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25 エピローグ
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「なにか気づいたら、どんな小さなことでもいいの、いつでも連絡ちょうだい。お願いします」
ミナのお母さんは、ユカに頭を下げた。
「わかりました。でも、なにも心当たりがなくて・・・」
もう何度目になったかわからないこのやりとりで、ユカは何度目かわからない同じ言葉を返す。
ミナのお母さんは、この2ヶ月で10歳も歳をとったように見える。
ご飯も食べられていないのだろう。服が肩から落ち、急激に痩せたことを物語っていた。
げっそりと痩せて骨ばった両手で手を包まれると、居心地の悪さにもぞもぞと体を動かしてしまった。
友達のミナが突然姿を消してから2ヶ月。
同級生の学校での自殺事件というショッキングな事件に相次いで起こった中学生の失踪事件に、マスコミは大騒ぎし、一時は通学の途中でもテレビカメラやリポーターの姿を見かけることがあったが、芸能人の不倫騒動が起きてからはぱったりと来なくなった。
あの日、ミナが教室を駆けだしていってから、そのまま誰にも見られることなく、まるで水が水蒸気になって消えるように、忽然と姿を消しそれっきりだ。
何度ラインを送っても既読にはならず、電話もつながらない。
「どこかで、無事にしていてくれればいいんだけど」ユカはため息をついた。
中学生の女の子が行方不明になったら、無事ではいられないだろう。
その恐ろしさにゾッとする。
しかも行方不明になったのは、クラスメイトなのだ。
素行が悪いわけでもない、悪い付き合いがあるわけでもない、本当に普通の女の子。
そんな子がなぜ。
いくら考えても誰にもその答えはわからなかった。
風が頬をゆらし、かすかな笑い声が聞こえたように思えた。
もちろん、気のせいだろう。
ユカは、教室の窓から校庭を眺めた。
いつもどおり。
特に何も変化はない。
校庭では、体育の先生が授業準備のためにトンボをかけている。
今日は暑くなりそうだ。
少し高台にある、元砦跡だというこの学校は見晴らしが良く、窓から街を見下ろすことができる。きっと昔からそうだったんだろう。
みんなの平和な暮らしを守っていた場所に違いない。
きっとこの学校は、その平和の跡地で10年前も20年前もずっと同じ形でそのまま続いてきたのだろう。そしてこれからもきっと。
予鈴が鳴る。
今日もまた同じ1日がはじまった。
ミナのためにもきちんとノートを取っておいてあげないとね。
ユカはそう思い、机から教科書とノートを取り出した。
「起立、礼」リクの掛け声で、全員が頭を下げて着席した。
いつもと同じ1日。
遠くでキーキーと鳴る自転車の音が聞こえ、遠ざかり、消えた。
おしまい。
ミナのお母さんは、ユカに頭を下げた。
「わかりました。でも、なにも心当たりがなくて・・・」
もう何度目になったかわからないこのやりとりで、ユカは何度目かわからない同じ言葉を返す。
ミナのお母さんは、この2ヶ月で10歳も歳をとったように見える。
ご飯も食べられていないのだろう。服が肩から落ち、急激に痩せたことを物語っていた。
げっそりと痩せて骨ばった両手で手を包まれると、居心地の悪さにもぞもぞと体を動かしてしまった。
友達のミナが突然姿を消してから2ヶ月。
同級生の学校での自殺事件というショッキングな事件に相次いで起こった中学生の失踪事件に、マスコミは大騒ぎし、一時は通学の途中でもテレビカメラやリポーターの姿を見かけることがあったが、芸能人の不倫騒動が起きてからはぱったりと来なくなった。
あの日、ミナが教室を駆けだしていってから、そのまま誰にも見られることなく、まるで水が水蒸気になって消えるように、忽然と姿を消しそれっきりだ。
何度ラインを送っても既読にはならず、電話もつながらない。
「どこかで、無事にしていてくれればいいんだけど」ユカはため息をついた。
中学生の女の子が行方不明になったら、無事ではいられないだろう。
その恐ろしさにゾッとする。
しかも行方不明になったのは、クラスメイトなのだ。
素行が悪いわけでもない、悪い付き合いがあるわけでもない、本当に普通の女の子。
そんな子がなぜ。
いくら考えても誰にもその答えはわからなかった。
風が頬をゆらし、かすかな笑い声が聞こえたように思えた。
もちろん、気のせいだろう。
ユカは、教室の窓から校庭を眺めた。
いつもどおり。
特に何も変化はない。
校庭では、体育の先生が授業準備のためにトンボをかけている。
今日は暑くなりそうだ。
少し高台にある、元砦跡だというこの学校は見晴らしが良く、窓から街を見下ろすことができる。きっと昔からそうだったんだろう。
みんなの平和な暮らしを守っていた場所に違いない。
きっとこの学校は、その平和の跡地で10年前も20年前もずっと同じ形でそのまま続いてきたのだろう。そしてこれからもきっと。
予鈴が鳴る。
今日もまた同じ1日がはじまった。
ミナのためにもきちんとノートを取っておいてあげないとね。
ユカはそう思い、机から教科書とノートを取り出した。
「起立、礼」リクの掛け声で、全員が頭を下げて着席した。
いつもと同じ1日。
遠くでキーキーと鳴る自転車の音が聞こえ、遠ざかり、消えた。
おしまい。
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