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第九話 手洗い用のボウル事件
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操られたようにケイレブがボウルに手を突っ込むと、透明な水に血が花のように広がり真っ赤に染まった。
ケイレブが鼻歌を歌いながら手をふると飛沫が飛び散り、テーブルについていた者たちは皆目を剥き、壁沿いに立つ使用人たちは忍び笑いを漏らした。
ルシアナはその無作法と、魔獣のものとはいえ血をものともしない豪胆さにどう反応したらいいのかわからず目を泳がせた。だが、テーブルに飛び散った飛沫はピンクの水玉模様のようにクロスを彩っている。
「あ、あの・・・もう一度洗われたほうがよろしいのでは?」
ルシアナが遠慮がちに言うと、ケイレブはくすぐったそうに笑った。
「ルシアナ殿はきれい好きなんですね」
(え?だってまだ、血が付いてるじゃない。そんな手で食事を?うそでしょう?)
「でも、あなたに食事を取り分けて差し上げるためには、ご命令に従いましょう」
ケイレブは上機嫌で従僕にもういっぱいボウルの水を持ってくるように、指でサインした。
「道中は快適でしたか?馬車はの乗り心地はいかがでしたか?」
「え・・・?あの・・・?」
あの箱みたいな馬車のこと・・・でいいのよね?
ケイレブが話す雰囲気からすると、嫌味をいっているようにはとても思えない。だが、あの馬車・・・もどきが乗り心地がいいって・・・そんなはず・・・
「ルシアナ殿のために急遽屋根を取り付けたので・・・最近流行りの箱型馬車を真似してみたんです」
全然形が違う。
王族の乗る箱型馬車は確かに貴族の憧れだが・・・窓もあり、椅子は柔らかいクッション、何よりもスプリングが効いて振動が背骨をきしませたりしない。
「え・・・あ・・・そうですの。それは・・・とても快適でしたわ」
ほほえみで感情を隠すと、ケイレブは真に受けたらしい。
「そうでしたか!」
照れくささを隠すため、右手で大きく頭の後ろに手を回すと、不幸にも従僕がちょうどケイレブに新しい湯を運んできたボウルに手があたった。
「あっ・・・!!」
ケイレブの鍛え上げた右手の強い力はボウルを跳ね飛ばしそうになり、慌ててよろめいた従僕は足元の魔獣に血に足を滑らせた。勢いよく従僕の手元からボウルが宙を舞い・・・
「うわぁ!!」
動揺した従僕の声に、全員がボウルに注目した。
ボウルは弧を描き・・・なぜか、ルシアナの頭上でくるりと一回転し・・・ばしゃっ!!
ルシアナは頭から湯をかぶり、ぬれねずみになった。
からからとボウルが虚しく床を転がっていく。
「きゃぁ」
「うわ!ルシアナ嬢!大丈夫ですか」
「も、申し訳ありません!!!」
真っ青になった従僕が、ルシアナに頭を下げた。怒りに触れたらどんなひどい目に合わされるかわからない。
ガクガクと震える従僕に、ルシアナは微笑みかけた。
「あの、リネンだけ貸していただける?」
だが、ルシアナは気がついていなかった。
その時に身にまとっていたウールのガウンが縮み、ルシアナの大きな胸と細い腰をますます強調するようになったことを。シュミーズが透けて、豊かな胸の谷間があらわになっていたことも。
「うわ!まずい!」
動揺したケイレブがテーブルクロスでルシアナのことを拭おうとしたが、胸の谷間に目を奪われ、見てはならんと目をそらして・・・むにょっ
「いやあああ」
ルシアナのか細い悲鳴が上がった。
「ケイレブ!!なんてことを!!」侯爵夫人の金切り声が部屋のなかを駆け抜けた。
「え?うわっ!!」
ルシアナの胸を触っていたことに気がついたケイレブは大慌てで飛び退くように立ち上がった。
ガラガラガラ!!
ガシャンガシャン
テーブルクロスを持ったまま立ち上がったので、テーブルの上に乗っていた料理も皿もゴブレットも床に落ち、ぐしゃぐしゃになってしまった。
「な・・・!!」
ケイレブが慌てて振り向くと、手を貸そうと近づいた従僕が跳ね飛ばされ、その後ろにいた別の使用人にぶつかった。その使用人は倒れないようにケイレブが座っていた椅子の背に手を置く。
そして、その椅子は使用人の体重で前にずれ、ケイレブの膝裏を直撃した。
予想外の攻撃に倒れそうになった歴戦の戦士は、手近なものをつかみ、体制を整えようとした。
びりびりびりびり・・・!!!
