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第四話 ケイレブの事情
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ケイレブ・コンラッドは、ガウデン候アンドリュー・コンラッドの長子で、現在はランドール伯の地位を継いでいた。今までずっとガウデン候の居城のある辺境アバルの治安をまもるため、自分の所領はずっと手つかずで管理人に預けっぱなしだった。聖女の力で辺境が平和になったいま、領主として自分の民を守りたい。
ケイレブには夢があった、黄金色に輝く麦畑とそばには美しい妻。そして自分と妻にそっくりな子どもたち。領民は皆幸せに暮らし、飢えた者も家がない者もいない。言うまでも無いが平和を脅かす魔獣もいない。
そんな夢をみて来たはずなのに。
「おい、これは何だ?」
アバルの居城を出てから数日。ケイレブは腹心の部下数名と馬で自分の領地に向かっていた。
だが、領地の中心部に近づくに連れ、荒廃ぶりは酷くなっていった。
そして、いま、眼の前に広がるのは荒れ果てた城。石組みは崩れ、倒壊しないのが不思議なほどだ。
その辺のあばら家のほうがマシだ。倒れた木はそのまま放置され、屋根にはぺんぺん草が生えている。
城に向かう石だらけの道を通ってきたときから不安な予感はしていた。
畑は荒れ果て、ごろごろとした土の塊と枯れた草が途方に暮れたように風に揺れている。
猫の額のような畑を手入れしていた女は、ケイレブたちを見ると小さく悲鳴をあげて家に入り、勢いよく扉を締めてしまった。
次に見つけた農夫も怯えたように鋤を投げ出し、走り去ってしまった。
声をかける暇もなかった。
だが、彼らは皆薄汚れ、痩せて不幸そうに見えた。
「おい、管理人のロビンソンはまともな人間じゃなかったのか?」
相棒のビルを振り返ると、ビルは首を振って両手を広げた。
「ここを見る限りそうは思えんがな?」
管理人からの報告では、ここのところ領地では順調に畑が広げられ、領民は皆しあわせに子を産み育て、どんどん領民は増えていると。だが残念なことに、種や肥料代がかさみ、ケイレブに余剰な金は生み出せていないと申し訳無さそうに長々と手紙が来ていた。
戦いに明け暮れていたケイレブは読み書きができない訳では無いが好きではない。ロビンソンからの言い訳を書き連ねた手紙を読むよりは、剣の稽古でもしていたほうがマシだと思っていた。
だが、甘かったのかもしれない。
「ふうむ・・・まずは中に入ってみよう」
ケイレブは馬から降りると、剣を抜いた。こんなところなにが居るかわからない。もしかしたら、浮浪者や獣が入り込んでいるかもしれない。運が悪ければ盗賊、という可能性もある。
城の重い扉を騎士の一人が押すと、ぎいいっと魔物の悲鳴のような音を立てて扉が開いた。
中は真っ暗で何も見えない。よく見ようと中をのぞきこむと、石が飛んできて地面に落ちた。
騎士たちは剣を抜き、さっとケイレブの前に立った。
どんどん小石が投げられ、中に入ろうとしている騎士を妨害している。
「誰だ!やめろ!領主の帰還に石を投げるやつがおるか!」
ビルの怒鳴り声に、攻撃はピタリと止まった。
「りょうしゅ?」
「・・・ろくでなし・・・?」
「ロビンソン・・・いない・・・」
言葉の端々が聞こえてくるがよく聞き取れない。
なんだ?と思った騎士たちに誰かが大声で言い返した。
「嘘をつけ!お前たちの中にロビンソンはいない!出ていけ!」
「ふざけるな!領主に歯向かってただで済むと思っているのか!首をはねられたくなければ今すぐに出てこい!」
カッとなって怒鳴り返したビルをケイレブが押し留めた。
「待て。声が甲高い・・・子供じゃないのか?」
さっきから投げられている石が飛んでくる位置が低い。座っているにしては、狙いが正確だ。
ケイレブが一歩前に出た。
「おい、俺は、ケイレブ・コンラッド。この地の正当な領主だ。ロビンソンは俺の管理人だ。だが、ここに来るまでの道のりと城の様子を見て、あいつがまともに責務を果たしていないことはわかった。あいつは首だ。で?お前は誰だ。ロビンソンのかわりにここを守っていた勇敢な男は名のりもしないのか?」
暗闇から足音が響き、真っ黒に汚れた顔とボロボロの服をまとった少年が出てきた。
少年の髪は薄汚れ、元の髪色が何色なのかさえわからない。
「俺は、アイザックだ。俺がみんなに指示した。殺すなら俺を殺せ」
アイザックは堂々とケイレブをにらみつけ、護衛の騎士たちは気色ばんだ。
だが、ケイレブはアイザックの指先が小さく震えているのを見逃さなかった。
「そうか」ケイレブはニヤリとわらった。「俺の領地には勇敢な番人がいるらしい。ところでお前たちはなんだ。浮浪児か?」
