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3 ヒロインへの道
119 歌をひろめたい
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聖堂の中は静まり返り、針が落ちても聞こえそうなほどだ。
自分の指先が震えているのがわかる。
こんなに大勢の大人たちの前で自分の意見を言うなんて、超緊張した。
私はぐっと拳を握り締めると、もうひと押しと話を続けた。
「これまで教団では、信仰のために音楽が使われてきました。それは音楽の持つ力あってのことだと理解しています。人々が教会のそとで音楽を奏で歌を歌うようになっても、信仰には影響がないと信じています。むしろ、神の恩寵として共有するに値するものなのではないでしょうか。
音楽の効能は優れたものです。人を励まし、癒す力があると信じています。毎日教会に行き祈ることができる人ばかりではありません。歌を解放することで神の存在をより身近に感じてもらえるのではないかと期待しています。そこで、教会の外で歌を歌い、音を奏でることを許可していただけないでしょうか」
自分の鼓動が聞こえるほど、しーんとした教会の中で、誰も意見を言わない。
いたたまれない。
でも、私間違ったことは言ってないはず。
だから踏みとどまれるはず。
静けさに困り果ててヴィダル先生を見ると、先生が声をかけてくれた。
「どうですかな、皆さん。聖女様、いえステラ様からのご提案についてご意見を」
白地に金色の刺繍の入っている人がすっと立ち上がり、片手を挙げると、発言した。
間違いなく、教団の中でも地位のある人だとわかる佇まい。
髪も髭も真白だけど、その奥には真面目そうな黒い瞳が光っていた。
「恐れながら‥‥‥反対でございます」
どよめきが走る。
「音楽は神聖なものにございます。軽々に民に与えてはなりません」
優しそうなおじいさんだけど、言うことは厳しい。
「ふむ、ベリ神官長は反対と。他にご意見はございますかな?」
ヴィダル先生が言う。なんの感情も交えずどちら側にも立たない姿勢は司会としては素晴らしいんだろうけど、味方してよ!先生!淡々としすぎ!と叫びたくなる。
「私も反対です」
リカルドが手を上げた。
あんた、聖女オタクのくせになんで味方してくれないのよ!(冷たくしすぎた?)
「音楽は聖女様を崇めるために存在するものです。民に解放など、とんでもない」
相変わらず、ちょっとズレてる。
「私も、反対致します」
今度は、ちょっと意地悪そうな神官が手を上げた。
「前例どおりにしておけばいいのです。変えて失敗したら誰が責任をとるのですか」
「そもそも、風紀が乱れたらどうするのですか」
「そういえばそうですな‥‥‥」
次々に神官が反対意見を言い出した。
場内がだんだんざわめき始めた。
せっかく教会の外でみんなに音楽を楽しんでもらいたい、そのためなら聖女として利用されるのも仕方ないかと決死の覚悟で来たんだけど、独りよがりだったんだろうか。
みんなに反対されて、私はしょんぼりとしてしまった。
頼りのセオドアもここにいないし、もちろんハル様もタチアナ様もいない。
ヴィダル先生は完全中立だし、もうどうしたら‥‥‥
私はじっとりと汗ばんだ両手を握ったり開いたりしてこの場をどうやり過ごしたらいいのか考えた。
でも名案は浮かばない。
「発言をお許しいただけますか」
今度は銀色の刺繍の若い人が手を上げた。
「ブラッド神官か、どうぞ」
「はい。私は、聖女様のご意見に賛同致します」
途端に教会の中はさっき以上にざわついた。
「なんと‥‥‥」
「大胆な」
「神官風情が‥‥‥」
「私は!」ブラッド神官が声を張った。
「聖女様に賛同致します。私は、教団の中で楽団を務めさせていただいております。音楽の力は偉大です。聖女様の御心に添い、民に音楽を解放されると言う卓越したご見解に、心より賛同致します」
嬉しい!賛成してくれる人がいた!
