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第四幕〜終わりの始まり〜
145 【マティアス】イヴァンの話
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「おー、おっかない。公子様は顔が怖いんだから、睨まないでくださいよ」
私がギロリとにらみつけると、イヴァンは両手で身体を抱き、震えたような仕草をしてみせた。
こいつのどこが怖がってるんだか。心臓に毛が生えてるだろ、お前は。
「で?なんだあいつは」
「うーん、リュカ様のお相手の一人?最近はあいつだけだったからもしかして恋人?いやまさかねえ?まあ、俺がいないときになんかイロイロやってたみたいですけど」
「なんだ、それは」
「思うに、リュカ様は寂しがりやなんですよ。一人ではいられないタイプってやつです。それかもしかしたら、なにか一人になることにトラウマでもあるのか・・・よくはわかりませんが、学園で親しい友がいないのを気にしていたようですし。とはいえ、自分から話しかけるタイプでもないですしね」
「だから、お前をつけたんだろう」
「おっしゃるとおり。俺の他にはネルっていう女の子しか友達がいなくて・・・いや、そんなおっかない目で見ないでください。ネルはただの友達です。本当に間違いなく。あれは男嫌いですからね」
「男嫌いのくせになぜリュカと親しくするんだ」
「そりゃ・・・リュカ様が男オトコしてないからですよ。女の子と友だちになっても違和感がない男だからです。公子様とはちがうんです」
「ふん」
「ご命令は、リュカ様の学友になることと同室者になり監視すること、でしょ?しっかり、ご命令は果たしましたよ」
「お前・・・本当に監視しかしてないんじゃないか?報告の一つも上げず・・・」
「上げるような報告はありませんでしたから。だって報告しろって言われてませんし。一応、これでもリュカの友人の一人ではあるのでね」
私はこの商人の息子を呆れて見た。
「報奨が少なかったと言うことか?」
「まさか!そんなわけないです。公爵家の御用聞きをさせていただくだけで、当商会には十分に恩恵がありますので!ただ、戦地にいる方に報告すべきではないでしょう?弟のみだらな性生活とか」
「みだら?」
「まあ、清潔ではありませんでしたね。一度なんぞはついうっかり現場に出くわしたこともありまして・・・」
「ついうっかり・・・」
私は頭を抱えた。いったい、リュカになにが起きたのだ?
別れた時のリュカとは違いすぎる。
あの、かわいい純粋なリュカはどこに行ってしまったんだ?
イヴァンの話では、寮の部屋で女と行為にふけっていたということか?それとも、男と?
「あ、相手は誰だ」
「多すぎて誰だかわかりませんよ。とっかえひっかえ。一時は毎日女が何人も訪ねてきて、アノ声がすごくてねえ。いつしかご濫行はおさまりましたが、本当にねえ?流石の俺も部屋を変えてくれと掛け合いそうになりましたよ。公子様がおっかないから我慢しましたけど」
頭痛がしてきた。リュカは何していたんだ?いつの間にそんなことに?
えぐれるような胸の痛みは続いていたが、だが本当のことを知りたかった。
「女子生徒か?」
「それはありません。もしあったら放校ですよ。どっちもね」
「では誰だ」
「・・・」
「どうせわかることだ、吐け」
「俺のせいで首にしないでくださいよ?戦時中のちょっとしたお楽しみなんですから。娯楽も禁止だし、他にやることなかったんですよ」
「誰だ」
「・・・メイドです」
「屋敷のメイドたちか」
「まあ、そうでしょうね。よくは知りません。でも女子生徒は寮に入れませんが、メイドは下働きのために寮に入れるんですよ。だから必ずお仕着せを着てるし・・・まあ、それが寮に入れる目印になるんですけど。普通は坊っちゃん方がいないうちに部屋を整えて屋敷に戻ります。でも、まあリュカの場合は違ったってことで」
「なんだと」
頭痛はどんどんひどくなってきた。聞けば聞くほど、救いがない。
「女たちはみんな満足して帰っていきましたし、まあ、リュカも楽しんだってことでいいんじゃないでしょうか」
「おいおい・・・」
この寮の風紀はどうなってるんだ。私が学生の時はそんなことはなかった。
確かに婚約中の男女が一線を越え、妊娠騒ぎになったことはあった。
だが、婚約中の男女のこと、すぐに結婚してことはおさまった。
まあ、出産を控えた女子生徒は退学したが。
「一応言っておきますけど、そんな騒ぎを起こしたのはリュカだけですから。俺だって未だに清らかに過ごしてますから」
私が呆れたように見ると、イヴァンは言葉を継いだ。
「ホントですって。リュカを諫めるために、恋人との愛あるセックスがどれだけいいものかを伝えたんですけど・・・やっぱ童貞だってバレてましたかね?説得力なかったかなあ」
「知らん」
イヴァンの話を信じたくない。
だが、さんざん戦地で偽りを見てきた目に、イヴァンの話は嘘だとは思えなかった。
私がギロリとにらみつけると、イヴァンは両手で身体を抱き、震えたような仕草をしてみせた。
こいつのどこが怖がってるんだか。心臓に毛が生えてるだろ、お前は。
「で?なんだあいつは」
「うーん、リュカ様のお相手の一人?最近はあいつだけだったからもしかして恋人?いやまさかねえ?まあ、俺がいないときになんかイロイロやってたみたいですけど」
「なんだ、それは」
「思うに、リュカ様は寂しがりやなんですよ。一人ではいられないタイプってやつです。それかもしかしたら、なにか一人になることにトラウマでもあるのか・・・よくはわかりませんが、学園で親しい友がいないのを気にしていたようですし。とはいえ、自分から話しかけるタイプでもないですしね」
「だから、お前をつけたんだろう」
「おっしゃるとおり。俺の他にはネルっていう女の子しか友達がいなくて・・・いや、そんなおっかない目で見ないでください。ネルはただの友達です。本当に間違いなく。あれは男嫌いですからね」
「男嫌いのくせになぜリュカと親しくするんだ」
「そりゃ・・・リュカ様が男オトコしてないからですよ。女の子と友だちになっても違和感がない男だからです。公子様とはちがうんです」
「ふん」
「ご命令は、リュカ様の学友になることと同室者になり監視すること、でしょ?しっかり、ご命令は果たしましたよ」
「お前・・・本当に監視しかしてないんじゃないか?報告の一つも上げず・・・」
「上げるような報告はありませんでしたから。だって報告しろって言われてませんし。一応、これでもリュカの友人の一人ではあるのでね」
私はこの商人の息子を呆れて見た。
「報奨が少なかったと言うことか?」
「まさか!そんなわけないです。公爵家の御用聞きをさせていただくだけで、当商会には十分に恩恵がありますので!ただ、戦地にいる方に報告すべきではないでしょう?弟のみだらな性生活とか」
「みだら?」
「まあ、清潔ではありませんでしたね。一度なんぞはついうっかり現場に出くわしたこともありまして・・・」
「ついうっかり・・・」
私は頭を抱えた。いったい、リュカになにが起きたのだ?
別れた時のリュカとは違いすぎる。
あの、かわいい純粋なリュカはどこに行ってしまったんだ?
イヴァンの話では、寮の部屋で女と行為にふけっていたということか?それとも、男と?
「あ、相手は誰だ」
「多すぎて誰だかわかりませんよ。とっかえひっかえ。一時は毎日女が何人も訪ねてきて、アノ声がすごくてねえ。いつしかご濫行はおさまりましたが、本当にねえ?流石の俺も部屋を変えてくれと掛け合いそうになりましたよ。公子様がおっかないから我慢しましたけど」
頭痛がしてきた。リュカは何していたんだ?いつの間にそんなことに?
えぐれるような胸の痛みは続いていたが、だが本当のことを知りたかった。
「女子生徒か?」
「それはありません。もしあったら放校ですよ。どっちもね」
「では誰だ」
「・・・」
「どうせわかることだ、吐け」
「俺のせいで首にしないでくださいよ?戦時中のちょっとしたお楽しみなんですから。娯楽も禁止だし、他にやることなかったんですよ」
「誰だ」
「・・・メイドです」
「屋敷のメイドたちか」
「まあ、そうでしょうね。よくは知りません。でも女子生徒は寮に入れませんが、メイドは下働きのために寮に入れるんですよ。だから必ずお仕着せを着てるし・・・まあ、それが寮に入れる目印になるんですけど。普通は坊っちゃん方がいないうちに部屋を整えて屋敷に戻ります。でも、まあリュカの場合は違ったってことで」
「なんだと」
頭痛はどんどんひどくなってきた。聞けば聞くほど、救いがない。
「女たちはみんな満足して帰っていきましたし、まあ、リュカも楽しんだってことでいいんじゃないでしょうか」
「おいおい・・・」
この寮の風紀はどうなってるんだ。私が学生の時はそんなことはなかった。
確かに婚約中の男女が一線を越え、妊娠騒ぎになったことはあった。
だが、婚約中の男女のこと、すぐに結婚してことはおさまった。
まあ、出産を控えた女子生徒は退学したが。
「一応言っておきますけど、そんな騒ぎを起こしたのはリュカだけですから。俺だって未だに清らかに過ごしてますから」
私が呆れたように見ると、イヴァンは言葉を継いだ。
「ホントですって。リュカを諫めるために、恋人との愛あるセックスがどれだけいいものかを伝えたんですけど・・・やっぱ童貞だってバレてましたかね?説得力なかったかなあ」
「知らん」
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