「だったらなんだ。親も家もないのはオレたちのせいじゃない。オレたちが誰も住んでいない屋根の下で協力して生きようとして何が悪いんだ」
「いやなにも?」
ケイレブはアイザックに向かって右手を出した。
「よく頑張ったな。これからは俺が面倒を見る。俺はお前たちの領主、つまり父親も同然だ。いままで苦労させてすまなかったな。ここをまともにして、お前たちにも家を与えよう」
「え?」
戸惑ったようにケイレブを見上げるアイザックに、ケイレブは優しく微笑みかけた。
「俺たちはこれから家族同然だ。握手しよう。そして、友だちになろう」
「そんなこと・・・あるのか?」
「オレはお前たちの領主だ。今までロビンソンはろくな管理人じゃなかったらしいな。お前たちを追い出そうとしたのか?それとも殴ったりひどい目に合わせられたのか?」
「・・・まあ、それは。俺たちなんて汚い野良犬同然だって言われたよ。でも、きれいな女だと連れて行かれて愛人にされちまうって。なぐさみものにされて身を投げた女もいるって・・・ときには男の子もって聞いた。だから俺たちは汚くして目に入らないことが一番の自衛手段だったんだ」
「おいおい・・・」
「あんたは?」
「は?オレ?」
「見たところ、奥方もいなさそうだし・・・」
「いや!奥方はいないが、その・・・決めた女はいるし、お前たちに手を出すことはない。もちろんこの騎士たちもだ」
護衛騎士たちは全員が大きくうなずいた。
「お前たちは、オレの庇護に入った。ということはみだりにお前たちになにかをするってことはない。安心しろ」
「・・・」アイザックは疑わしそうにケイレブを見た。
「まあ、そう簡単に信用しないのはむしろいいことだな。だが、ここはこれからオレの居城だ。俺を信用して保護されるか、また浮浪児に戻るか、勝手にするんだな」
ケイレブは話を打ち切った。ようやく目が慣れ、城の入り口のホールには、10人近い子どもたちがいることがわかった。
「お前たちにも告ぐ。先程領主に石を投げた件については不問とする。城に残るものは、皆兵士として訓練する。いいな。見どころのあるものがいれば、騎士として取り立てよう。だが、不満なら出ていけ」
薄汚れた子どもたちは互いに目を見合わせた。皆そう簡単に大人を信じることはできないらしい。
「決められないのなら、3日ここに暮らしてから決めたらどうだ?」
ケイレブが告げると、子どもたちはホッとしたように息をついた。
「そうか、よし。じゃあ、そうしよう」
「はい」何人かの子供が返事をしたが、数人の子供はなおも不安そうだった。「あの、女の子も兵士にならないといけないんですか?」
「え?女の子・・・?」
ケイレブは絶句した。
女の子は、彼の専門外だった。
ケイレブには夢があった、黄金色に輝く麦畑とそばには美しい妻。そして自分と妻にそっくりな子どもたち。領民は皆幸せに暮らし、飢えた者も家がない者もいない。言うまでも無いが平和を脅かす魔獣もいない。
そんな夢をみて来たはずなのに。
「おい、これは何だ?」
アバルの居城を出てから数日。ケイレブは腹心の部下数名と馬で自分の領地に向かっていた。
だが、領地の中心部に近づくに連れ、荒廃ぶりは酷くなっていった。
そして、いま、眼の前に広がるのは荒れ果てた城。石組みは崩れ、倒壊しないのが不思議なほどだ。
その辺のあばら家のほうがマシだ。倒れた木はそのまま放置され、屋根にはぺんぺん草が生えている。
城に向かう石だらけの道を通ってきたときから不安な予感はしていた。
畑は荒れ果て、ごろごろとした土の塊と枯れた草が途方に暮れたように風に揺れている。
猫の額のような畑を手入れしていた女は、ケイレブたちを見ると小さく悲鳴をあげて家に入り、勢いよく扉を締めてしまった。
次に見つけた農夫も怯えたように鋤を投げ出し、走り去ってしまった。
声をかける暇もなかった。
だが、彼らは皆薄汚れ、痩せて不幸そうに見えた。
「おい、管理人のロビンソンはまともな人間じゃなかったのか?」
相棒のビルを振り返ると、ビルは首を振って両手を広げた。
「ここを見る限りそうは思えんがな?」
管理人からの報告では、ここのところ領地では順調に畑が広げられ、領民は皆しあわせに子を産み育て、どんどん領民は増えていると。だが残念なことに、種や肥料代がかさみ、ケイレブに余剰な金は生み出せていないと申し訳無さそうに長々と手紙が来ていた。
戦いに明け暮れていたケイレブは読み書きができない訳では無いが好きではない。ロビンソンからの言い訳を書き連ねた手紙を読むよりは、剣の稽古でもしていたほうがマシだと思っていた。
だが、甘かったのかもしれない。
「ふうむ・・・まずは中に入ってみよう」
ケイレブは馬から降りると、剣を抜いた。こんなところなにが居るかわからない。もしかしたら、浮浪者や獣が入り込んでいるかもしれない。運が悪ければ盗賊、という可能性もある。
