38 / 279
第一幕〜リュカ〜
37 12歳 救出 ※
しおりを挟む
閣下の手が俺に触れ、気が付かぬ間に、床の上に押し倒された。小柄な俺が、体術を極めた閣下にかなうはずはなかった。
「リュカ、かわいいリュカ。髪も目も肌もアディに瓜二つだ。お前は本当はアディじゃないのか?桃の香りの香水を贈ろう。かわいいアディ」
強い男の力に押さえつけられ、身動きが取れない。
暴れて公爵様に怪我でもさせてしまったら、殺されるかもしれない。
俺だけじゃなくて、弟妹までも危険に晒されるかもと身がすくむ。
「アディ・・・」
閣下は俺の服のボタンを一つ一つ外し始めた。
「なんてかわいいんだ。愛してるよ」
甘い声でささやきながら俺の首筋に口付けられ、体が小刻みに震え出した。
(狂ってる、絶対に狂ってる。このままでは、何をされるかわからない・・・もしかしたら、母ではないことに気がついた瞬間に殴られるかも・・・悪くしたら殺される?)
震える唇に閣下が口付けると、なめくじのような感触にゾッとする。
兄とした口付けはあんなに甘美だったのに。
ただただ恐ろしい。
「や、やめて・・・」
やっと絞り出した声は小さくかすれていた。
「大丈夫、すぐに好きになるよ。前もそうだったろう?泣いて嫌がったのは最初だけ。すぐに自分からねだるようになっただろう?」
「ひっ・・・」
閣下は片手で俺の両手を掴むと、俺の足の間に割って入った。
空いた方の手で全身をまさぐられ、衣類は少しづつ剥ぎ取られていく。
体も手も大きさが違い、逃げようとしてもビクともしない。
恐怖で涙があふれでた。
「アディ」
「やめてください。正気に戻ってください、閣下。俺はアディじゃない、リュカです!!」
「黙れ!」
公爵がゾッとするようなくらい目で俺を見た。
(正気じゃない)
「やめてください、やめて、やめて・・・」
俺は泣きながら懇願した。
あれだけ必死に兄が教えてくれた体術も、公爵の力の前には無力だ。
公爵の舌が俺の首筋をぬるりとつたい、同時に俺の乳首を指先でカリカリと刺激した。
「あっ・・・」
驚きのあまり声が出ると、公爵が嬉しそうに喉の奥で笑った。
「ほら、すぐに好きになると言ったろう?」
「ち、ちがう」
「どこが違うんだ、淫らな子だね」
「嫌だ、やめて」
「静かに。言うことを聞きなさい」
妙に威厳のある閣下の声に喉が詰まる。
助けて、誰か助けて。
ベネディクトはこうなるとわかっていたの?
俺は愛人の子だから、公爵様にこんなことをされても耐えなければならないの?
助けて、助けて・・・にいちゃん!!
「いやだ、いやだ!にいちゃん、にいちゃん、助けて!!嫌だよーーーー」
叫び声を上げた瞬間、部屋の扉が開いた。
「リュカ!」
息を切らし、髪を乱した兄が部屋に駆け込んできた。
その後ろにはベネディクトが続いている。
「父上、リュカを離してください!今すぐに!」
兄の剣幕に、閣下は一瞬ひるんだが「出て行け!」と怒鳴りつけた。
俺を押さえつける手の力は少しも緩まない。
兄は無言で閣下に近づくと、閣下の腹を猛烈な勢いで蹴り飛ばした。
「ぐおっ」
閣下がうめき、蹴り飛ばされた体が近くにあった椅子にあたり鈍い音を立てた。
「まさか、公爵が実の子に手を出すはずがありませんよね。きっと悪い夢です」
兄はそう言い捨てると俺を引き起こした。
「二度とリュカに触れないでください。これは私のものです」
「なんだと?!」
「あなたは一度たりともリュカを大切にしなかったでしょう?リュカは私が大切にしている弟です。手篭めにするなどもってのほか」
「手篭めなどと」
「ばかばかしい。メイドに手を出したのと同じだと?泣いているのがわからないんですか」
公爵は俺を見ると、少しバツが悪そうに顔をしかめた。
「この家にあるすべてのものは私のものだ」
「残念ながら実の子に無体を働くことは含まれませんよ」
兄は遠慮なく公爵をやり込めると、俺の手を引っ張った。
「いくぞ」
「うん」
扉の外に出る瞬間、兄は閣下を振り返った。
「いいですね。これは私のものです。次に触れたら実の父でも容赦しませんからね」
そういい捨てると、兄は無言のまま俺を自分の部屋に連れていった。
振り返って俺を見た兄の視線は、嫌悪感に満ちていた。俺は兄の剣幕におびえ、身体を小さく丸めることしかできなかった。
「汚らわしい。その服を脱げ」
兄は吐き捨てるように言うと、足音高く部屋を出て行った。
(服?)
