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4 決戦

187 迫り来る危険

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全速力で走りぬいた結果、このあいだ2時間ぐらいかかった距離を半分ぐらいの時間で宿までたどり着いた。
ケイレブの操る馬とはーちゃんの速さはダントツで、他の騎士さんたちは随分おくれているみたい。
「エバン!」
宿の庭に入ると同時にケイレブが怒鳴ると、慌てた様子のエバンが飛び出してきた。
「若殿、お待ちしておりました」
やっぱり跡取り様には態度が違うんだなあ。
「ご指示の通り、部屋は準備してあります。それに・・・」
「わかった」
ケイレブがエバンの言葉を遮った。
「聖女様、お疲れ様でした。取り急ぎ安全のため、宿にお入りください」
私はケイレブの迫力に押されて、慌ててはーちゃんから降りると、ドアに向かった。

宿のドアを後ろ手に閉めたケイレブが言う。
「聖女様、王都まではなるべく外に出ないようにしてください。俺のカンですけど、どうもきな臭いです」
「わかりました」
私を守ろうとしていってくれていることはわかる。
ここは言いつけに従わないと。

「ちょっとしたプレゼントがあるんですよ。お部屋で休みください。あとでみんなが揃ったらお呼びしますから」
「はい、ありがとうございます」

私はおとなしく部屋に向かうことにした。
この間来たときは、リーラが一緒だったからなあ。
帰り道は私一人しか女子がいない。
話し相手もジョセフぐらいしかいないし。
リーラがいた時には、夜もおしゃべりしてたのにな。
リーラとともに過ごした夜を思い出して、寂しくなってしまえう。
一緒に泊まった部屋のドアを開けると・・・

「スー!待ちくたびれたわ!」
笑顔のリーラが待っていた。

もしかして、ちょっとしたプレゼントって・・・リーラ?
嬉しい!!
「リーラ!来てくれたの!?」
「だって私が殿下から、スーを預かったんだから当然でしょって言い張ったの!それに、スーだって女の子がいた方がいいでしょ」
「うん!ありがとう!実は心細かった!」
流石に1週間男の人ばっかりの中で心細かった。すごく嬉しいプレゼント!!
私たちは久しぶりに会って嬉しくて、夢中になっておしゃべりしていると、階下に来るように声をかけられた。

階段を降りると、そこには騎士たちが全員集まりひそひそ声で話し合っていた。
なんとさっき別れたはずのビルまで戻ってきている。
「聖女様、おかけください」
ケイレブに促されて椅子に座ると、騎士からの報告が始まった。

「ビルがあの男から聞き出してきた話によると、王都で割りのいい話があるって言われて飛びついたらしいんです。聖女の悪い噂を流すだけで、1箇所50ゴールド。結構大勢の男たちが雇われたらしいんです。雇用主は不明。仮面で顔を隠していたし、喋ったのは同行者の男らしいです。ただ、二人とも、金がありそうな身分の高そうな男だったと。」
「まあ、おそらくアドランテ家の連中だろうな」ケイレブが腕組みをした。
「まさかそこまでするなんて」正直、信じたくない。
「やりますよ。当然です。情報操作は戦の基本ですから」
当たり前だといってのけるケイレブにちょっと引く。
情報操作って・・・そんな汚い手を使うの?
ケイレブは言い過ぎたと思ったのか、少し後ろめたそうな表情になった。
もしかして・・・さっき、あそこにいた人たちに100人に言えって言ったのってそういうこと?
確かに言ったよね。

「お前たち!今日あったことを100人の人間に伝えろ!聖女は血を好まない!しかし、後ろ盾には武のコンラッドが付いている。聖女に無礼をはたらくものには容赦しない、地の果てまで追いかけるから覚悟しろとな!」

・・・そういうことだったのか。
まあ、そういうことも必要なのかもしれないし。

少し話題を変えよう。
「ビルさんよくこんな短い時間にそこまで聞き出せましたね」
私が感心したように言うと、ビルさんは「そりゃー、あんなチンピラに口割らせるのなんて簡単ですよ。」とドヤ顔で答えた。
「辺境仕込みの技でちょいっとひねってやれば、ぽろっと・・・」
「丁寧にお願いしただけだろ?」
ケイレブがギロリとビルさんを睨みつけた。
「は、はい、もちろんです。丁寧にていねーいにお願いしました」
「まあ、流石ですね」
私がにっこり笑うと、男たちはこっそりと目配せしていた。

「それはそうと」ケイレブが話をつなぐ。
「あちこちに聖女様の悪い噂をばら撒かれ、前回ここに来た時には扉に矢を打ち込まれ、馬にも薬を盛られたと報告を受けています。ここからは用心が必要です。とにかく我がコンラッド家の息のかかった宿以外には泊まらないほうがいいでしょう。ただし、移動は今日のように全速力でお願いします。なるべく外にいる時間を減らして宿で守りを固める時間を長く取ります」
「わかりました」
「聖女様が乗馬が上手くてよかった」
「私と言うよりは、はーちゃん・・・ハヤテが私を乗せるのがうまいんです」
「ははは、まあ、そうも言いますか。謙虚な方だ」
本当のことなんだけどなあ。

「それで、これを」
ケイレブが剣と短剣を差し出した。
「母が若い時に使っていたものです。明日からはこれまでのように安全ではありません。ゆっくりと時間を稼げたのは川を渡る前までです。自衛のためにお持ちください。剣は扱えると聞いてますが」
「はい、学園でも授業を取ってましたし・・・身を守るくらいならできると思います」
そう言って手を伸ばし、剣に指が触れた瞬間。

私は急激なめまいと吐き気におそわれた。
床がすぐ目の前に・・・
「スー!?」
ジョセフが慌てて私の体を抱きとめた。
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