城の重い扉を騎士の一人が押すと、ぎいいっと魔物の悲鳴のような音を立てて扉が開いた。
中は真っ暗で何も見えない。よく見ようと中をのぞきこむと、石が飛んできて地面に落ちた。
騎士たちは剣を抜き、さっとケイレブの前に立った。
どんどん小石が投げられ、中に入ろうとしている騎士を妨害している。
「誰だ!やめろ!領主の帰還に石を投げるやつがおるか!」
ビルの怒鳴り声に、攻撃はピタリと止まった。
「りょうしゅ?」
「・・・ろくでなし・・・?」
「ロビンソン・・・いない・・・」
言葉の端々が聞こえてくるがよく聞き取れない。
なんだ?と思った騎士たちに誰かが大声で言い返した。
「嘘をつけ!お前たちの中にロビンソンはいない!出ていけ!」
「ふざけるな!領主に歯向かってただで済むと思っているのか!首をはねられたくなければ今すぐに出てこい!」
カッとなって怒鳴り返したビルをケイレブが押し留めた。
「待て。声が甲高い・・・子供じゃないのか?」
さっきから投げられている石が飛んでくる位置が低い。座っているにしては、狙いが正確だ。
ケイレブが一歩前に出た。
「おい、俺は、ケイレブ・コンラッド。この地の正当な領主だ。ロビンソンは俺の管理人だ。だが、ここに来るまでの道のりと城の様子を見て、あいつがまともに責務を果たしていないことはわかった。あいつは首だ。で?お前は誰だ。ロビンソンのかわりにここを守っていた勇敢な男は名のりもしないのか?」
暗闇から足音が響き、真っ黒に汚れた顔とボロボロの服をまとった少年が出てきた。
少年の髪は薄汚れ、元の髪色が何色なのかさえわからない。
「俺は、アイザックだ。俺がみんなに指示した。殺すなら俺を殺せ」
アイザックは堂々とケイレブをにらみつけ、護衛の騎士たちは気色ばんだ。
だが、ケイレブはアイザックの指先が小さく震えているのを見逃さなかった。
「そうか」ケイレブはニヤリとわらった。「俺の領地には勇敢な番人がいるらしい。ところでお前たちはなんだ。浮浪児か?」
「だったらなんだ。親も家もないのはオレたちのせいじゃない。オレたちが誰も住んでいない屋根の下で協力して生きようとして何が悪いんだ」
「いやなにも?」
ケイレブはアイザックに向かって右手を出した。
「よく頑張ったな。これからは俺が面倒を見る。俺はお前たちの領主、つまり父親も同然だ。いままで苦労させてすまなかったな。ここをまともにして、お前たちにも家を与えよう」
「え?」
戸惑ったようにケイレブを見上げるアイザックに、ケイレブは優しく微笑みかけた。
「俺たちはこれから家族同然だ。握手しよう。そして、友だちになろう」
「そんなこと・・・あるのか?」
「オレはお前たちの領主だ。今までロビンソンはろくな管理人じゃなかったらしいな。お前たちを追い出そうとしたのか?それとも殴ったりひどい目に合わせられたのか?」
「・・・まあ、それは。俺たちなんて汚い野良犬同然だって言われたよ。でも、きれいな女だと連れて行かれて愛人にされちまうって。なぐさみものにされて身を投げた女もいるって・・・ときには男の子もって聞いた。だから俺たちは汚くして目に入らないことが一番の自衛手段だったんだ」
「おいおい・・・」
「あんたは?」
「は?オレ?」
「見たところ、奥方もいなさそうだし・・・」
「いや!奥方はいないが、その・・・決めた女はいるし、お前たちに手を出すことはない。もちろんこの騎士たちもだ」
護衛騎士たちは全員が大きくうなずいた。
「お前たちは、オレの庇護に入った。ということはみだりにお前たちになにかをするってことはない。安心しろ」
「・・・」アイザックは疑わしそうにケイレブを見た。
「まあ、そう簡単に信用しないのはむしろいいことだな。だが、ここはこれからオレの居城だ。俺を信用して保護されるか、また浮浪児に戻るか、勝手にするんだな」
ケイレブは話を打ち切った。ようやく目が慣れ、城の入り口のホールには、10人近い子どもたちがいることがわかった。
「お前たちにも告ぐ。先程領主に石を投げた件については不問とする。城に残るものは、皆兵士として訓練する。いいな。見どころのあるものがいれば、騎士として取り立てよう。だが、不満なら出ていけ」
薄汚れた子どもたちは互いに目を見合わせた。皆そう簡単に大人を信じることはできないらしい。
「決められないのなら、3日ここに暮らしてから決めたらどうだ?」
ケイレブが告げると、子どもたちはホッとしたように息をついた。
「そうか、よし。じゃあ、そうしよう」
「はい」何人かの子供が返事をしたが、数人の子供はなおも不安そうだった。「あの、女の子も兵士にならないといけないんですか?」
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