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4 決戦
208 国一番の貴族からの糾弾
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フォーク公爵ロイク・アドランテ。国一番の大貴族。
アドランテ家宗家の当主にて筆頭評議員を務めている方。
青い瞳と黒い巻き毛のルシアナ様と面差しが似ている。
でも、その顔に現れた表情はルシアナ様とは違う。
厳格そうに口元を引き締め、不正は一切許さないとでも言いたげな厳しい目つきでホールの中央に立った。
黒地に金糸で細かく刺繍の入ったコートと、金地に銀色の刺繍がびっしりと施されたベストに純白に輝くブラウスを合わせ、間違いなく職人の最高傑作であろう服を見事に着こなしたその姿は、生まれた時から最高の地位に立つことを約束されたものだけが持つ威厳をまとっていた。
国王陛下と王族の方々そして評議員と神官たち、列席する高位貴族たちに一礼すると、フォーク公は口を開いた。
「私は誰よりもこの国を思い、憂う民の一人でございます。
国王陛下の忠実なる僕として、長年忠義を尽くしてまいりました。
また、一族全てが同様にただ一心に国を思いお仕えしております。
そのような中、我が国に100年ぶりに聖女が顕現すると神官が予言した際には喜びに打ち震えました。
聖女が我が国にいらっしゃれば国は富、民には幸があふれると言われているからです。
いらっしゃるだけでも国が安定すると言われている聖女様の顕現は我ら民にとっての悲願でもあります。
これは、民一人一人の願いでもありました。
しかしながら、よろこびは長くは続きませんでした。
教団が聖女を確認したと聞いてからすでに何年も経っているのにも関わらず、いまだに聖女は立っておられない。
聖女としての認定を受けることをご本人が拒否しているとか。
聖女は時代に一人しか現れない。それを知りながら責任を果たすことを拒んでいると。
なんたる聖女としての自覚がないことかと驚きつつ、悲しんでおりました。
にも関わらず、教団により聖女であるとされたここにおいでのステラ・ディライト嬢は、学園では堂々と王太子殿下の婚約者としての扱いを要求し、当家の公女をまるで召使いのように使ったと聞いております。
ステラ嬢の身分が男爵家の令嬢・・・とはいえ、夫人の子ではなく、私生児・・・であることからしても、公女への態度が社会の秩序と照らし合わせて適正なものだったのかは皆様のご意見をいただきたいところでございます。
また、当然のごとく王太子殿下と続き部屋をお使いになっているとか。
聖女として王太子殿下の婚約者として扱うことは要求するのに、聖女としての義務を果たそうとしない。
果たしてそのような心卑しき者は聖女としてありうるのでしょうか。
しかも、正式な婚約前であるのに、堂々と王太子殿下の婚約者として隣室に住んでいると。
まともな神経の持ち主なら、女子寮に住むでしょう。
さらに、王太子殿下はステラ嬢の前では人が変わったような振る舞いをするとも聞き及びました。
何かがおかしい。そう思い始めました。
思い至ると、不審な点は沢山ありました。
我が領では、聖女が顕現したとされてから、井戸は枯れて石になり、雨が降れば洪水になり畑を流し、夏には雹が降り、害虫が大発生する年が続きました。
聖女が顕れれば国は栄える、と言われているにも関わらずです。
さらに、ステラ嬢の実家のディライト領の特産として有名な絹織物は、聖女とゆかりがあることをかさにきて、価格の吊り上げを行なっているとの訴えも私に届いております。
また、幼い子供を集めて不審な動きをしているとの訴えすらあります。
学園でも王太子殿下のみならず、男子生徒と妙に距離が近いと疑われる事例があり、噂になられた頃にはステラ嬢に起因したと見られる婚約破棄が複数あったそうです。
男子生徒は皆口を閉ざし、一様にステラ嬢の関与を否定しておりますが、ステラ嬢の名を出しただけで全員赤面して口ごもるなどの反応が見られたようです。おそらく口には出せない何かがあったのでしょう。
王太子殿下に対しても何らかの影響を及ぼしているようです。
私は幼少のみぎりより王太子殿下を存じ上げておりますが、殿下は感情をあらわにされるような未熟な方ではありませんでした。常に冷静で公正な判断に努めておられた方です。
しかし、突然人が変わったのです。
どうやら聖女を名乗るステラ嬢に会った直後から、人が変わったようになったと多数の証言があります。
それまでの殿下は、我が公女とは幼い頃より良き関係を築き、二人の婚約も間近だと周囲のものは考えておりました。それなのに、ある日突然、婚約者候補を解消されました。正常な判断ができていたとは思えません。
さらに、聖女とともにあった王太子は「笑った」と、見た者がいたのです。
