231 / 247
5 フィナーレ
227 生と死の狭間
しおりを挟む
ふわりふわり
うっすらを目を開けると、そこは・・・どこ?
周りには何もない。
白く光る雲のような不思議な物体と私がふわふわと浮いている。
鼻先をかすめるのは、天使の羽?それとも花びら?
白と薄い水色しかない単色の世界。
その中では色を持つ私は異物?
ぼんやりと目を開いて手を見る。
(は、半透明?)
突然目が覚めた。
一体何が起きてるの?
なんで半透明になっちゃったの?
オロオロしていると記憶がゆっくりと渦を巻くように私の頭の中を回転し始めた。
そうだ。私、転生して聖女になったんだった。
ゲームの世界に転生したくせに、全然内容知らなくて。
ただパッケージデザインしか知らなかった。
ううん、違う。
もっと知ってた。
そうだ。妹!
妹がいたから。
愛理。
愛理がはまってたゲームだ。R18版を買ってきてって言われて断った。あのゲーム。
R18版じゃなくてよかった。
よく知らない人とエッチするなんて嫌だもん。しかも、そんなこと、ゲームの進行に左右されるなんて・・・
何?なんかもっと大事なこと忘れてる?
そうだ。ハル様!戻らなきゃ。
突然記憶は勢いを増して私の中に流れ込んできた。
キュイーーーーーン
キュイーーーーーン
キュイーーーーーン
いやだ。あの音。痛い。頭が痛い。
やめて、やめて、やめて。
私の中を記憶が逆流する。
ハル様の叫び声。
突然駆け寄ってきたライ。
背中の痛み。
錯乱するルシアナ様。
ヴィダル先生。
タチアナ様、エリザベス様、とうさま。
どんどんと記憶が流れ込む。
聖女を応援してくれた人たち。
笑顔。
心配そうな声。
祈る姿。
ジョセフ。
ジョセフの家族の方達。
ケイレブ、リーラ、ガウデン侯
湖の浄化。
あのカニは手強かった。
リカルド。変態だけど時々頼りになる。
金属音とともに渦を巻いて回り出す記憶達。
学園の人たち
ヴィー様、デボラ。
男爵領の人たち。
お母さん・・・!
その瞬間、私の目の前で光が弾けた。
「ステラ」
はっ!!!!
目が覚めた。
ここは、一体どこ?
私を呼ぶのは誰?
「ステラ。私の愛し子よ」
頭の中に響く声。
そうだ。すっかり忘れていた。
なんで思い出さなかったんだろう。
いえ、違う。
そういう約束だった。
ここで知ったことは全て忘れるって。
忘れて新しい生を生きること、それが約束だった。
そうでしたよね?
「神様」
私は声の主に語りかけた。
「ステラ。過酷な運命の子。なぜ戻ってきたのだ?」
声が耳の奥に響く。
「何故でしょう?私にもわかりません。でも、私、お約束のとおり精一杯生きました」
そう、それが約束。
前世で事故死した私は、この世界で生きる力を失った聖女の代わりとして転生した。
私の中にいて、いつしか混ざり合っていったあの小さな女の子。
本来の聖女はあの子のはずだった。
ただ、いまはもうどちらがどちらかわからない。あの子も私も、両方私であの子。そういう存在。
転生の条件は、「精一杯生きること」
それだけ、だけど、それはそれなりに大変な条件だった。
「どうする?」
神様の声。
「どうするとは?」
「お前は私との約束を守り、精一杯生きた。ただ、不測の事態により、また命を断たれることになった。約束を必死で守ったお前に免じて一度だけ戻してやろう。時間は思いのままだ。それとも、他の世界に転生するか?」
「他の世界に転生する?」
「つまり、これまでの世界でのお前はいなくなる。このまま、死ぬ、ということだな」
「えっ?」
「何故迷う?すでにお前を害した世界だろうに」
「確かに・・・でも、全員じゃなくて!応援してくれた人も支えてくれた人もいたんです」
「ふむ。ではどうする?いつまでも永遠には迷っていられまい」
「突然すぎて、驚いているだけです。どうしたらいいのか」
「ここは、生と死の狭間。生ある人間が長くいては戻れなくなってしまう。生ある人間の世界に戻るか、それとも霊体に変化するのか決めねばならぬ。放っておけば、霊体に変化してしまうだろうな。まあ、特に悪行もしておらんし、悪霊にはなるまいが。保証の限りではないがの」
ちょっと待って。前回の私はどう答えた?
覚えてない。
でも、どこでもいいからもっと生きたいって答えたってこと?
わからない。
そうだ。新しい力と体に馴染むまで、痛みがあるって言われたんだ。
あの痛みはそういうことだったんだ。
ということは、もしかしてさっきの痛みは・・・もう始まってるってこと?
次の人生の「新しいカタチ」に慣れるための痛みが始まってるってこと?
もう戻れない?
そんなの、絶対に、イヤ!!
「戻りたい!戻して、戻してください!!私を今いた世界に戻してください!!」
私が叫ぶと、神様がくつくつと笑う声が聞こえた。
そして、次の瞬間、私は宙に放り出された。
うっすらを目を開けると、そこは・・・どこ?
周りには何もない。
白く光る雲のような不思議な物体と私がふわふわと浮いている。
鼻先をかすめるのは、天使の羽?それとも花びら?
白と薄い水色しかない単色の世界。
その中では色を持つ私は異物?
ぼんやりと目を開いて手を見る。
(は、半透明?)
突然目が覚めた。
一体何が起きてるの?
なんで半透明になっちゃったの?
