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4 決戦
195 聖女の力
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王都に入る直前に襲撃された私たち。
私は、自分が命を狙われる事態に直面し、恐怖のあまりパニック状態になって動けなくなってしまいました。
絶体絶命のピンチにジョセフのお兄さんが救援にきてくれて、助かったーー!!と思ったけど、私をかばったジョセフが矢に射られてしまった・・・
***************************************************
ゆらぐ、命の灯。
赤々と力強く輝くはずのその灯は、消えかかっている。
腕の中のジョセフからは、命の灯が少しずつ、少しずつ失われている。
(何でそんなことが「わかる」の?何で?何で?でも、ダメ。絶対に、ダメ。死なせない)
「ジョセフ、ジョセフ!!」私は大声で呼びかけた。「お願い目を覚まして、ジョセフ!!戻ってきて!!!」
このままじゃ、ジョセフが死んじゃう!!
「ステラ、落ち着け。ジョセフを手当てしよう」
ケイレブが私の肩に手を起き、なだめようとする。
(だめ、間に合わない。どうして、どうしてこんなことに・・・!!!)
「ジョセフ!ジョセフ!お願い、目を開けてよ!!お願い!」
いくら叫んでもどんどん力が失われていく。命の灯が消えかかっている。
「ジョセフを絶対に死なせない!なんのための聖女なのよ。大事な人を守れなくてなんのための聖女なのよ!」
私は泣き喚いた。涙が噴き出すように流れる。
「ステラ」
ケイレブが静かな声で私の名を呼ぶと、私を押しのけるようにしてジョセフの鎧を外し、傷を確認した。
手当を促された王立騎士団に随行していた医師が静かに首を振る。
「重症者のうち、私が診て助けられる人から連れてきてください」
な・・・なに?
今なんて言ったの?
嘘でしょ?
見捨てられたってこと?
ジョセフが?私の大事な幼馴染が?
金切り声をあげたくなる自分をぐっと抑える。今は泣いてる場合じゃない。
私にできること・・・何かないの?
聖女の力って・・・浄化しかできないの?
浄化しかできないなら、たくさん浄化するから、だから、お願い、ジョセフを助けてください。
私はジョセフの傷口に手を当て、必死で聖力を注ぎ込んだ。
(どうか、ジョセフを助けて。傷ついたジョセフの身体を癒してください。どうか、私に力を与えてください。お願いします。お願いしますーーーーーーー!!!!!)
目の前が金色に染まる。
力が増幅し、強まるのがわかる。
ジョセフをどうか癒して。それだけを願い、祈りを込めて、ジョセフの身体に力を入れていく。
だんだんとジョセフの身体が金色に染まり始めた。
でもまだジョセフの身体に命の灯は戻らない。
(もっと、もっと力を注ぎ込まないと、ジョセフは救えない。)
「どうか、お願い。ジョセフを奪わないで。こんなことで死んでいい人じゃない。お願い、お願いしますーーー!!」
聖力を入れ続けると、ジョセフの周りにだんだんと金と銀の入りまじった光の輪ができはじめた。
銀の光はジョセフの身体を包み込み、傷ついた組織を少しずつ修復し始めた。
(もしかして、銀の光は癒しの力がある?でも、まだ足りない、まだ足りない。私の力だけじゃ無理・・・どうしたら・・・リカルド?!)
