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37 勇太【最終話】
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壮介のお姉さん・・・一度だけお邪魔した、お見舞いの時に会った、あの綺麗な女性?確かに女子大生ぐらいだったけど。あの、少し年上の長髪の美人?
「後は・・・ばあちゃん?いくらなんでも、なあ?マニアックすぎるよなあ?」
なおも考え込む様子の壮介にオレは、思わず聞いてみる。
「じゃあ・・・さっき言ったこと、本当なの?本気にして受け止めてもいいの?」
「いやだから、本気で言ったって言ったよな?」
途端に涙が溢れてきた。
「オレ、女の子じゃ無いよ?女の子のような柔らかい身体も胸もないけど、本当にそれでもいい?」
「・・・俺は、勇太がいい。勇太だからいい。」
「本当に・・・オレ、キモくない?オレが同じこと言っても、引かない?」
「引くわけないだろ」
その言葉を聞いた途端、思わず、壮介にしがみついてしまった。ワイシャツを掴んだ手のひらには壮介の強い鼓動が伝わってくる。
涙が溢れて止まらない。こんなところで。でも、もう、隠せない。
これ以上、取り繕えない。
もう、無理だ。
嗚咽しながら壮介にしがみつくオレのことを壮介はその大柄な体躯で包み込むように、優しく抱きしめてくれた。
「好き・・・オレも好き・・・ほんとは・・・ずっと・・・」
涙が溢れて止まらない。
感情が溢れ出し、全くコントロールできない。
嬉しい、嬉しい。
世界中が輝きをまた取り戻し、風も光も木の葉の揺らぎも、その全てが俺たちを祝福してくれているように思える。
(お願い、もう一度、言って。もう一度だけでいいから、聞かせてほしい。)
俺が心の中で強く願うと、壮介はオレを強く抱きしめ、泣きじゃくるオレの耳に唇をよせると、小さな声で言ったんだ。
もう一度、小さな声で言ってくれたんだ。
「_______」
でも、それは、その言葉は、オレだけのもの。
だから、壮介がもう一度言ってくれたその言葉は、オレの胸の奥だけにしまっておくんだ。
ただ、その日から、その時から、オレたちの「親友」という関係が、「恋人」という新しい関係に生まれ変わったことだけは、教えてあげる。
Fin
___________________
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけていたら、嬉しいです。
読者様にも、幸せが降り注ぎますように。
拙作エッセイ「藍音のたわごと」に制作裏話を掲載しています(2022年2月27日19時より公開)
「藍音のたわごと 第56話 もう一度~未読者閲覧禁止 製作裏話です。」
もし興味のある方がいらっしゃいましたら、そちらもお楽しみください。
「後は・・・ばあちゃん?いくらなんでも、なあ?マニアックすぎるよなあ?」
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途端に涙が溢れてきた。
「オレ、女の子じゃ無いよ?女の子のような柔らかい身体も胸もないけど、本当にそれでもいい?」
「・・・俺は、勇太がいい。勇太だからいい。」
「本当に・・・オレ、キモくない?オレが同じこと言っても、引かない?」
「引くわけないだろ」
その言葉を聞いた途端、思わず、壮介にしがみついてしまった。ワイシャツを掴んだ手のひらには壮介の強い鼓動が伝わってくる。
涙が溢れて止まらない。こんなところで。でも、もう、隠せない。
これ以上、取り繕えない。
もう、無理だ。
嗚咽しながら壮介にしがみつくオレのことを壮介はその大柄な体躯で包み込むように、優しく抱きしめてくれた。
「好き・・・オレも好き・・・ほんとは・・・ずっと・・・」
涙が溢れて止まらない。
感情が溢れ出し、全くコントロールできない。
嬉しい、嬉しい。
世界中が輝きをまた取り戻し、風も光も木の葉の揺らぎも、その全てが俺たちを祝福してくれているように思える。
(お願い、もう一度、言って。もう一度だけでいいから、聞かせてほしい。)
俺が心の中で強く願うと、壮介はオレを強く抱きしめ、泣きじゃくるオレの耳に唇をよせると、小さな声で言ったんだ。
もう一度、小さな声で言ってくれたんだ。
「_______」
でも、それは、その言葉は、オレだけのもの。
だから、壮介がもう一度言ってくれたその言葉は、オレの胸の奥だけにしまっておくんだ。
ただ、その日から、その時から、オレたちの「親友」という関係が、「恋人」という新しい関係に生まれ変わったことだけは、教えてあげる。
Fin
___________________
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけていたら、嬉しいです。
読者様にも、幸せが降り注ぎますように。
拙作エッセイ「藍音のたわごと」に制作裏話を掲載しています(2022年2月27日19時より公開)
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