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3 ヒロインへの道
123 神官長も一皮むけば。
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「聖女様、お目汚しをいたしまして大変申し訳ありませんでした」
「申し訳ありませんでした。よく言い聞かせますので、おゆるしくださいませ」
ベリ神官長とヴィダル先生が頭を下げた。
「あのような失態、ありえません‥‥‥聖女様に対する無礼な言動、心よりお詫びいたします」
ベリ神官長の眉間に深いシワがより、表情が固まっている。
ピキピキと血管が浮き出て、今にも怒りが爆発しそうだ。
うわ、これガチで怒ってる人?
「聖女様に対して、自分だけを特別扱いしてほしいとねだるとは‥‥‥けしからん。破門いたしましょう」
「ちょちょちょっと待ってください!」
破門なんて、そんな、人の人生を変えちゃいそうなこと!やめてくださいよ!!
「そもそも!私は聖女ではありませんよ?まだ。聖女候補です。こ・う・ほ!!」
「いえいえ、聖女様に特別扱いをねだるなど‥‥‥私だって我慢しているのに!!」
「はい?」
「聖女様はこの教団のアイドルです!!推しに寵愛をねだるなど、言語道断!!」
「はああ?」
一体、何を言い出したの?
べ、ベリ神官長?大丈夫?さ、錯乱ですか?
「そもそも、私がこの教団に入団したきっかけは、幼少のみぎり、教会で三代目聖女様の肖像画を拝見し、一目で魅了されたことがきっかけです。まさか、生きているうちに本物の聖女様とお会いできる可能性などないと半ば諦めておりました。いま、こうして聖女様を前に言葉を交わすなど、なんと、幸せなことか。それなのに、あやつときたら‥‥‥」
ベリ神官長がブルブル震える拳を握りしめた。ちょちょちょっと、血が滲んでませんか!?
「ベリ神官長」ヴィダル先生が、止めにはいった。
「落ち着いてください。聖女様が戸惑っていらっしゃいます」
いや、だから、聖女じゃないから‥‥‥まだ。
「おお、これはご無礼を。おゆるしください聖女様。ついついお慕いする気持ちが溢れ出してしまいました」
いや、だから、聖女じゃないってば。まだ、だけど。
‥‥‥教団の人って‥‥‥やっぱり、神聖聖女教団って、名前からしてもやばいもんね。
一皮剥くとみんなこんななの?品格のあるおじいさんなのに。どっから見ても権威~って感じなのにさあ。
「聖女様‥‥‥いえ、ステラ様を困らせてはなりませんぞ。ステラ様、ご安心ください。まだ、候補ですからね」
ヴィダル先生が私を安心させようとしたのか、にっこりと笑って見せた。
「ヴィダル!お前はそうやって一人だけ聖女様に近づこうとしているのか!!」
ベリ神官が叫んだ。我慢ならないというように立ち上がり、ヴィダル先生を睨みつける。
「私だって、聖女様に近づきたい!!ずるいぞ、ヴィダル!!」
駄々をこねるようにベリ神官が体を揺すった。
その姿を見た神官たちに動揺が広がっていく。
「あの、ベリ様が‥‥‥声を荒げられるところなど、初めてみた」
「駄々っ子?」
「リカルド様にも、何度も講義を受けているが‥‥‥あんな方だったのか?」
「私も聖女様になら、踏まれてみたい」
「ヴィダル様は、聖女様を独り占めしようと‥‥‥?」
「そもそも王太子は、聖女様の尊さをお分かりなのか?」
「俗人のくせに、汚らわしい」
さざ波のように広がっていく、信者たちの声と戸惑い。
‥‥‥不安しかない。この人たち、大丈夫?
ゲームの世界ってこんななの?
いや、まさか表にはこんな話は出ないから、裏ストーリーってやつ?
見知らぬおじさんたちに超溺愛されるとか、それって、マニアックすぎてついていけない。
このまま、神殿の奥深くに拉致られて、一生お祈りさせられそう。
しかも、信者に監視されて。
やばい。
私は、あれだけやる気に満ちていたのに、腰が引け始める自分を感じていた。
でも、でも、みんなのために頑張るって決めたじゃん。
とう様やセオもいるし!
‥‥‥でも、二人ともいざとなったらこの聖女狂たちに押し負けそう。
セオなんて、帰れなくなっても「じゃ、がんばって」とかあっさり言いそうだし!
ううう。
あ、でもハル様。
きっと、万一教団の奥に押し込められてもハル様がいれば、戻れる気がする。
絶対に迎えにきてくれるに違いない。
そうだ、きっと。だって私たち、婚約するんだもん。
私はハル様にもらった指輪が入っている胸にかけた小さな袋をぎゅっと握りしめ、私を優しく見つめるスカイブルーの瞳を思い出す。
不安でドキドキしていた心が落ち着いてくると、そっと胸元に手を置いた。
(ここに、いる。)
ふうっと息を吐く。
うん、大丈夫そう。
私はもう一度背筋を伸ばして顔を上げた。
頑張ろう。
「ベリ様、リカルド先生を破門してはいけませんよ?」
にっこり。
きゅう。ベリ神官長がどこかから妙な音を立てて座り込んだ。
ふふふ、アイドルだっていうなら、アイドルをやって見せようじゃないの。
私はそういえば、自分がヒロインな美少女だったことを思い出した。
このルックスならいけるのかな?ちょろいかな?
よくわかんないけど、やってみましょう!
「申し訳ありませんでした。よく言い聞かせますので、おゆるしくださいませ」
ベリ神官長とヴィダル先生が頭を下げた。
「あのような失態、ありえません‥‥‥聖女様に対する無礼な言動、心よりお詫びいたします」
ベリ神官長の眉間に深いシワがより、表情が固まっている。
ピキピキと血管が浮き出て、今にも怒りが爆発しそうだ。
うわ、これガチで怒ってる人?
「聖女様に対して、自分だけを特別扱いしてほしいとねだるとは‥‥‥けしからん。破門いたしましょう」
「ちょちょちょっと待ってください!」
破門なんて、そんな、人の人生を変えちゃいそうなこと!やめてくださいよ!!
「そもそも!私は聖女ではありませんよ?まだ。聖女候補です。こ・う・ほ!!」
「いえいえ、聖女様に特別扱いをねだるなど‥‥‥私だって我慢しているのに!!」
「はい?」
「聖女様はこの教団のアイドルです!!推しに寵愛をねだるなど、言語道断!!」
「はああ?」
一体、何を言い出したの?
べ、ベリ神官長?大丈夫?さ、錯乱ですか?
「そもそも、私がこの教団に入団したきっかけは、幼少のみぎり、教会で三代目聖女様の肖像画を拝見し、一目で魅了されたことがきっかけです。まさか、生きているうちに本物の聖女様とお会いできる可能性などないと半ば諦めておりました。いま、こうして聖女様を前に言葉を交わすなど、なんと、幸せなことか。それなのに、あやつときたら‥‥‥」
ベリ神官長がブルブル震える拳を握りしめた。ちょちょちょっと、血が滲んでませんか!?
「ベリ神官長」ヴィダル先生が、止めにはいった。
「落ち着いてください。聖女様が戸惑っていらっしゃいます」
いや、だから、聖女じゃないから‥‥‥まだ。
「おお、これはご無礼を。おゆるしください聖女様。ついついお慕いする気持ちが溢れ出してしまいました」
いや、だから、聖女じゃないってば。まだ、だけど。
‥‥‥教団の人って‥‥‥やっぱり、神聖聖女教団って、名前からしてもやばいもんね。
一皮剥くとみんなこんななの?品格のあるおじいさんなのに。どっから見ても権威~って感じなのにさあ。
「聖女様‥‥‥いえ、ステラ様を困らせてはなりませんぞ。ステラ様、ご安心ください。まだ、候補ですからね」
ヴィダル先生が私を安心させようとしたのか、にっこりと笑って見せた。
「ヴィダル!お前はそうやって一人だけ聖女様に近づこうとしているのか!!」
ベリ神官が叫んだ。我慢ならないというように立ち上がり、ヴィダル先生を睨みつける。
「私だって、聖女様に近づきたい!!ずるいぞ、ヴィダル!!」
駄々をこねるようにベリ神官が体を揺すった。
その姿を見た神官たちに動揺が広がっていく。
「あの、ベリ様が‥‥‥声を荒げられるところなど、初めてみた」
「駄々っ子?」
「リカルド様にも、何度も講義を受けているが‥‥‥あんな方だったのか?」
「私も聖女様になら、踏まれてみたい」
「ヴィダル様は、聖女様を独り占めしようと‥‥‥?」
「そもそも王太子は、聖女様の尊さをお分かりなのか?」
「俗人のくせに、汚らわしい」
さざ波のように広がっていく、信者たちの声と戸惑い。
‥‥‥不安しかない。この人たち、大丈夫?
ゲームの世界ってこんななの?
いや、まさか表にはこんな話は出ないから、裏ストーリーってやつ?
見知らぬおじさんたちに超溺愛されるとか、それって、マニアックすぎてついていけない。
このまま、神殿の奥深くに拉致られて、一生お祈りさせられそう。
しかも、信者に監視されて。
やばい。
私は、あれだけやる気に満ちていたのに、腰が引け始める自分を感じていた。
でも、でも、みんなのために頑張るって決めたじゃん。
とう様やセオもいるし!
‥‥‥でも、二人ともいざとなったらこの聖女狂たちに押し負けそう。
セオなんて、帰れなくなっても「じゃ、がんばって」とかあっさり言いそうだし!
ううう。
あ、でもハル様。
きっと、万一教団の奥に押し込められてもハル様がいれば、戻れる気がする。
絶対に迎えにきてくれるに違いない。
そうだ、きっと。だって私たち、婚約するんだもん。
私はハル様にもらった指輪が入っている胸にかけた小さな袋をぎゅっと握りしめ、私を優しく見つめるスカイブルーの瞳を思い出す。
不安でドキドキしていた心が落ち着いてくると、そっと胸元に手を置いた。
(ここに、いる。)
ふうっと息を吐く。
うん、大丈夫そう。
私はもう一度背筋を伸ばして顔を上げた。
頑張ろう。
「ベリ様、リカルド先生を破門してはいけませんよ?」
にっこり。
きゅう。ベリ神官長がどこかから妙な音を立てて座り込んだ。
ふふふ、アイドルだっていうなら、アイドルをやって見せようじゃないの。
私はそういえば、自分がヒロインな美少女だったことを思い出した。
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よくわかんないけど、やってみましょう!
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