思わず感謝の気持ちでブラッド神官を見ると、目で頷いてくれた。
「どちらにつくべきなのか」
「どちらにも一理あるような」
神官たちは、周りの人たちと相談を始め、教会の中のざわめきはますます大きくなっていく。
「皆様、静粛に。お聞きください」
ヴィダル先生の声が教会に響き渡った。
「皆さんの意見をここでまとめるのは無理と判断し、本日はここまでと致します。次回は2週間後に開催します。聖女様とベリ神官長、ブラッド神官はそれぞれ意見をまとめてくるように」
ヴィダル先生、呼び方‥‥‥
冷静に見えているヴィダル先生も穏やかじゃないのかな。
私はいつもと同じように穏やかに微笑みを浮かべながら会場を見回している先生を見ながら、これからどうしようかと考えた。
自分の指先が震えているのがわかる。
こんなに大勢の大人たちの前で自分の意見を言うなんて、超緊張した。
私はぐっと拳を握り締めると、もうひと押しと話を続けた。
「これまで教団では、信仰のために音楽が使われてきました。それは音楽の持つ力あってのことだと理解しています。人々が教会のそとで音楽を奏で歌を歌うようになっても、信仰には影響がないと信じています。むしろ、神の恩寵として共有するに値するものなのではないでしょうか。
音楽の効能は優れたものです。人を励まし、癒す力があると信じています。毎日教会に行き祈ることができる人ばかりではありません。歌を解放することで神の存在をより身近に感じてもらえるのではないかと期待しています。そこで、教会の外で歌を歌い、音を奏でることを許可していただけないでしょうか」
自分の鼓動が聞こえるほど、しーんとした教会の中で、誰も意見を言わない。
いたたまれない。
でも、私間違ったことは言ってないはず。
だから踏みとどまれるはず。
静けさに困り果ててヴィダル先生を見ると、先生が声をかけてくれた。
「どうですかな、皆さん。聖女様、いえステラ様からのご提案についてご意見を」
白地に金色の刺繍の入っている人がすっと立ち上がり、片手を挙げると、発言した。
間違いなく、教団の中でも地位のある人だとわかる佇まい。
髪も髭も真白だけど、その奥には真面目そうな黒い瞳が光っていた。
「恐れながら‥‥‥反対でございます」
どよめきが走る。
「音楽は神聖なものにございます。軽々に民に与えてはなりません」
優しそうなおじいさんだけど、言うことは厳しい。
「ふむ、ベリ神官長は反対と。他にご意見はございますかな?」
ヴィダル先生が言う。なんの感情も交えずどちら側にも立たない姿勢は司会としては素晴らしいんだろうけど、味方してよ!先生!淡々としすぎ!と叫びたくなる。
「私も反対です」
リカルドが手を上げた。
あんた、聖女オタクのくせになんで味方してくれないのよ!(冷たくしすぎた?)
「音楽は聖女様を崇めるために存在するものです。民に解放など、とんでもない」
相変わらず、ちょっとズレてる。
「私も、反対致します」
今度は、ちょっと意地悪そうな神官が手を上げた。
「前例どおりにしておけばいいのです。変えて失敗したら誰が責任をとるのですか」
「そもそも、風紀が乱れたらどうするのですか」
「そういえばそうですな‥‥‥」
次々に神官が反対意見を言い出した。
場内がだんだんざわめき始めた。
せっかく教会の外でみんなに音楽を楽しんでもらいたい、そのためなら聖女として利用されるのも仕方ないかと決死の覚悟で来たんだけど、独りよがりだったんだろうか。
みんなに反対されて、私はしょんぼりとしてしまった。
頼りのセオドアもここにいないし、もちろんハル様もタチアナ様もいない。
ヴィダル先生は完全中立だし、もうどうしたら‥‥‥
私はじっとりと汗ばんだ両手を握ったり開いたりしてこの場をどうやり過ごしたらいいのか考えた。
でも名案は浮かばない。
「発言をお許しいただけますか」
今度は銀色の刺繍の若い人が手を上げた。
「ブラッド神官か、どうぞ」
「はい。私は、聖女様のご意見に賛同致します」
途端に教会の中はさっき以上にざわついた。
「なんと‥‥‥」
「大胆な」
「神官風情が‥‥‥」
「私は!」ブラッド神官が声を張った。
「聖女様に賛同致します。私は、教団の中で楽団を務めさせていただいております。音楽の力は偉大です。聖女様の御心に添い、民に音楽を解放されると言う卓越したご見解に、心より賛同致します」
嬉しい!賛成してくれる人がいた!
思わず感謝の気持ちでブラッド神官を見ると、目で頷いてくれた。
「どちらにつくべきなのか」
「どちらにも一理あるような」
神官たちは、周りの人たちと相談を始め、教会の中のざわめきはますます大きくなっていく。
「皆様、静粛に。お聞きください」
ヴィダル先生の声が教会に響き渡った。
「皆さんの意見をここでまとめるのは無理と判断し、本日はここまでと致します。次回は2週間後に開催します。聖女様とベリ神官長、ブラッド神官はそれぞれ意見をまとめてくるように」
ヴィダル先生、呼び方‥‥‥
冷静に見えているヴィダル先生も穏やかじゃないのかな。
私はいつもと同じように穏やかに微笑みを浮かべながら会場を見回している先生を見ながら、これからどうしようかと考えた。
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