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第三幕〜空白の5年間 リュカ〜
131 【リュカ】悪魔の仕事とは?
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それから数日。
いつものように、業務報告と称して、ジュスタンがやってきた。
蛇のような小ずるいところがあるジュスタンは、イヴァンが寮を出たところを見計らって俺を訪ねてくる。
その日もそうだった。
「リュカ様、ごきげんよろしゅう」
寮の戸口で丁寧に胸に手をおいて挨拶するジュスタンを見ると、薄ら笑いがこぼれた。
俺は一体こいつの何を恐れていたんだろう。
こいつの変態性欲に煽られて、まごついて、本当にバカだったよ。
「ご苦労さま。今日の用事はなんだ」
こいつのおかげで、俺も偉そうな口の聞き方を覚えたんだよな。
俺は、ジュスタンを部屋に入れると、椅子もすすめず、ソファーにどっかと座り込み、足を組んだ。
ぶらぶらと俺の足先が揺れると、ジュスタンの視線が飢えた犬のように上下した。
「用事など・・・私とリュカ様の仲ではありませんか・・・耳寄りな情報もあるんですよ?」
「へえ」
おもねるように言うジュスタンに、俺はニヤリと笑った。
「言ってみろ」
「それでは・・・今日もおみ足を拝見しても?」
はっ!やっぱり変態だな。
俺は無表情で両足から靴と靴下を引き抜いた。
飢えたようなジュスタンの視線が追いかけてきた。
「リュカ様・・・」
声がうわずり、ジュスタンの興奮を伝えてくる。
今までの俺なら、この段階でもう動揺してしまっていた。
大嫌いなジュスタンにあてられ、暴走する俺の性欲に振り回されていたんだ。
でも、もう、違う。
ジュスタンの手が伸び、俺の足を触ろうとした。
予想どおりの行動に、俺は遠慮なく、ジュスタンの腹をかかとで蹴った。
「うっ」
突然の攻撃に驚いてうずくまるジュスタンを見ると冷笑が浮かんだ。
「リュカ様?」
「無礼者」
俺は目を白黒させているジュスタンの頬を足の甲でまた蹴った。
「馴れ馴れしいんだよ」
「な、なぜ?」
「はあ?」
もうこんなやつには振り回されない。
「お前さあ、勘違いしてるんじゃないのか?」
「か、かんちがい?」
「お前は俺のなに?恋人だとでも思ってんの?」
「め、めっそうもありません・・・」
「じゃあ、馴れ馴れしく勝手にさわんなよ」
「も、もうしわけありません」
「だいたいさあ、おまえ、いつもろくな情報持ってこないよな。小出しにしてんのか?それとも、俺のことなめてんの?」
ジュスタンは驚きと陶酔の混ざった複雑な表情で俺を見つめている。
きっと、こいつはもう俺のことを落としたと思っていただろう。
今日はきっと、俺のアソコまで触ろうとしていたはずだ。
早晩やっちまおうって考えてたに違いないんだ。この変態野郎。
冗談じゃねえ。
俺の頭はしんしんと冴えていた。
いままでのとろけた脳みその俺とは違う。
「い、いえ。今日お持ちしたのは、取って置きの情報です」
「ほう?」
「公爵閣下は、シモン様に子爵位をお与えになるおつもりです」
「ふん?」
「じつは、西のアヌシー領をお与えになるおつもりで、領主になるための準備を進めてまいりました。学園を卒業できたら、爵位を与えるとシモン様にお話になったのです」
「いつ?」
「え?」
「それをお前が知ったのはいつだよ」
「・・・」
「正直に言わないと、二度と出入り禁止にするぞ?」
「ひ、ひとつきほど前に・・・」
「へえ?」
俺は今度は反対側の頬を足で蹴った。
「ふざけやがって。散々俺に触ったくせに舐めてんな。小出しにしてどうしようと思ったんだよ。言ってみろよ、この変態」
ジュスタンはブルブルと震えると、顔を真っ赤に染め、とろけきった顔で俺の足元に身を投げ出した。
「も、もうしわけありません。少しでもたくさんお会いしたくて、情報を隠してしまいました。この、愚かなしもべに罰をお与えください」
「ばかやろう」
俺はジュスタンの背中をぐりぐりと踏みつけた。
「まったく、変態家庭教師にはご褒美だろうよ」
「あっ、あああっ、す、すみません」
「あのさあ。お前、勘違いすんなよ。お前は俺のなんだ?」
「し、しもべ、しもべでございます」
「ふうん?俺、うそつきのしもべはいらないんだよね」
「ああっ、お許しを、お許しを。どうか、一度だけ」
「っとに信用ならないやつだからなあ。どうしようかな」
「どうか、どうかっ・・・!!!」
ジュスタンが必死になって俺にすがりついた。そうそう、それでいいんだよ。
お前は俺の見た目が好きなんだろう?若い男が好きなんだろう?
俺がそれを利用して何が悪い?
「離れろ」
俺は冷たく言い放った。こいつは冷たくすればするほど効果がある。
「そこになおれ。手はひざ。俺にさわるな」俺は離れたところを指差した。
「あ、そんな」
「うるさいんだよ」
俺はまたジュスタンの顔を蹴った。
「いいか。お前はお前の立場を考えろ。言ったよなわきまえろって。お前が俺に教え込んだことだろ?教師のくせに、自分がわきまえなくてどうするんだよ」
ジュスタンは怯えたように俺を見た。出禁になると思って怖がっているに違いない。
「お前さあ、いつまで俺のこと舐めてられると思ったわけ?おい、物理的な意味じゃない、舌はしまっとけ」
いやらしく舌を突き出したジュスタンをにらみつける。
「お前の仕事はなんだ?言ってみろ」
「か、家庭教師?」
「俺の家庭教師じゃないだろ?お前はシモンの家庭教師だろ?お前は俺に舐めさせろだの触らせろだの踏めだの言うけど、どういう仕事の礼としてそんなこと要求してんの?」
「そ、それは情報を・・・」
「今までのちっぽけな情報にしちゃ随分対価が高いな。俺を馬鹿にしてんのか?」
「そ、そんなことは・・・」
「覚えとけ」俺は立ち上がって、ジュスタンの前に進み、仁王立ちになった。
「お前の仕事はシモンを兄上の役に立つ存在に仕立て上げることだ。兄上の立場を脅かす存在にすることじゃないんだよ。分かったか?」
「は、はい、もうしわけありませんでした」
「分かったならいい。じゃあ、前払いしてやる。その代わり、逆らったら出禁にするぞ?」
俺は、シャツのボタンをひとつ、またひとつと外しはじめた。
ジュスタンは目を丸くして、その様子を眺めている。まるで、お預けされた飢えた犬そっくりだ。
いつものように、業務報告と称して、ジュスタンがやってきた。
蛇のような小ずるいところがあるジュスタンは、イヴァンが寮を出たところを見計らって俺を訪ねてくる。
その日もそうだった。
「リュカ様、ごきげんよろしゅう」
寮の戸口で丁寧に胸に手をおいて挨拶するジュスタンを見ると、薄ら笑いがこぼれた。
俺は一体こいつの何を恐れていたんだろう。
こいつの変態性欲に煽られて、まごついて、本当にバカだったよ。
「ご苦労さま。今日の用事はなんだ」
こいつのおかげで、俺も偉そうな口の聞き方を覚えたんだよな。
俺は、ジュスタンを部屋に入れると、椅子もすすめず、ソファーにどっかと座り込み、足を組んだ。
ぶらぶらと俺の足先が揺れると、ジュスタンの視線が飢えた犬のように上下した。
「用事など・・・私とリュカ様の仲ではありませんか・・・耳寄りな情報もあるんですよ?」
「へえ」
おもねるように言うジュスタンに、俺はニヤリと笑った。
「言ってみろ」
「それでは・・・今日もおみ足を拝見しても?」
はっ!やっぱり変態だな。
俺は無表情で両足から靴と靴下を引き抜いた。
飢えたようなジュスタンの視線が追いかけてきた。
「リュカ様・・・」
声がうわずり、ジュスタンの興奮を伝えてくる。
今までの俺なら、この段階でもう動揺してしまっていた。
大嫌いなジュスタンにあてられ、暴走する俺の性欲に振り回されていたんだ。
でも、もう、違う。
ジュスタンの手が伸び、俺の足を触ろうとした。
予想どおりの行動に、俺は遠慮なく、ジュスタンの腹をかかとで蹴った。
「うっ」
突然の攻撃に驚いてうずくまるジュスタンを見ると冷笑が浮かんだ。
「リュカ様?」
「無礼者」
俺は目を白黒させているジュスタンの頬を足の甲でまた蹴った。
「馴れ馴れしいんだよ」
「な、なぜ?」
「はあ?」
もうこんなやつには振り回されない。
「お前さあ、勘違いしてるんじゃないのか?」
「か、かんちがい?」
「お前は俺のなに?恋人だとでも思ってんの?」
「め、めっそうもありません・・・」
「じゃあ、馴れ馴れしく勝手にさわんなよ」
「も、もうしわけありません」
「だいたいさあ、おまえ、いつもろくな情報持ってこないよな。小出しにしてんのか?それとも、俺のことなめてんの?」