赤くなったり青くなったりしたとの証言もあり、とても正常な精神状態とは思えません。
もしや・・・との疑念は日に日に募ってまいりました。
アドランテ家宗家の当主にて筆頭評議員を務めている方。
青い瞳と黒い巻き毛のルシアナ様と面差しが似ている。
でも、その顔に現れた表情はルシアナ様とは違う。
厳格そうに口元を引き締め、不正は一切許さないとでも言いたげな厳しい目つきでホールの中央に立った。
黒地に金糸で細かく刺繍の入ったコートと、金地に銀色の刺繍がびっしりと施されたベストに純白に輝くブラウスを合わせ、間違いなく職人の最高傑作であろう服を見事に着こなしたその姿は、生まれた時から最高の地位に立つことを約束されたものだけが持つ威厳をまとっていた。
国王陛下と王族の方々そして評議員と神官たち、列席する高位貴族たちに一礼すると、フォーク公は口を開いた。
「私は誰よりもこの国を思い、憂う民の一人でございます。
国王陛下の忠実なる僕として、長年忠義を尽くしてまいりました。
また、一族全てが同様にただ一心に国を思いお仕えしております。
そのような中、我が国に100年ぶりに聖女が顕現すると神官が予言した際には喜びに打ち震えました。
聖女が我が国にいらっしゃれば国は富、民には幸があふれると言われているからです。
いらっしゃるだけでも国が安定すると言われている聖女様の顕現は我ら民にとっての悲願でもあります。
これは、民一人一人の願いでもありました。
しかしながら、よろこびは長くは続きませんでした。
教団が聖女を確認したと聞いてからすでに何年も経っているのにも関わらず、いまだに聖女は立っておられない。
聖女としての認定を受けることをご本人が拒否しているとか。
聖女は時代に一人しか現れない。それを知りながら責任を果たすことを拒んでいると。
なんたる聖女としての自覚がないことかと驚きつつ、悲しんでおりました。
にも関わらず、教団により聖女であるとされたここにおいでのステラ・ディライト嬢は、学園では堂々と王太子殿下の婚約者としての扱いを要求し、当家の公女をまるで召使いのように使ったと聞いております。
ステラ嬢の身分が男爵家の令嬢・・・とはいえ、夫人の子ではなく、私生児・・・であることからしても、公女への態度が社会の秩序と照らし合わせて適正なものだったのかは皆様のご意見をいただきたいところでございます。
また、当然のごとく王太子殿下と続き部屋をお使いになっているとか。
聖女として王太子殿下の婚約者として扱うことは要求するのに、聖女としての義務を果たそうとしない。
果たしてそのような心卑しき者は聖女としてありうるのでしょうか。
しかも、正式な婚約前であるのに、堂々と王太子殿下の婚約者として隣室に住んでいると。
まともな神経の持ち主なら、女子寮に住むでしょう。
さらに、王太子殿下はステラ嬢の前では人が変わったような振る舞いをするとも聞き及びました。
何かがおかしい。そう思い始めました。
思い至ると、不審な点は沢山ありました。
我が領では、聖女が顕現したとされてから、井戸は枯れて石になり、雨が降れば洪水になり畑を流し、夏には雹が降り、害虫が大発生する年が続きました。
聖女が顕れれば国は栄える、と言われているにも関わらずです。
さらに、ステラ嬢の実家のディライト領の特産として有名な絹織物は、聖女とゆかりがあることをかさにきて、価格の吊り上げを行なっているとの訴えも私に届いております。
また、幼い子供を集めて不審な動きをしているとの訴えすらあります。
学園でも王太子殿下のみならず、男子生徒と妙に距離が近いと疑われる事例があり、噂になられた頃にはステラ嬢に起因したと見られる婚約破棄が複数あったそうです。
男子生徒は皆口を閉ざし、一様にステラ嬢の関与を否定しておりますが、ステラ嬢の名を出しただけで全員赤面して口ごもるなどの反応が見られたようです。おそらく口には出せない何かがあったのでしょう。
王太子殿下に対しても何らかの影響を及ぼしているようです。
私は幼少のみぎりより王太子殿下を存じ上げておりますが、殿下は感情をあらわにされるような未熟な方ではありませんでした。常に冷静で公正な判断に努めておられた方です。
しかし、突然人が変わったのです。
どうやら聖女を名乗るステラ嬢に会った直後から、人が変わったようになったと多数の証言があります。
それまでの殿下は、我が公女とは幼い頃より良き関係を築き、二人の婚約も間近だと周囲のものは考えておりました。それなのに、ある日突然、婚約者候補を解消されました。正常な判断ができていたとは思えません。
さらに、聖女とともにあった王太子は「笑った」と、見た者がいたのです。
赤くなったり青くなったりしたとの証言もあり、とても正常な精神状態とは思えません。
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