「きゃーーーーーーー!!!!」
手近なものの正体はルシアナのシュミーズだった。
引き裂かれたシュミーズからルシアナの豊かな胸がこぼれ落ち、部屋にいた男たちは全員よく見ようと立ち上がった。
非難がましい女たちの声と、興味津々に上ずった男たちの声。まさか、夕食の場にこんなデザートが用意されているとは思いもよらなかったのだ。
「うわ!!なんてことだ!すみません!」
ケイレブがルシアナに手を伸ばし隠そうとするが、ルシアナは素早く身をよじり、その手を避けた。半べそをかきながらぼろぼろになったシュミーズを胸元に引き寄せているその姿に罪悪感で胸がいたんだ。
「お前たち、見るな!」
ケイレブが叫んだが、男たちの視線はルシアナの白く盛り上がった胸元と細い腰に釘付けだった。
「ピンク・・・」
「でか・・・」
あちこちから小声が聞こえ、それまでほほえみを絶やさなかったルシアナも耐えきれず涙を流している。
だが、あまりに豊かな胸は細い腕では隠しきれず・・・
しかも、まだルシアナを敵視する女たちは、誰も助けてはくれなかった。
「見るなと言っただろ!」
ケイレブが自分の身体でルシアナを隠そうと引き寄せたが、その拍子にルシアナの尻の肉をつかんでしまった。
手に触れているのは弾力があるが柔らかい・・・なでるようにその指先が尻の割れ目に触れた瞬間、ルシアナの我慢の糸が切れた。
「いやああああ!!」ばしーん!!
ルシアナはケイレブを平手打ちした。
「ひ、ひどい・・・なんてことを・・・」
もう我慢できない。いくら立場が弱くても、こんな辱めを・・・耐えられない。
その場から走って逃げ出そうとしたとき、足元にまだ残る魔獣の血に足を取られ、盛大にすっころんだ。
しかも、血溜まりにつっこんでしまい、体の半分は魔獣の血がべったりと・・・
「うそよ、こんなの・・・ありえない・・・」
ルシアナは自分の両手を見た。真っ赤に染まった手のひら。いや手のひらどころか、体の右半分は血まみれに・・・
「どうして、私がこんな目に・・・」
その声はケイレブにしか聞きとれないほどの小さな声だった。
ルシアナの目が天井を向き、体からがくりと力が抜けた。
「ル、ルシアナ嬢!」
慌ててルシアナを抱き止めたが、ショックで気を失っていた。
*************************
「この、バカ息子!」
侯爵夫人マリアンヌは激怒していた。
不遜な悪女を退治してやろうと思ったのに、バカ息子のせいで同情してしまったほどだ。
「お前のような、間抜けはいませんよ。ルシアナに鼻の下を伸ばしていたと思ったら、次の瞬間にはあんな辱めを・・・未婚のレディにしていいことと悪いことがあるのがわからないんですか!しかも、ルシアナはお前の嫌がらせじみた贈り物も喜ぶ素振りまで見せて・・・なんてふびんな・・・にくい悪女のはずが、お前のような馬鹿者と見合いをさせられてるって事実だけで、気の毒な人になってしまうわ!」
「いえ、その母上、決してわざとでは・・・」
「わざとやったら勘当ものよ。今は平民の身分に落とされているとはいえ、彼女はレディなのよ?公爵令嬢。しかも、王妃候補になるほどのお嬢様なの。ああ、本当にお気の毒になってきたわ。なんであんたみたいな朴念仁と結婚なんて・・・ありえないわ。私だったら、裸足で逃げ出しますよ」
「よく言う。母上は父上に一目惚れして追いかけ回したんでしょう?」
「おだまり!お前と父上は大違いよ!」
「マリアンヌ・・・マリアンヌ。まあ、そのへんにしておいてやれ。ケイレブにも悪気があったわけでは・・・」
「そうですよ。床に魔獣の血が残っていたのも悪かったんです」
「それは!お前がルシアナにデレデレしていたから、使用人たちが掃除するにもできずに残っていただけでしょう?そもそも、誰が魔獣を持ち込んだの!!」
話がループに入ってきた。ケイレブは頭を掻いた。どうやら、アドバイザーが間違っていたらしい。
自分だったら、ドロイガーの毛皮をもらえたら喜んだとは思うが・・・いや、喜んではくれていたが、方法を間違ったか。
ケイレブが鼻歌を歌いながら手をふると飛沫が飛び散り、テーブルについていた者たちは皆目を剥き、壁沿いに立つ使用人たちは忍び笑いを漏らした。
ルシアナはその無作法と、魔獣のものとはいえ血をものともしない豪胆さにどう反応したらいいのかわからず目を泳がせた。だが、テーブルに飛び散った飛沫はピンクの水玉模様のようにクロスを彩っている。
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ルシアナが遠慮がちに言うと、ケイレブはくすぐったそうに笑った。
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(え?だってまだ、血が付いてるじゃない。そんな手で食事を?うそでしょう?)