俺が自分の衣服を見おろすと、いつの間にかシャツの片方の袖は破れ、ボタンも2つ飛んでいた。
乱れた衣類に腹が立ったのか、それとも、一人では身を守ることもできない俺にいらだったんだろうか。
震える指先に無理矢理力を入れて、のろのろとシャツを脱いでいると兄がメイドを連れて戻ってきた。
「焼き棄てろ。その汚れた服を私の目に二度と触れさせるな」
兄の剣幕にメイドは怯えた様子で俺の服を拾い上げ、逃げるように部屋を出ていった。
「まだ湯が来るまでには少しかかる。おとなしく座って待て」
兄はひとつ大きく息を吐くと、俺の体をリネンでくるみ、部屋の中を足早にぐるぐると歩き回った。
「殺してやりたい」
小さな声だったが、確かに聞こえた。
それが誰に向けたものなのか、俺には確信がなかった。
「リュカ、かわいいリュカ。髪も目も肌もアディに瓜二つだ。お前は本当はアディじゃないのか?桃の香りの香水を贈ろう。かわいいアディ」
強い男の力に押さえつけられ、身動きが取れない。
暴れて公爵様に怪我でもさせてしまったら、殺されるかもしれない。
俺だけじゃなくて、弟妹までも危険に晒されるかもと身がすくむ。
「アディ・・・」
閣下は俺の服のボタンを一つ一つ外し始めた。
「なんてかわいいんだ。愛してるよ」
甘い声でささやきながら俺の首筋に口付けられ、体が小刻みに震え出した。
(狂ってる、絶対に狂ってる。このままでは、何をされるかわからない・・・もしかしたら、母ではないことに気がついた瞬間に殴られるかも・・・悪くしたら殺される?)
震える唇に閣下が口付けると、なめくじのような感触にゾッとする。
兄とした口付けはあんなに甘美だったのに。
ただただ恐ろしい。
「や、やめて・・・」
やっと絞り出した声は小さくかすれていた。
「大丈夫、すぐに好きになるよ。前もそうだったろう?泣いて嫌がったのは最初だけ。すぐに自分からねだるようになっただろう?」
「ひっ・・・」
閣下は片手で俺の両手を掴むと、俺の足の間に割って入った。
空いた方の手で全身をまさぐられ、衣類は少しづつ剥ぎ取られていく。
体も手も大きさが違い、逃げようとしてもビクともしない。
恐怖で涙があふれでた。
「アディ」
「やめてください。正気に戻ってください、閣下。俺はアディじゃない、リュカです!!」
「黙れ!」
公爵がゾッとするようなくらい目で俺を見た。
(正気じゃない)
「やめてください、やめて、やめて・・・」
俺は泣きながら懇願した。
あれだけ必死に兄が教えてくれた体術も、公爵の力の前には無力だ。
公爵の舌が俺の首筋をぬるりとつたい、同時に俺の乳首を指先でカリカリと刺激した。
「あっ・・・」
驚きのあまり声が出ると、公爵が嬉しそうに喉の奥で笑った。
「ほら、すぐに好きになると言ったろう?」
「ち、ちがう」
「どこが違うんだ、淫らな子だね」
「嫌だ、やめて」
「静かに。言うことを聞きなさい」
妙に威厳のある閣下の声に喉が詰まる。
助けて、誰か助けて。
ベネディクトはこうなるとわかっていたの?
俺は愛人の子だから、公爵様にこんなことをされても耐えなければならないの?
助けて、助けて・・・にいちゃん!!
「いやだ、いやだ!にいちゃん、にいちゃん、助けて!!嫌だよーーーー」
叫び声を上げた瞬間、部屋の扉が開いた。
「リュカ!」
息を切らし、髪を乱した兄が部屋に駆け込んできた。
その後ろにはベネディクトが続いている。
「父上、リュカを離してください!今すぐに!」
兄の剣幕に、閣下は一瞬ひるんだが「出て行け!」と怒鳴りつけた。
俺を押さえつける手の力は少しも緩まない。
兄は無言で閣下に近づくと、閣下の腹を猛烈な勢いで蹴り飛ばした。
「ぐおっ」
閣下がうめき、蹴り飛ばされた体が近くにあった椅子にあたり鈍い音を立てた。
「まさか、公爵が実の子に手を出すはずがありませんよね。きっと悪い夢です」
兄はそう言い捨てると俺を引き起こした。
「二度とリュカに触れないでください。これは私のものです」
「なんだと?!」
「あなたは一度たりともリュカを大切にしなかったでしょう?リュカは私が大切にしている弟です。手篭めにするなどもってのほか」
「手篭めなどと」
「ばかばかしい。メイドに手を出したのと同じだと?泣いているのがわからないんですか」
公爵は俺を見ると、少しバツが悪そうに顔をしかめた。
「この家にあるすべてのものは私のものだ」
「残念ながら実の子に無体を働くことは含まれませんよ」
兄は遠慮なく公爵をやり込めると、俺の手を引っ張った。
「いくぞ」
「うん」
扉の外に出る瞬間、兄は閣下を振り返った。
「いいですね。これは私のものです。次に触れたら実の父でも容赦しませんからね」
そういい捨てると、兄は無言のまま俺を自分の部屋に連れていった。
振り返って俺を見た兄の視線は、嫌悪感に満ちていた。俺は兄の剣幕におびえ、身体を小さく丸めることしかできなかった。
「汚らわしい。その服を脱げ」
兄は吐き捨てるように言うと、足音高く部屋を出て行った。
(服?)
俺が自分の衣服を見おろすと、いつの間にかシャツの片方の袖は破れ、ボタンも2つ飛んでいた。
乱れた衣類に腹が立ったのか、それとも、一人では身を守ることもできない俺にいらだったんだろうか。
震える指先に無理矢理力を入れて、のろのろとシャツを脱いでいると兄がメイドを連れて戻ってきた。
「焼き棄てろ。その汚れた服を私の目に二度と触れさせるな」
兄の剣幕にメイドは怯えた様子で俺の服を拾い上げ、逃げるように部屋を出ていった。
「まだ湯が来るまでには少しかかる。おとなしく座って待て」
兄はひとつ大きく息を吐くと、俺の体をリネンでくるみ、部屋の中を足早にぐるぐると歩き回った。
「殺してやりたい」
小さな声だったが、確かに聞こえた。
それが誰に向けたものなのか、俺には確信がなかった。
0
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説
大親友に監禁される話
だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。
目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。
R描写はありません。
トイレでないところで小用をするシーンがあります。
※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる