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番外編17 勇太 問題解決なるか?【最終話】

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「ごめん、あの、その・・・本当にすまん」
壮介の顔は真っ赤に染まっていた。
その声は消え入りそうに小さい。
さっきまでオレに当たっていた壮介の壮介くんはすっかり静まりかえっている。

「あ・・・ああ。」
ついオレの顔も赤くなるのがわかる。
「急すぎてオレも本当は自信なかったし?いいよ」
本当だぞ?
壮介に求められて嬉しくてつい「いいよ」って言っちゃったけど、まだキスもしてないしさ、少し冷静になれば急ぎすぎだよな?
そういえばキスしちゃった・・・
オレは唇に手をそっと添えた。
大人への階段を一段登ちゃった気がする。
へへ。

つい嬉しくなるオレとは対照的に、壮介は本気で落ち込んでいるらしい。
いつもは凛として胸を張っている壮介が、大きな体をこんなに小さく縮めて、恥ずかしがっている。
なんか・・・めちゃめちゃ可愛くない?

こんな壮介初めてだ。
オレにとって、壮介はずっと憧れの存在だった。
ルックスは、こんな男に生まれたかったって姿そのものだし、柔道の才能もある。
合気道の才能がそれほどなかったオレからしたら、どれだけそれが稀有なことか良く分かっている。
それに、日頃から何事にも手を抜かない性格と将来のことをしっかりと見据える力。
全てが羨ましく尊敬している。

そんな壮介が?

「情けない・・・」
壮介は頭を抱えたまま、顔を隠し、ごろりとオレの上から転がった。

なんか、嬉しい。
くすぐったい。
こんな壮介の姿を見たのは世界中でオレだけだ。きっと。
ジロリと睨んだだけで相手を黙らせる壮介。
畳の上で対戦相手を睨みつけている姿からは想像もできない。

うれしい。かわいい。ぎゅっとしたい。
でも怒るかな?
オレは壮介の肩に顔を寄せた。
「ちょっと急ぎすぎたかな?オレも勢いでいいよって言っちゃったけど、本当はやり方わかんないんだ。壮介わかる?」
「いや・・・俺も実はよくわからない。でも、なんだか堪らなかった。どうしようもなくて止まらなくなっちまった。」
壮介の顔はまだ見えない。
「壮介?」オレは壮介の上に身を乗り出すと、壮介の顔を隠している腕を外した。壮介の眉はへにょりと下がり、なんとも情けない。
「オレも。オレもどうしようもなかった。でも今日じゃなかったみたい。きっとまた機会はあるよ」
壮介の目を見て伝えると、壮介は黙ってオレを抱きしめた。
「ん・・・」
「壮介、好きだよ」
「・・・」
まるで離さない、と言うようにぎゅっとオレを抱きしめる。
言葉にしなくても、壮介の気持ちは伝わってくる。
その目が、顔が、全身が伝えてくれる。
オレのことが欲しいって。
オレのことが愛しいって。
「ふふ」
オレはクリームを舐めた猫みたいな気分ってこういう感じなんだなって初めて思いながら、壮介の腕に身を預けた。


「ただ、俺ずっと聞きたかったことがあるんだ」

壮介がポツリと呟いた。

「何?」

それってもしかして、いつも言いたそうにしてたこと?この際、言っちゃって!
オレは促すように壮介を見る。
壮介はしばらく黙っていたが、とうとう心を決めたようだ。
しっかりと、オレを見つめて言った。

「・・・で、俺たちって、どっちが上?」
「は?」

何?どういうこと?

「えっと・・・それって?どういう・・・?」

意味がわからない。ポカンとしていると、壮介の顔がまた真っ赤に染まった。
え?まさか、「そういう」意味?
え?え?え?本気で言ってる?
マジで?