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「え・・・?あの・・・?」
あの箱みたいな馬車のこと・・・でいいのよね?
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全然形が違う。
王族の乗る箱型馬車は確かに貴族の憧れだが・・・窓もあり、椅子は柔らかいクッション、何よりもスプリングが効いて振動が背骨をきしませたりしない。
「え・・・あ・・・そうですの。それは・・・とても快適でしたわ」
ほほえみで感情を隠すと、ケイレブは真に受けたらしい。
「そうでしたか!」
照れくささを隠すため、右手で大きく頭の後ろに手を回すと、不幸にも従僕がちょうどケイレブに新しい湯を運んできたボウルに手があたった。
「あっ・・・!!」
ケイレブの鍛え上げた右手の強い力はボウルを跳ね飛ばしそうになり、慌ててよろめいた従僕は足元の魔獣に血に足を滑らせた。勢いよく従僕の手元からボウルが宙を舞い・・・
「うわぁ!!」
動揺した従僕の声に、全員がボウルに注目した。
ボウルは弧を描き・・・なぜか、ルシアナの頭上でくるりと一回転し・・・ばしゃっ!!
ルシアナは頭から湯をかぶり、ぬれねずみになった。
からからとボウルが虚しく床を転がっていく。
「きゃぁ」
「うわ!ルシアナ嬢!大丈夫ですか」
「も、申し訳ありません!!!」
真っ青になった従僕が、ルシアナに頭を下げた。怒りに触れたらどんなひどい目に合わされるかわからない。
ガクガクと震える従僕に、ルシアナは微笑みかけた。
「あの、リネンだけ貸していただける?」
だが、ルシアナは気がついていなかった。
その時に身にまとっていたウールのガウンが縮み、ルシアナの大きな胸と細い腰をますます強調するようになったことを。シュミーズが透けて、豊かな胸の谷間があらわになっていたことも。
「うわ!まずい!」
動揺したケイレブがテーブルクロスでルシアナのことを拭おうとしたが、胸の谷間に目を奪われ、見てはならんと目をそらして・・・むにょっ
「いやあああ」
ルシアナのか細い悲鳴が上がった。
「ケイレブ!!なんてことを!!」侯爵夫人の金切り声が部屋のなかを駆け抜けた。
「え?うわっ!!」
ルシアナの胸を触っていたことに気がついたケイレブは大慌てで飛び退くように立ち上がった。
ガラガラガラ!!
ガシャンガシャン
テーブルクロスを持ったまま立ち上がったので、テーブルの上に乗っていた料理も皿もゴブレットも床に落ち、ぐしゃぐしゃになってしまった。
「な・・・!!」
ケイレブが慌てて振り向くと、手を貸そうと近づいた従僕が跳ね飛ばされ、その後ろにいた別の使用人にぶつかった。その使用人は倒れないようにケイレブが座っていた椅子の背に手を置く。
そして、その椅子は使用人の体重で前にずれ、ケイレブの膝裏を直撃した。
予想外の攻撃に倒れそうになった歴戦の戦士は、手近なものをつかみ、体制を整えようとした。
びりびりびりびり・・・!!!