「リカルド!お願い、力を貸して。私一人ではできない。ジョセフを助けないと」
リカルドは一瞬の逡巡の後、ジョセフの脇に屈み込んだ。
「ひとつだけ約束してください。私が止めたら、聖力を注ぎ込むのはおやめください」
「なんでも聞くから協力して」
私は泣きながらリカルドに頼んだ。リカルドは小さく頷くと、ジョセフの周りや傷口の近くに水晶を置いた。そして少し考えると、さらにもう少し水晶を追加した。
リカルドの詠唱が始まり、聖なる力が増幅する。
同じ力が水晶を通して増幅し、どんどん大きくなっていく。
金と銀の光の輪が大きく小さく形を変えながら広がっていく。
いつの間にかあたりは夕闇に包まれ薄暗くなっていた。
「おい、俺たちは奇跡を見てるのか?」
ケイレブが騎士に囁いた。
ジョセフの傷は塞がるはずがないほど、深いものだった。
矢傷だけではなく、戦闘中に複数傷つけられ、相当深い傷があちこちにあった。
よく立っていられた、というほどの傷をすでに負っていたのだ。
万が一生き延びられたとしても、あの左目はもう光を失うだろう。
傷を見慣れたケイレブには一目でわかったし、医師も一瞬で匙を投げた。
そう長くはない、との見立てだったはずだ。
それなのに、今、ジョセフの傷は塞がりつつある。
しかも、多くの血を吸い穢れたはずのこの地は聖女がジョセフを助けようと放つ光を受け、浄化され始めた。
それどころか、光を見守る騎士や兵士たちの心すら浄化され、癒され、戦闘で昂ったはずの心が不思議なほど心が穏やかになってきた。戦闘で負った細かい傷が治っていく。大きな傷の痛みすら和らげる聖女の奇跡に、膝を折り、頭を垂れた。
王立騎士団の騎士たちも、呆然と聖女の起こす奇跡を見守っていた。
ただただ目の前の光り輝く奇跡の瞬間を見守ることしかできない。
誰も余計な口を聞かず、傷ついた隊長の弟が回復するかもしれないとの期待をかけていた。
時々兄のところに顔を出していたこの少年のことを、皆弟のように可愛がっていたのだ。
傷ついた者もそうでない者も、皆がジョセフの回復を祈った。
リカルドが皆の祈りを詠唱に乗せ、聖女の力に変えていく。
祈りは夜を徹して続き、朝まで続けられた。野の獣すら、この尊い光景に畏れをなし、静かに見守っていたという。
私は、自分が命を狙われる事態に直面し、恐怖のあまりパニック状態になって動けなくなってしまいました。
絶体絶命のピンチにジョセフのお兄さんが救援にきてくれて、助かったーー!!と思ったけど、私をかばったジョセフが矢に射られてしまった・・・
***************************************************
ゆらぐ、命の灯。
赤々と力強く輝くはずのその灯は、消えかかっている。
腕の中のジョセフからは、命の灯が少しずつ、少しずつ失われている。
(何でそんなことが「わかる」の?何で?何で?でも、ダメ。絶対に、ダメ。死なせない)
「ジョセフ、ジョセフ!!」私は大声で呼びかけた。「お願い目を覚まして、ジョセフ!!戻ってきて!!!」
このままじゃ、ジョセフが死んじゃう!!
「ステラ、落ち着け。ジョセフを手当てしよう」
ケイレブが私の肩に手を起き、なだめようとする。
(だめ、間に合わない。どうして、どうしてこんなことに・・・!!!)
「ジョセフ!ジョセフ!お願い、目を開けてよ!!お願い!」
いくら叫んでもどんどん力が失われていく。命の灯が消えかかっている。
「ジョセフを絶対に死なせない!なんのための聖女なのよ。大事な人を守れなくてなんのための聖女なのよ!」
私は泣き喚いた。涙が噴き出すように流れる。
「ステラ」
ケイレブが静かな声で私の名を呼ぶと、私を押しのけるようにしてジョセフの鎧を外し、傷を確認した。
手当を促された王立騎士団に随行していた医師が静かに首を振る。
「重症者のうち、私が診て助けられる人から連れてきてください」
な・・・なに?
今なんて言ったの?
嘘でしょ?
見捨てられたってこと?
ジョセフが?私の大事な幼馴染が?
金切り声をあげたくなる自分をぐっと抑える。今は泣いてる場合じゃない。
私にできること・・・何かないの?
