学校の七不思議って、全部知ったらどうなるの?

藍音

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2 ボールころころ

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正直言うと、私はこの学校があまり好きじゃない。
やたらと古くて、なんか不気味だし。
そもそも、この学校に来たくなかった。
昔はたくさん生徒がいたって言うけど、どんどん生徒が減ってるのは魅力がないからじゃないかな。

ちょっとお金のある家の子はみんな隣町の私立に行っちゃう。
小学校の友達のリサ、ミキ、それに、大好きだったタクトくんも。
私だって私立に行きたかったのに、お母さんがダメだって。
「うちにそんな余裕ないでしょ。公立に行きなさい」って。
「私の頃は私立なんて考えもしなかったけど」
それは、紀元前だからでしょ!って言い返したかったけど、怒られるし、言っても無駄だからやめた。

学校の昇降口でギシギシとなる古臭い灰色のドアも、足の汚れが染み込んだ所々黒っぽいすのこも嫌い。
それに、階段の踊り場なんて、手がとどくところしか掃除できないから、モップが届かないところは灰色に黒ずんでいる。なんか、手垢がついてるみたいで、嫌だ。
じっとみていると、あの灰色が手のひらに見えてきてゾッとする。

「ミナ!いつまで考え込んでんの?ホームルーム終わったよ。体育だから急がないと」
ユカに声をかけられて、ホームルームが終わっていたことに気がついた。
ぼけっとしすぎた。

私は、慌てて立ち上がると、ユカと一緒に体育館に急いだ。

「今日からバレーボールだって」
「げええ」

だって、バレーボールって痛いじゃん。
一度お遊びでやってみて、腕が痛くなって死ぬかと思った。

「やだなあ」
「だよね。テキトーにやろ?」

これがユカのいいところ。
スポ根みたいに頑張れって言われても頑張れないよ。人には向き不向きがあるんです。

急いで体育館に入っていくと、私たちが最後だった。
体育の先生に促されて、慌てて並ぶ。

「今日から、バレーボールに入ります。やったことある人?」

パラパラと何人かが自信なさげに手をあげた。
もちろん私は手を上げない。あのお遊びバレーは数に入らない。

ストレッチの後、二人組に分かれてレシーブ練習。
とりあえず、今日のところはそれで解散になった。

「今日はの片付けは・・・5日だから、5番と15番と25番の人。あと、体育委員」
あーあ。どんぴしゃり。
私は出席番号15番だから、仕方なく片付けに入ることになった。

体育委員の2人と5番の男子は仲がいいみたいで「俺たち体育館のモップがけするから、お前たちはボールを片付けて」とさっさと仕切られてしまった。

「はあい」ちょっとめんどいけど、モップがけよりボールをしまいに行った方がマシ。
私は25番の女の子と一緒にボールの入った大きな鉄のカゴをゴロゴロと押して体育倉庫に向かった。

「あ、そこ、段差あるから気をつけて」

誰かが横から声をかけた瞬間。

がったん。

音を立てて、カゴについた車輪が段差に引っかかった。

あっ!

多分そこにいた全員が声を出したと思う。

カゴは見事にひっくり返り、白というか灰色っぽくくて毛羽立った古びたバレーボールはあちこちに一斉に転がった。

「やっちゃったぁ」
「うわー、ごめん」

そばにいた男子がカゴを立て直し、女子もボール拾いに協力してくれている。
私は、一番遠くに転がっていったボールを走って追いかけた。

ころころころ・・・

なぜかボールは勢いを増して、どんどん進んでいく。
おかしいよね?フツー、何かにぶつかって止まらない?
そのはずなのに、灰色のボールはまるで私の顔色を伺うように、ゆっくり動いたり速く動いたりしているように見える。

疲れてるのかな?
それとも目がおかしいのかな?

目をこすってみたけど、相変わらずボールは止まらずに、どんどん灰色のアスファルトの上を進み、体育倉庫のドアに吸い込まれるようにして、建物の中に入り込み、見えなくなった。

「え?何で?」

と思ったけど、ボールの数が揃ってないと怒られる。
やばい、と思ってボールの後を追って体育倉庫に入った。

バタン。

大きな音を立てて後ろでドアがしまった。
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