オロオロしていると記憶がゆっくりと渦を巻くように私の頭の中を回転し始めた。
そうだ。私、転生して聖女になったんだった。
ゲームの世界に転生したくせに、全然内容知らなくて。
ただパッケージデザインしか知らなかった。
ううん、違う。
もっと知ってた。
そうだ。妹!
妹がいたから。
愛理。
愛理がはまってたゲームだ。R18版を買ってきてって言われて断った。あのゲーム。
R18版じゃなくてよかった。
よく知らない人とエッチするなんて嫌だもん。しかも、そんなこと、ゲームの進行に左右されるなんて・・・
何?なんかもっと大事なこと忘れてる?
そうだ。ハル様!戻らなきゃ。
突然記憶は勢いを増して私の中に流れ込んできた。
キュイーーーーーン
キュイーーーーーン
キュイーーーーーン
いやだ。あの音。痛い。頭が痛い。
やめて、やめて、やめて。
私の中を記憶が逆流する。
ハル様の叫び声。
突然駆け寄ってきたライ。
背中の痛み。
錯乱するルシアナ様。
ヴィダル先生。
タチアナ様、エリザベス様、とうさま。
どんどんと記憶が流れ込む。
聖女を応援してくれた人たち。
笑顔。
心配そうな声。
祈る姿。
ジョセフ。
ジョセフの家族の方達。
ケイレブ、リーラ、ガウデン侯
湖の浄化。
あのカニは手強かった。
リカルド。変態だけど時々頼りになる。
金属音とともに渦を巻いて回り出す記憶達。
学園の人たち
ヴィー様、デボラ。
男爵領の人たち。
お母さん・・・!
その瞬間、私の目の前で光が弾けた。
「ステラ」
はっ!!!!
目が覚めた。
ここは、一体どこ?
私を呼ぶのは誰?
「ステラ。私の愛し子よ」
頭の中に響く声。
そうだ。すっかり忘れていた。
なんで思い出さなかったんだろう。
いえ、違う。
そういう約束だった。
ここで知ったことは全て忘れるって。
忘れて新しい生を生きること、それが約束だった。
そうでしたよね?
「神様」
私は声の主に語りかけた。
「ステラ。過酷な運命の子。なぜ戻ってきたのだ?」
声が耳の奥に響く。
「何故でしょう?私にもわかりません。でも、私、お約束のとおり精一杯生きました」
そう、それが約束。
前世で事故死した私は、この世界で生きる力を失った聖女の代わりとして転生した。
私の中にいて、いつしか混ざり合っていったあの小さな女の子。
本来の聖女はあの子のはずだった。
ただ、いまはもうどちらがどちらかわからない。あの子も私も、両方私であの子。そういう存在。
転生の条件は、「精一杯生きること」
それだけ、だけど、それはそれなりに大変な条件だった。
「どうする?」
神様の声。
「どうするとは?」
「お前は私との約束を守り、精一杯生きた。ただ、不測の事態により、また命を断たれることになった。約束を必死で守ったお前に免じて一度だけ戻してやろう。時間は思いのままだ。それとも、他の世界に転生するか?」
「他の世界に転生する?」
「つまり、これまでの世界でのお前はいなくなる。このまま、死ぬ、ということだな」
「えっ?」
「何故迷う?すでにお前を害した世界だろうに」
「確かに・・・でも、全員じゃなくて!応援してくれた人も支えてくれた人もいたんです」
「ふむ。ではどうする?いつまでも永遠には迷っていられまい」
「突然すぎて、驚いているだけです。どうしたらいいのか」
「ここは、生と死の狭間。生ある人間が長くいては戻れなくなってしまう。生ある人間の世界に戻るか、それとも霊体に変化するのか決めねばならぬ。放っておけば、霊体に変化してしまうだろうな。まあ、特に悪行もしておらんし、悪霊にはなるまいが。保証の限りではないがの」
ちょっと待って。前回の私はどう答えた?
覚えてない。
でも、どこでもいいからもっと生きたいって答えたってこと?
わからない。
そうだ。新しい力と体に馴染むまで、痛みがあるって言われたんだ。
あの痛みはそういうことだったんだ。
ということは、もしかしてさっきの痛みは・・・もう始まってるってこと?
次の人生の「新しいカタチ」に慣れるための痛みが始まってるってこと?
もう戻れない?
そんなの、絶対に、イヤ!!
「戻りたい!戻して、戻してください!!私を今いた世界に戻してください!!」
私が叫ぶと、神様がくつくつと笑う声が聞こえた。
そして、次の瞬間、私は宙に放り出された。
0
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
転生令嬢、死す。
ぽんぽこ狸
恋愛
転生令嬢、死す。
聖女ファニーは暇していた。それはもう、耐えられないほど退屈であり、このままでは気が狂ってしまいそうだなんて思うほどだった。
前世から、びっくり人間と陰で呼ばれていたような、サプライズとドッキリが大好きなファニーだったが、ここ最近の退屈さと言ったら、もう堪らない。
とくに、婚約が決まってからというもの、退屈が極まっていた。
そんなファニーは、ある思い付きをして、今度、行われる身内だけの婚約パーティーでとあるドッキリを決行しようと考える。
それは、死亡ドッキリ。皆があっと驚いて、きゃあっと悲鳴を上げる様なスリルあるものにするぞ!そう、気合いを入れてファニーは、仮死魔法の開発に取り組むのだった。
五万文字ほどの短編です。さっくり書いております。個人的にミステリーといいますか、読者様にとって意外な展開で驚いてもらえるように書いたつもりです。
文章が肌に合った方は、よろしければ長編もありますのでぞいてみてくれると飛び跳ねて喜びます。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる