上 下
174 / 247
3 ヒロインへの道

170 リカルドと白亜の館へのお誘い

しおりを挟む
野菜スープとパンだけの簡単な食事のあと、侯爵様とケイレブとリーラとジョセフと私で湖の浄化について話し合いをすることになった。
あ、リカルドもいた。

リカルドは聖女様をお守りするための秘策がたくさんあるとかで、私にひっついて離れない。
かなりうざいけど、ジョセフがおっかない顔でリカルドをにらみつけ、リカルドが気にもせずに私の周りをうろちょろするってのが、定番になりそう。

「なんと、魔の森から魔獣化した獣が減ったのは聖女様のお力か!」
侯爵様が驚いたように言う。
「ステラが我が領に入ったタイミングで魔獣が減り始めたそうです。おそらくステラの持つ聖女としての浄化力では無いかとリカルド師がおっしゃってます」
リーラが答えると、侯爵様は不思議そうな顔をしてリカルドを見る。
「浄化力とは?」
「聖女様のお持ちになっているお力の一つですよ」
リカルドがめんどくさそうに答えた。
「リカルド先生。私にも教えてくださいませんか?」
仕方ない。ここは私が聞きましょう。
きゅるんと表情とつくって、上目遣いに精一杯可愛らしく聞いてみる。だって私だって知りたい。
「ぶおっふぉ!!」なんか妙な音聞こえた。
「浄化力とはですね!」いきなりリカルドが目を輝かせて勢いよく説明を始めた。最初からそうしてよ。
「聖女様のお持ちになっている力の一つです。聖女様によりお力は異なりますが、どの聖女様も存在するだけで、土地を浄化する力をお持ちになっているのです。ステラ様は三代目聖女様と同じく金環の瞳をお持ちでございますから、間違いなく強い浄化の力をお持ちなはずです!ステラ様がこの土地に入った瞬間に魔獣が減り始めたと言うのがその証拠!聖女様のお力に違いありません!!」
「だそうです。父上」
まだまだしゃべりそうなリカルドを横目に、ケイレブが侯爵様に言った。
「うむ、そうらしいな」
侯爵様が笑いを含んだ声で返す。

「して、リカルド神官殿。聖女様に頼りきりでは申し訳ないと思うのだが、我らができることは無いのか?」
「ありませんよ」
また塩対応。
「ただの一般人風情が図々しい」
いや、聞こえてるからね?心の中の声ダダ漏れてるよ?まったくもう!
「え~、ステラ一人で浄化するんですか~心ぼそーい」
ちょっと、頑張ってみた。
リカルドの鼻の下がビョーンとのびて、鼻がぐいーっと高くなった。
「だーいじょーぶですとも!このリカルドにおまかせください!聖女様のお力になれるのは、このリカルドだけ!リカルドだけですよ!!何と言っても私は聖女様に人生を捧げている身、ドーンとお任せください!!そして、そして・・・その暁には・・・」リカルドが私をちらりと見た。
「とーってもきれいな白亜の館をご用意しているのですが・・・是非一度ご訪問いただきたく・・・」
ぞくり。なんか今寒気走ったよね?
「あーーーうーーーん、考えておきます」
とりあえず答えると、
「是非!!前向きに!お考えくださいね!!」
リカルドが目をキラキラさせながら私の手を握ろうと手を伸ばした。
「そこまでだ」
ジョセフが剣の鞘を私たちの間に差し込んだ。ジョセフの瞳がキラリと光る。
リカルドもジョセフ相手では分が悪いみたい。ギロッと睨み付けたけど、そのままこそこそと引き下がった。
「ちっ、番犬風情が」
だから、リカルド心の声聞こえてるよ。

なんか、前にも教団に誘われた気がする。
ヴィダル先生やベリ神官長に教団に来るように言われても単なる招待としか思わないのに、なんでリカルドだけは危ないような気がするんだろう。
教団に行ったら人生終わり、みたいな?
しかもとってもきれいな白亜の館をご用意した、とか言ってた?
それってどういう意味?
・・・なんか怖い。

私の怯えを感じ取ったのか、リーラがケイレブの肘を突いた。

「お、そうだな。それで明日からの湖の浄化の方法を話し合おう」

ケイレブが声を上げると、全員我に返り、明日の浄化に必要なものについて相談を始めた。
明日こそは、なんとか湖を浄化したいもんね!


**************************************************

リカルドと白亜の館については「第57話 神学教授」に出てきます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。 生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。 全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。 ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。 時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。 ゆるふわ設定の短編です。 完結済みなので予約投稿しています。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

処理中です...