上 下
37 / 54

37 勇太【最終話】

しおりを挟む
壮介のお姉さん・・・一度だけお邪魔した、お見舞いの時に会った、あの綺麗な女性?確かに女子大生ぐらいだったけど。あの、少し年上の長髪の美人?

「後は・・・ばあちゃん?いくらなんでも、なあ?マニアックすぎるよなあ?」

なおも考え込む様子の壮介にオレは、思わず聞いてみる。

「じゃあ・・・さっき言ったこと、本当なの?本気にして受け止めてもいいの?」
「いやだから、本気で言ったって言ったよな?」

途端に涙が溢れてきた。

「オレ、女の子じゃ無いよ?女の子のような柔らかい身体も胸もないけど、本当にそれでもいい?」
「・・・俺は、勇太がいい。勇太だからいい。」
「本当に・・・オレ、キモくない?オレが同じこと言っても、引かない?」
「引くわけないだろ」

その言葉を聞いた途端、思わず、壮介にしがみついてしまった。ワイシャツを掴んだ手のひらには壮介の強い鼓動が伝わってくる。
涙が溢れて止まらない。こんなところで。でも、もう、隠せない。

これ以上、取り繕えない。
もう、無理だ。

嗚咽しながら壮介にしがみつくオレのことを壮介はその大柄な体躯で包み込むように、優しく抱きしめてくれた。

「好き・・・オレも好き・・・ほんとは・・・ずっと・・・」

涙が溢れて止まらない。
感情が溢れ出し、全くコントロールできない。

嬉しい、嬉しい。
世界中が輝きをまた取り戻し、風も光も木の葉の揺らぎも、その全てが俺たちを祝福してくれているように思える。

(お願い、もう一度、言って。もう一度だけでいいから、聞かせてほしい。)

俺が心の中で強く願うと、壮介はオレを強く抱きしめ、泣きじゃくるオレの耳に唇をよせると、小さな声で言ったんだ。

もう一度、小さな声で言ってくれたんだ。

「_______」


でも、それは、その言葉は、オレだけのもの。
だから、壮介がもう一度言ってくれたその言葉は、オレの胸の奥だけにしまっておくんだ。


ただ、その日から、その時から、オレたちの「親友」という関係が、「恋人」という新しい関係に生まれ変わったことだけは、教えてあげる。


 Fin


___________________

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけていたら、嬉しいです。
読者様にも、幸せが降り注ぎますように。

拙作エッセイ「藍音のたわごと」に制作裏話を掲載しています(2022年2月27日19時より公開)
「藍音のたわごと 第56話 もう一度~未読者閲覧禁止 製作裏話です。」
もし興味のある方がいらっしゃいましたら、そちらもお楽しみください。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】終わりとはじまりの間

ビーバー父さん
BL
ノンフィクションとは言えない、フィクションです。 プロローグ的なお話として完結しました。 一生のパートナーと思っていた亮介に、子供がいると分かって別れることになった桂。 別れる理由も奇想天外なことながら、その行動も考えもおかしい亮介に心身ともに疲れるころ、 桂のクライアントである若狭に、亮介がおかしいということを同意してもらえたところから、始まりそうな関係に戸惑う桂。 この先があるのか、それとも……。 こんな思考回路と関係の奴らが実在するんですよ。

ハッピーエンド

藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。 レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。 ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。 それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。 ※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。

水鳴諒
BL
 目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)

友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話

蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。 終始彼の視点で話が進みます。 浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。 ※誰とも関係はほぼ進展しません。 ※pixivにて公開している物と同内容です。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

寡黙な剣道部の幼馴染

Gemini
BL
【完結】恩師の訃報に八年ぶりに帰郷した智(さとし)は幼馴染の有馬(ありま)と再会する。相変わらず寡黙て静かな有馬が智の勤める大学の学生だと知り、だんだんとその距離は縮まっていき……

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...