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30 【番外編】2人の初でえと 3

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翌日。
あいつは昨日のことなど何もなかったように、今日も俺を相手に管を巻いている。

「ねえ、早く離宮にきて一緒に暮らしましょうよ」
「あなたがそばにいないと寂しくてもう耐えられません‥‥‥」

相変わらずケモミミを垂らし、フサフサした尻尾を小さく振りながら俺にアピールしてくる。
もちろん、本物じゃないぞ?そうとしか見えないって意味だからな?
俺は、ついつい、甘くなってしまいがちなケモミミとフサフサ尻尾を無視し、心を鬼にした。
甘えてくるこいつに俺が弱いことわかっててやってるって知ってるんだからな?

俺は怒っているんだぞ?
毎日、毎日同じこと言いに来やがって。
ちょっとほだされそうになっちゃっただろ?!
昨日はさっさと帰ったくせに。

大体、でえとはどうなったんだよ!で・え・と、は!!
俺はちょっと、いやかなりムッとしてるんだぞ?
ふん、さびしくなんてないからな?

「ふん、嫌だね」
「もう、何をヘソ曲げてるんですか」

(はあ?お前のせいだろ?昨日は計画も立てずにさっさと帰りやがって。でえとはどうするんだよ、でえとは!)

俺は精一杯の冷たい目でクラウスをみた。
「お前、仕事あるんじゃないのか?忙しいんだろ?もう帰ったら?」
「‥‥‥」

クラウスは俺の顔をじっと見た。
相変わらず、俺はこいつのグレーの瞳には弱い。
「ふうん?かなりこれは、いじけてるんですね?」
「はあ?いじけてなんかないよ!もう早く帰れよ」

俺はプイッと顔を背けた。
「くくく。可愛い」
クラウスが超うれしそうな顔で笑うと、
「『でえと』のこと忘れられたと思っていじけてるんでしょ」
と耳元で囁いた。

「な、なんだよぉぉ」
クラウスの低音ボイスに思わずぐずぐずになってしまう。

「忘れてませんよ。ただ、愛する人のご要望に応えたくて、考えていただけですよ。それを忘れられたと思って拗ねるなんて、どこまで可愛いんですか。」
「ぐうう」
クラウスは俺をそっと抱き寄せた。

「愛してますよ、ルーリク。あなたのためならなんでもしてあげたい。でも、天候を操る魔法は難易度が高すぎます。」
「そ、そうなのか?」
天候を操るって難易度が高いのか?

「当たり前でしょう?僕は魔術師じゃないんですよ?」
クラウスは少し呆れた様子だ。
(魔術師じゃないとできないほど、難易度が高いんだ‥‥‥そもそも、魔法って、難易度なんてあるんだ。知らなかった‥‥‥)

「そこでです。」クラウスは咳払いをした。「少し、妥協してみませんか?」
「だ、妥協ってなんだよ」

「例えば、雪みたいなもので我慢するとか?」
「雪みたいなもの?」
それってどんなもの?

「そう。雪は外国でしか見られないけど、僕たちも立場上そう簡単には外国に遊びにいけないでしょう?それにいくら婚姻紋で結ばれていても、公式に結婚して、あなたを僕のものにするまでは危険は冒したくないんですよね。そこで、一つ提案があるのですが‥‥‥」
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