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第三幕〜空白の5年間 リュカ〜
108 【リュカ】ともだちの怒り
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前2回のあらすじ
閣下が愛人とエッチをしている声を聞いたリュカは、女性とのエッチに興味をもってしまいます。
御用聞きに来ているメイドの一人に手をつけたら、次々に女性と関係を持つようになってしまいました。戦時中で男が少ないこともリュカの情事に拍車をかけてしまいます。
それを聞いた閣下は大笑い。酔った閣下は、マティアスがリュカに惚れていたと暴露しますが、リュカはそれを信じられません。
***************************************************
学園の寮でやりまくった俺のことを知らない人間はいなくなった。当たり前だよな。
しかも毎週ぞろぞろと女がやってきて、交互に嬌声をあげてりゃだれでもわかるって。
「あんた、いったい何やってるのよ。もう女子寮まで噂が届いてるわよ」
ネルが両手を腰に当てて、頬を膨らませた。そんな仕草も可愛いな。
「やめて。あんたにまとわりつく女と同じ扱いしないで。私は違うから」
ネルは目を細め、俺を嫌悪するように見た。
さすがネルだ。俺の心を読みやがった。
「ほんと、いい加減にしなよね。噂によると、女が何人も入れ替わりで寮の部屋に来てるとか、複数来てるとか。叫び声が聞こえるとか、本当かどうかは知らないけど、すごいことになってるのよ?放校にしろって声も出てるらしいじゃない」
「ははは、噂は正確だな」
「どうしちゃったのよ、リュカ。あんたそんな子じゃなかったじゃない」
「うるさい。お前が俺の何を知ってるって言うんだよ」
「知ってるわよ!あんたがどれだけお兄さんを好きだったのかも。でもどうしても叶わなくて苦しんでたのも知ってる。だって私たち、友達じゃない」
ネルの声は震えて、今にも泣き出しそうだった。
「知ってるなら、これ以上何も言うなよ!もうつらいのはいやなんだよ!兄さんに婚約者がいるのも、なにもかも、つらいんだよ!兄さんがいなくなってからもう2年以上経つんだ。おれだって前に進みたいと思ったっていいだろ」
「リュカ!あんた逃げてるのよ。進む方向が間違ってる」
「わかってるよ!逃げて何が悪いんだ!」
「そんなことしてたらあんたの心が死んじゃうからよ!」
ネルは泣いていた。
「お願いだから、あんたの心を大切にして。愛しているならいい。でも、そうじゃないなら、あなた傷ついてるでしょ?女の人をそんな風に扱って、自分だって苦しんでるでしょ?もう、やめて」
「・・・泣くなよ」
なんでわかるんだよ。なんで、俺の心が読めるんだ。ともだちだからか。
こいつは、本当のともだちだから、か。
女を抱くと、その瞬間だけは兄のことを忘れられる気がした。
でも、その後には冷静になって、嫌悪感と罪悪感で死にたくなる。
少しでもその死にたくなるような辛い気持ちをわすれたくて、女の体におぼれた。
目先の肉欲に囚われたちいさな自分と、戦争に行っている兄への申し訳なさでどうしようもなくなるんだ。
でも、兄が戻ってきたら、イネスと結婚してしまうのもこわい。
未来が恐ろしすぎて、俺は逃げたんだ。
「ねえ、リュカ。私あんたと寝ることはできないけど、一緒にいることはできるよ。ともだちだもん。それではだめ?それならみじめな気持ちにならないよ?」
「ネル」
「お願いだから、自分をおとしめるようなことしないで。お兄さんだって望まないはず」
ネルは俺に一歩近づいた。
「愛し合う行為は誰とでもできるわけじゃない。あんたがしたのは単なるセックスでしょ?愛し合ったわけじゃない。ねえ、どう?相手がお兄さんだったら、あなたはどう思うの?」
ばきっと殴られたように、俺の中で何かが折れた。
両手に顔をうずめると、くぐもった声がもれた。
「・・・死んでもいい。兄さんなら、もう、死んでもいい」
「・・・そうよね。わかる」
ネルは俺の肩に手を置くと、トントンと背中を叩いた。
「わかるよ」
その時ネルの心に誰がいたのか、俺は知らない。でも、きっと、俺みたいに手が届かない相手に恋をしているんだってことははっきりとわかった。
兄さん、ごめんなさい。俺、逃げたんだ。怖くて怖くてたまらなかった。
本当は兄さんが帰ってこられないってことも怖かったんだ。
もしかして、今兄さんが酷い目にあってるんじゃないかとか、死にかけてるんじゃないかとか、想像するだけで夜も眠れない。
それなのに、閣下から話を聞き出すことすらできないし、母ちゃんの真似事までしても全然らちがあかないし。
兄さん、ごめんなさい。兄さんの評判を汚すようなことをして。
本当にダメな弟でごめんなさい。