・・・

・・・

・・・

ぷはっ!
オレは思わず噴き出した。

「ははは、まさか、そういうこと?それをずっと悩んでたの?」
「悪いかよ」
「はははは」
「笑うなよ」
「オレが言えば、抱かせてくれるの?」
「・・・まあ、お前が望むなら」
「はははは。いや。ごめん止まらない。くくくくく。」
「どっちなんだよ!」
「あははははは。か、可愛い。可愛すぎるよ。壮介。」

オレは腹を抱えて笑いだした。
おかしくておかしくて笑いがとまらない。
相変わらず壮介はゆでダコのように真っ赤なままだ。

「どっちにしようか?」

ついついからかいたくなる。
壮介、最高。
全国大会出場常連の「鬼の富山」がオレが頼めば抱かせてくれるって!!!
笑いが止まらない。

でも、壮介は真剣そのもの。可愛くて可愛くてたまらない。
こんな奴だったんだ。
こいつ、こんな可愛い奴だったんだ。
やっと壮介が天界からオレのところに降りてきてくれた気分だ。
きっとこれからはオレたちの関係も、もっと変わっていくに違いない。
今日よりも明日はもっと深く知り合える。分かり合えていく。

でも、可愛すぎる。もうちょっとだけ遊んじゃおっかな?

「ま、今日のところは宿題ってところで?」
「勇太!」
「でも、いつかはしようね?ま、もうちょっと先・・・卒業してから?」
「勇太ぁ」
壮介の顔はいつものキリッとした顔とは違いすっかり情けなくなっている。
なんでケモ耳が垂れてるの。
かわいい。可愛すぎる。

あの、全国大会出場の猛者を、俺が?あの巨人を俺が抱くの?
ずっと悩んでたなんて、かわいすぎるよ、壮介!
でもそんなこと考えるなんて、オレのこと尊重してくれるんだね。大切にしてくれてるんだ。
胸の中がじんわりと温かくなった。
今まで悩んでいた自信のないオレはいつの間にかいなくなっていた。
一体どうして、こんなにオレを想ってくれている壮介を、心から信じられなかったんだろう。

それはオレたちの関係が新しく生まれ変わった瞬間。
これからはやっと、オレたちは本当の恋人同士になれるんだ。
本当に、この壮介は、オレの恋人なんだ。
オレもお前のことが超大事。でも、かわいすぎて、からかいたくなる。
嬉しくてクスクス笑いがこぼれ落ちて止まらない。

「け、結論出たか」笑い続けるオレに、壮介は不安そう。
「あーあれ?」くすくす。ダメだ、笑っちゃう。「まあ、先の話だしね。必ずしも上下は関係ないみたいだしな?」
「えっ!」

また壮介の頭の中がぐるぐる回り始めたのが目に見える。
かわいい。ま、今のところはこれくらいにしておこう。

「一緒に、ゆっくりと大人になって行こうね」
オレは壮介のほっぺにチュッとキスをした。

そうしたら壮介なんて言ったと思う?
「おれ、立派な猿になるから」だって!
一体、なんのこと?

あともう一つだけ。
金木犀っていい香りだよな?


おしまい。


***********************************************

ありがとうございました!
番外編では、作品世界を壊さないように、あえてお礼を書き込みませんでした。
毎回毎回、読んでくださっている方に、溢れるほど感謝していました。
最後になりましたが、ここまでたどり着いてくださったあなたに心からのお礼を申し上げます。
また、どこかでお会いできたら嬉しいです。

このあとの二人は、ずっと幸せなはず♡

続きはリクエスト有れば、というところで(^^)

藍音拝
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みんなの感想(3件)

たろじろさぶ

はい!はい!
ぜひ、続きをお願いします🙏
ふたりの初体験を見ないことには、どーにもなりません😄

で、どっちが上⁉️😁
り、リバ⁉️😁

藍音
2024.03.08 藍音

ありがとうございます!リクエストいただけたので、がんばります💪
どっちが上でしょ?
どう思います??

解除
きゅうこ
2022.02.08 きゅうこ

エッセイに出てくる勇太くんが気になり読ませていただきました
2人とも初々しくてかわいい!
この先どう進んでいくのか楽しみにしています

藍音
2022.02.08 藍音

エッセイも読んでいただいているのですね。ありがとう×2の感謝を送ります。
迷走していた私の脳内も収まり、ラストまでの道筋が見えてきました。
もし、楽しんでいただけたら、本当に嬉しいです。

本日掲載するエッセイにもこのお話についての掲載がありますのでぜひご一読ください。

解除
MIHO
2022.02.04 MIHO

二人のぎこちなさがいいですね😃
一気に読んでしまいました。
続きを楽しみに待ってます。( *´艸`)

藍音
2022.02.05 藍音

MIHO様 初コメントありがとうございます。これから後半戦に向けて盛り上げていけるように頑張ります。
ところで、ちょっとエッセイを書き始めました。「第一話 天啓」にMIHO様が登場しています。よければ読んでください(^^)

解除

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