聖女の力って・・・浄化しかできないの?
浄化しかできないなら、たくさん浄化するから、だから、お願い、ジョセフを助けてください。
私はジョセフの傷口に手を当て、必死で聖力を注ぎ込んだ。
(どうか、ジョセフを助けて。傷ついたジョセフの身体を癒してください。どうか、私に力を与えてください。お願いします。お願いしますーーーーーーー!!!!!)
目の前が金色に染まる。
力が増幅し、強まるのがわかる。
ジョセフをどうか癒して。それだけを願い、祈りを込めて、ジョセフの身体に力を入れていく。
だんだんとジョセフの身体が金色に染まり始めた。
でもまだジョセフの身体に命の灯は戻らない。
(もっと、もっと力を注ぎ込まないと、ジョセフは救えない。)
「どうか、お願い。ジョセフを奪わないで。こんなことで死んでいい人じゃない。お願い、お願いしますーーー!!」
聖力を入れ続けると、ジョセフの周りにだんだんと金と銀の入りまじった光の輪ができはじめた。
銀の光はジョセフの身体を包み込み、傷ついた組織を少しずつ修復し始めた。
(もしかして、銀の光は癒しの力がある?でも、まだ足りない、まだ足りない。私の力だけじゃ無理・・・どうしたら・・・リカルド?!)
「リカルド!お願い、力を貸して。私一人ではできない。ジョセフを助けないと」
リカルドは一瞬の逡巡の後、ジョセフの脇に屈み込んだ。
「ひとつだけ約束してください。私が止めたら、聖力を注ぎ込むのはおやめください」
「なんでも聞くから協力して」
私は泣きながらリカルドに頼んだ。リカルドは小さく頷くと、ジョセフの周りや傷口の近くに水晶を置いた。そして少し考えると、さらにもう少し水晶を追加した。
リカルドの詠唱が始まり、聖なる力が増幅する。
同じ力が水晶を通して増幅し、どんどん大きくなっていく。
金と銀の光の輪が大きく小さく形を変えながら広がっていく。
いつの間にかあたりは夕闇に包まれ薄暗くなっていた。
「おい、俺たちは奇跡を見てるのか?」
ケイレブが騎士に囁いた。
ジョセフの傷は塞がるはずがないほど、深いものだった。
矢傷だけではなく、戦闘中に複数傷つけられ、相当深い傷があちこちにあった。
よく立っていられた、というほどの傷をすでに負っていたのだ。
万が一生き延びられたとしても、あの左目はもう光を失うだろう。
傷を見慣れたケイレブには一目でわかったし、医師も一瞬で匙を投げた。
そう長くはない、との見立てだったはずだ。
それなのに、今、ジョセフの傷は塞がりつつある。
しかも、多くの血を吸い穢れたはずのこの地は聖女がジョセフを助けようと放つ光を受け、浄化され始めた。
それどころか、光を見守る騎士や兵士たちの心すら浄化され、癒され、戦闘で昂ったはずの心が不思議なほど心が穏やかになってきた。戦闘で負った細かい傷が治っていく。大きな傷の痛みすら和らげる聖女の奇跡に、膝を折り、頭を垂れた。
王立騎士団の騎士たちも、呆然と聖女の起こす奇跡を見守っていた。
ただただ目の前の光り輝く奇跡の瞬間を見守ることしかできない。
誰も余計な口を聞かず、傷ついた隊長の弟が回復するかもしれないとの期待をかけていた。
時々兄のところに顔を出していたこの少年のことを、皆弟のように可愛がっていたのだ。
傷ついた者もそうでない者も、皆がジョセフの回復を祈った。
リカルドが皆の祈りを詠唱に乗せ、聖女の力に変えていく。
祈りは夜を徹して続き、朝まで続けられた。野の獣すら、この尊い光景に畏れをなし、静かに見守っていたという。
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