そばにいたいとか、そんなことばかり考えていて、ごめんなさい。
兄さん、ゆるして。
俺、汚いよね。
本当に、ごめんなさい。
閣下が愛人とエッチをしている声を聞いたリュカは、女性とのエッチに興味をもってしまいます。
御用聞きに来ているメイドの一人に手をつけたら、次々に女性と関係を持つようになってしまいました。戦時中で男が少ないこともリュカの情事に拍車をかけてしまいます。
それを聞いた閣下は大笑い。酔った閣下は、マティアスがリュカに惚れていたと暴露しますが、リュカはそれを信じられません。
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学園の寮でやりまくった俺のことを知らない人間はいなくなった。当たり前だよな。
しかも毎週ぞろぞろと女がやってきて、交互に嬌声をあげてりゃだれでもわかるって。
「あんた、いったい何やってるのよ。もう女子寮まで噂が届いてるわよ」
ネルが両手を腰に当てて、頬を膨らませた。そんな仕草も可愛いな。
「やめて。あんたにまとわりつく女と同じ扱いしないで。私は違うから」
ネルは目を細め、俺を嫌悪するように見た。
さすがネルだ。俺の心を読みやがった。
「ほんと、いい加減にしなよね。噂によると、女が何人も入れ替わりで寮の部屋に来てるとか、複数来てるとか。叫び声が聞こえるとか、本当かどうかは知らないけど、すごいことになってるのよ?放校にしろって声も出てるらしいじゃない」
「ははは、噂は正確だな」
「どうしちゃったのよ、リュカ。あんたそんな子じゃなかったじゃない」
「うるさい。お前が俺の何を知ってるって言うんだよ」
「知ってるわよ!あんたがどれだけお兄さんを好きだったのかも。でもどうしても叶わなくて苦しんでたのも知ってる。だって私たち、友達じゃない」
ネルの声は震えて、今にも泣き出しそうだった。
「知ってるなら、これ以上何も言うなよ!もうつらいのはいやなんだよ!兄さんに婚約者がいるのも、なにもかも、つらいんだよ!兄さんがいなくなってからもう2年以上経つんだ。おれだって前に進みたいと思ったっていいだろ」
「リュカ!あんた逃げてるのよ。進む方向が間違ってる」
「わかってるよ!逃げて何が悪いんだ!」
「そんなことしてたらあんたの心が死んじゃうからよ!」
ネルは泣いていた。
「お願いだから、あんたの心を大切にして。愛しているならいい。でも、そうじゃないなら、あなた傷ついてるでしょ?女の人をそんな風に扱って、自分だって苦しんでるでしょ?もう、やめて」
「・・・泣くなよ」
なんでわかるんだよ。なんで、俺の心が読めるんだ。ともだちだからか。
こいつは、本当のともだちだから、か。
女を抱くと、その瞬間だけは兄のことを忘れられる気がした。
でも、その後には冷静になって、嫌悪感と罪悪感で死にたくなる。
少しでもその死にたくなるような辛い気持ちをわすれたくて、女の体におぼれた。
目先の肉欲に囚われたちいさな自分と、戦争に行っている兄への申し訳なさでどうしようもなくなるんだ。
でも、兄が戻ってきたら、イネスと結婚してしまうのもこわい。
未来が恐ろしすぎて、俺は逃げたんだ。
「ねえ、リュカ。私あんたと寝ることはできないけど、一緒にいることはできるよ。ともだちだもん。それではだめ?それならみじめな気持ちにならないよ?」
「ネル」
「お願いだから、自分をおとしめるようなことしないで。お兄さんだって望まないはず」
ネルは俺に一歩近づいた。
「愛し合う行為は誰とでもできるわけじゃない。あんたがしたのは単なるセックスでしょ?愛し合ったわけじゃない。ねえ、どう?相手がお兄さんだったら、あなたはどう思うの?」
ばきっと殴られたように、俺の中で何かが折れた。
両手に顔をうずめると、くぐもった声がもれた。
「・・・死んでもいい。兄さんなら、もう、死んでもいい」
「・・・そうよね。わかる」
ネルは俺の肩に手を置くと、トントンと背中を叩いた。
「わかるよ」
その時ネルの心に誰がいたのか、俺は知らない。でも、きっと、俺みたいに手が届かない相手に恋をしているんだってことははっきりとわかった。
兄さん、ごめんなさい。俺、逃げたんだ。怖くて怖くてたまらなかった。
本当は兄さんが帰ってこられないってことも怖かったんだ。
もしかして、今兄さんが酷い目にあってるんじゃないかとか、死にかけてるんじゃないかとか、想像するだけで夜も眠れない。
それなのに、閣下から話を聞き出すことすらできないし、母ちゃんの真似事までしても全然らちがあかないし。
兄さん、ごめんなさい。兄さんの評判を汚すようなことをして。
本当にダメな弟でごめんなさい。
そばにいたいとか、そんなことばかり考えていて、ごめんなさい。
兄さん、ゆるして。
俺、汚いよね。
本当に、ごめんなさい。
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