまだでしょう?今からでもいかがですか?」
「お部屋を用意させましたからね。案内が間違っていたのよ」
また同時に話しかけられ、半分も聞き取れない。
「あの・・・私の服を・・・」
「まあ!私の若い頃の服をテルマに預けたんだけど、やっぱり流行おくれだったかしら?ごめんなさいね。明日には仕立て屋が来ますから、少しだけ我慢して頂戴?」
「・・・え?」マリアンヌ夫人の態度のあまりの変わりように言葉を失う。修道院から着てきた継ぎだらけのウールの服で十分なのに・・・
「母上の服なんて合うわけないでしょう?ルシアナの美しさをもっと引き立てる服を用意しないと」
「そうよね。でも、明日じゃないと仕立屋が来られないって・・・」
「すみません、ルシアナ嬢。一日だけなので、我慢していただけませんか?なんなら仕立屋の首根っこをひっつかんで今すぐここに・・・」
「結構です」
ルシアナは二人の豹変ぶりに戸惑っていた。ケイレブは比較的自分に好意的だったようにも思うが・・・でもマリアンヌ夫人のこの態度は・・・
「あの、本当にご迷惑をおかけしたいわけではないんです。元の部屋に荷物がありますので、戻らせていただいても?」
「荷物なら持ってこさせます。あなたの部屋はここよ。本当は最初からこのお部屋に案内するはずだったのに、あのうっかり者が・・・」
「ルシアナ嬢、食事は?」
また同時に話しかけられ、全然話が進まない。
「元の部屋に戻らせていただきたいのですが・・・」
夫人が耳障りな甲高い笑い声を上げた。
「ほほほ、冗談がうまいのねルシアナ。ゆっくりなさい」
「ルシアナ嬢、食事を・・・」
「あのですね」
話がぜんぜん通じない。いらいらする。思わず、きつい口調で反論しそうになったとき、シンプソンが割って入った。
「お話中失礼いたします。なかなか終わらないものですから。ルシアナ様にお客様が来ておられます」
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