ジュスタンは驚きと陶酔の混ざった複雑な表情で俺を見つめている。
きっと、こいつはもう俺のことを落としたと思っていただろう。
今日はきっと、俺のアソコまで触ろうとしていたはずだ。
早晩やっちまおうって考えてたに違いないんだ。この変態野郎。
冗談じゃねえ。
俺の頭はしんしんと冴えていた。
いままでのとろけた脳みその俺とは違う。
「い、いえ。今日お持ちしたのは、取って置きの情報です」
「ほう?」
「公爵閣下は、シモン様に子爵位をお与えになるおつもりです」
「ふん?」
「じつは、西のアヌシー領をお与えになるおつもりで、領主になるための準備を進めてまいりました。学園を卒業できたら、爵位を与えるとシモン様にお話になったのです」
「いつ?」
「え?」
「それをお前が知ったのはいつだよ」
「・・・」
「正直に言わないと、二度と出入り禁止にするぞ?」
「ひ、ひとつきほど前に・・・」
「へえ?」
俺は今度は反対側の頬を足で蹴った。
「ふざけやがって。散々俺に触ったくせに舐めてんな。小出しにしてどうしようと思ったんだよ。言ってみろよ、この変態」
ジュスタンはブルブルと震えると、顔を真っ赤に染め、とろけきった顔で俺の足元に身を投げ出した。
「も、もうしわけありません。少しでもたくさんお会いしたくて、情報を隠してしまいました。この、愚かなしもべに罰をお与えください」
「ばかやろう」
俺はジュスタンの背中をぐりぐりと踏みつけた。
「まったく、変態家庭教師にはご褒美だろうよ」
「あっ、あああっ、す、すみません」
「あのさあ。お前、勘違いすんなよ。お前は俺のなんだ?」
「し、しもべ、しもべでございます」
「ふうん?俺、うそつきのしもべはいらないんだよね」
「ああっ、お許しを、お許しを。どうか、一度だけ」
「っとに信用ならないやつだからなあ。どうしようかな」
「どうか、どうかっ・・・!!!」
ジュスタンが必死になって俺にすがりついた。そうそう、それでいいんだよ。
お前は俺の見た目が好きなんだろう?若い男が好きなんだろう?
俺がそれを利用して何が悪い?
「離れろ」
俺は冷たく言い放った。こいつは冷たくすればするほど効果がある。
「そこになおれ。手はひざ。俺にさわるな」俺は離れたところを指差した。
「あ、そんな」
「うるさいんだよ」
俺はまたジュスタンの顔を蹴った。
「いいか。お前はお前の立場を考えろ。言ったよなわきまえろって。お前が俺に教え込んだことだろ?教師のくせに、自分がわきまえなくてどうするんだよ」
ジュスタンは怯えたように俺を見た。出禁になると思って怖がっているに違いない。
「お前さあ、いつまで俺のこと舐めてられると思ったわけ?おい、物理的な意味じゃない、舌はしまっとけ」
いやらしく舌を突き出したジュスタンをにらみつける。
「お前の仕事はなんだ?言ってみろ」
「か、家庭教師?」
「俺の家庭教師じゃないだろ?お前はシモンの家庭教師だろ?お前は俺に舐めさせろだの触らせろだの踏めだの言うけど、どういう仕事の礼としてそんなこと要求してんの?」
「そ、それは情報を・・・」
「今までのちっぽけな情報にしちゃ随分対価が高いな。俺を馬鹿にしてんのか?」
「そ、そんなことは・・・」
「覚えとけ」俺は立ち上がって、ジュスタンの前に進み、仁王立ちになった。
「お前の仕事はシモンを兄上の役に立つ存在に仕立て上げることだ。兄上の立場を脅かす存在にすることじゃないんだよ。分かったか?」
「は、はい、もうしわけありませんでした」
「分かったならいい。じゃあ、前払いしてやる。その代わり、逆らったら出禁にするぞ?」
俺は、シャツのボタンをひとつ、またひとつと外しはじめた。
ジュスタンは目を丸くして、その様子を眺めている。まるで、お預けされた飢えた犬そっくりだ。
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