「きゃーーーーーーー!!!!」
手近なものの正体はルシアナのシュミーズだった。
引き裂かれたシュミーズからルシアナの豊かな胸がこぼれ落ち、部屋にいた男たちは全員よく見ようと立ち上がった。
非難がましい女たちの声と、興味津々に上ずった男たちの声。まさか、夕食の場にこんなデザートが用意されているとは思いもよらなかったのだ。
「うわ!!なんてことだ!すみません!」
ケイレブがルシアナに手を伸ばし隠そうとするが、ルシアナは素早く身をよじり、その手を避けた。半べそをかきながらぼろぼろになったシュミーズを胸元に引き寄せているその姿に罪悪感で胸がいたんだ。
「お前たち、見るな!」
ケイレブが叫んだが、男たちの視線はルシアナの白く盛り上がった胸元と細い腰に釘付けだった。
「ピンク・・・」
「でか・・・」
あちこちから小声が聞こえ、それまでほほえみを絶やさなかったルシアナも耐えきれず涙を流している。
だが、あまりに豊かな胸は細い腕では隠しきれず・・・
しかも、まだルシアナを敵視する女たちは、誰も助けてはくれなかった。
「見るなと言っただろ!」
ケイレブが自分の身体でルシアナを隠そうと引き寄せたが、その拍子にルシアナの尻の肉をつかんでしまった。
手に触れているのは弾力があるが柔らかい・・・なでるようにその指先が尻の割れ目に触れた瞬間、ルシアナの我慢の糸が切れた。
「いやああああ!!」ばしーん!!
ルシアナはケイレブを平手打ちした。
「ひ、ひどい・・・なんてことを・・・」
もう我慢できない。いくら立場が弱くても、こんな辱めを・・・耐えられない。
その場から走って逃げ出そうとしたとき、足元にまだ残る魔獣の血に足を取られ、盛大にすっころんだ。
しかも、血溜まりにつっこんでしまい、体の半分は魔獣の血がべったりと・・・
「うそよ、こんなの・・・ありえない・・・」
ルシアナは自分の両手を見た。真っ赤に染まった手のひら。いや手のひらどころか、体の右半分は血まみれに・・・
「どうして、私がこんな目に・・・」
その声はケイレブにしか聞きとれないほどの小さな声だった。
ルシアナの目が天井を向き、体からがくりと力が抜けた。
「ル、ルシアナ嬢!」
慌ててルシアナを抱き止めたが、ショックで気を失っていた。
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「この、バカ息子!」
侯爵夫人マリアンヌは激怒していた。
不遜な悪女を退治してやろうと思ったのに、バカ息子のせいで同情してしまったほどだ。
「お前のような、間抜けはいませんよ。ルシアナに鼻の下を伸ばしていたと思ったら、次の瞬間にはあんな辱めを・・・未婚のレディにしていいことと悪いことがあるのがわからないんですか!しかも、ルシアナはお前の嫌がらせじみた贈り物も喜ぶ素振りまで見せて・・・なんてふびんな・・・にくい悪女のはずが、お前のような馬鹿者と見合いをさせられてるって事実だけで、気の毒な人になってしまうわ!」
「いえ、その母上、決してわざとでは・・・」
「わざとやったら勘当ものよ。今は平民の身分に落とされているとはいえ、彼女はレディなのよ?公爵令嬢。しかも、王妃候補になるほどのお嬢様なの。ああ、本当にお気の毒になってきたわ。なんであんたみたいな朴念仁と結婚なんて・・・ありえないわ。私だったら、裸足で逃げ出しますよ」
「よく言う。母上は父上に一目惚れして追いかけ回したんでしょう?」
「おだまり!お前と父上は大違いよ!」
「マリアンヌ・・・マリアンヌ。まあ、そのへんにしておいてやれ。ケイレブにも悪気があったわけでは・・・」
「そうですよ。床に魔獣の血が残っていたのも悪かったんです」
「それは!お前がルシアナにデレデレしていたから、使用人たちが掃除するにもできずに残っていただけでしょう?そもそも、誰が魔獣を持ち込んだの!!」
話がループに入ってきた。ケイレブは頭を掻いた。どうやら、アドバイザーが間違っていたらしい。
自分だったら、ドロイガーの毛皮をもらえたら喜んだとは思うが・・・いや、喜んではくれていたが、方法を間違ったか。
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