兄さん、あんたの望みを教えてくれよ。

藍音

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第四幕〜終わりの始まり〜

198 【マティアス】塔の中のリュカ ※※

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なぜ、イネスは愛されて当然だと考えるのか。
そもそも私達の関係は、契約上のものだ。
愛など、稀な副産物以外の何物でもない。それは貴族であれば当然しっていてしかるべきこと。

家族のために、30も年の離れた老人と結婚したわけではない。
身分も財産もある。なぜそれで満足できない?

嫡男を数人産むまでは身を清く保ち、ある一定の時点で恋人をつくるのは当たり前のことだろう。目に余らなければ黙認するつもりでいたのに。
そして、私は健康な男だ。ひとりぐらい愛人を囲ってもいいじゃないか。しかも、その愛人は贅沢には興味がないし、社交会など参加する気もない。私がミラを伴い社交の場に出ることはないのだ。イネスにも好都合な相手なはずだ。

何よりも、私を裏切っておきながら・・・
思い出せばいつでも、心は暗くドロドロとしたもので満たされそうになる。
私は首を振り、塔に向かった。

リュカ。
リュカ。

どうか、このまま目覚めないでくれ。ずっと私の手の中で静かに眠っていてほしい。

それはリュカの人生を奪うことだ。
ちいさな声が聞こえる。
だが、どうしても・・・

もうすこし、もうすこしだけ。
目を覚ませばすぐ逃げてしまうだろう。
まるで希少な蝶のように、黒髪を羽のように揺らして、お前は走り去っていく。
振り返らず、思い出しすらしないだろう。


塔を昇ると、医者とその手伝いの使用人が小さく頭を下げた。
やせてイタチのような顔をした医者に話しかける。

「変わりは」
「大きくは」
「そうか」
「ですが・・・最近、身体が動くようになりました。おそらく、脳の機能が回復してきているのではないかと」
「・・・そうか。このことは誰にも言わないように」
「もちろんでございます」

医者は頭を下げ、部屋から出ていった。
しばらくはふたりきりだ。
私は扉に内鍵をかけ、向き直った。

「リュカ。リュカ」

声をかけても反応はない。
私はリュカの寝間着をくつろげた。

(痩せたな)

細い身体はますます細くなり、あばらが浮き出ている。
だが、白い肌にうかぶ桃色の乳首が私を誘惑するようにふるえていた。

舌先で転がすと、乳首はピンとたつ。交互に乳首を愛撫しながら、指先でつまむと、意識がないはずなのに、リュカのペニスがゆるゆると立ち上がった。

つい、笑いがこぼれる。私はリュカの下履きを剥ぎ取った。

「はは、気持ちいいのか。意識がないはずなのにな」

リュカの立ち上がった乳首を吸いながら、全身をまさぐる。肌に手を滑らせると、リュカの頬がどんどん紅潮してきた。心なしか、息に艶を含んでいるように思う。乳首から下へと唇を滑らせ、リュカのペニスの先端にそっと舌をはわすと、すでに先走りが出ている。塩気を含むそれを舐め上げ、亀頭を口に含んだ。

先端を吸いながら竿を擦り上げると、何度目かの刺激でリュカの身体は震え、あっけなく射精した。
リュカの精液を吐き出し、リュカの尻の穴に塗りつける。
足を大きく開くと、そこはねだるようにひくついていた。

指にもリュカの精液をまとわせ、そっと指を差し入れる。
出し入れを繰り返していると、だんだん身体が温まってきた。
指を2本に増やし、リュカの感じるところを刺激するように、バラバラと指を動かすと、先程いったばかりのリュカのペニスはまた力を持ち出した。

挿れたい。
だが、この状態のリュカに挿入するのは、壊してしまいそうで恐ろしかった。
リュカは女ではない。そこは挿れるための場所ではない。その事実が私をひるませた。

自分の前たてをくつろげると、リュカのペニスと合せて擦り上げた。
リュカのペニスはいつの間にかガチガチに立ち上がり、私のものと寄り添っている。
両手で二本のペニスをごしごしと擦り上げると、徐々に興奮が湧き上がり、そして火のような快感が走った。腹の底が滾るような熱さに目の奥がチカチカする。耳の奥では血がうなりをあげ、そして、全身に稲妻のような快感が走り抜けた。奔流のような勢いでリュカの身体にふたり分の精液が撒き散らされた。

「は、はは。すごいな」

リュカ、愛しいリュカ。お前とのセックスは誰ともちがう。誰ともこんなふうにはできない。
服に精液をつけないように用心しながら、唇を合わせ、舌でリュカの口内を犯した。

部屋に置かれたリネンでリュカと私の身体を拭い、自分のポケットに入れ、リュカの着衣をもとに戻す。
あたたかい身体の隣に横たわると、うららかな日差しに誘われ、つい眠くなった。
ああ、このままずっと目が覚めなければいいのに。

ぴくりとリュカの指先が動いた。
それはきっと気のせいだ。そうにちがいない。







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