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33 勇太
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9月になり、新学期が始まった。
また、元の生活が戻ってきた。
あの日から1週間経ち、だいぶオレの心の揺らぎも治って来た。
(・・・よし!)
気合いを入れて、学校に行く。
もう大丈夫なはずだ。
絶対にバレないはずだ。
まだ、あいつと彼女を祝福までは出来ないが、顔に出さないレベルまでには回復しているはずだ。
多分。
教室に着くと、壮介がオレの席までやってきた。
オレは、今までと同じように元気に挨拶する。
「おはよう」
「うす。体調は、大丈夫か?」
心配してくれていたようだ。
「もう大丈夫。この間は悪かったな」
「気にするな」
壮介はオレの頭に一瞬だけ手を触れたような、触れないような感触を残し自席に戻って行った。
(~~~ヤバい!)
赤面しそうになる顔を慌てて伏せる。気をつけないと。
昼休みは、教室の外で食べないかと壮介に誘われた。
部室棟の近くにあるベンチはひんやりとした空気が漂っていて、この季節でも結構涼しい。
2人でパンと牛乳だけの簡単な食事を摂り、いつものように喋っていると、なんとなく緊張がほぐれてきた。
最初はオレを気遣わしげにみていた壮介も、心なしか安心したように見える。
「体調が良くなったら、また何処かへ行くか?」
壮介が誘ってくれた。微笑んだ笑みが優しくて、心音が跳ね上がる。
嬉しいけど、いいのかな。
赤くなりそうな顔を必死で抑えようとしながら壮介を見ると、少し、嬉しそうだ。
(行ってもいいのかな・・・)
返事をしようとした時、その声がオレたちの間に割り込んできた。
「あれぇ~?壮介ぇ~~?姫ちゃんとこんなところでコソコソ何やってんだよぉ~?」
柔道部の山田くんだった。
山田くんはニヤニヤしながら、近づいてくると、
「なんかさぁ、もう、愛しちゃってんの~~?2人でいる時の壮介、雰囲気全然違うよなぁ~~?」
「・・・」
壮介は特に反論もせず、牛乳パックを握り潰した。
「ふん」
「ちょっとさぁ、噂になってるよぉ?鬼の富山が姫に墜ちたってさぁ。姫にぴったりくっついて、近づく男は片っ端から威嚇してるってさぁ。本当に面白いよねぇ?」
ニヤニヤ笑う山田くんが、全生徒を代弁しているようにすら思える。
噂になっている?壮介が?オレをかばったせいで?
オレのせいで?
オレのせいで、壮介が噂を立てられている?
そんなの絶対にダメだ!
「違う!」
思わずオレは立ち上がり、叫んだ。
「違うから、本当に、そんなんじゃないから。壮介のことそんな風に言わないで。本当に、違うから」
どうしよう。どうしよう。
オレのせいで、壮介が悪く言われてしまう。
オレは動揺し、世界が足元から回りだしたような気がした。
壮介に向き直ると、壮介は唖然とした顔をしていた。
山田くんも、ポカンとした顔をしている。
「ごめん、もしかして、オレのこと変な目で見るやつらのこと、注意してくれてたの?オレが嫌がってたからだよね?ほんと、ごめん。壮介に迷惑かけるようなことして、ごめん。ありがたいけど、もうしないで。
頼むから。頼むから、もうしないで。お前に変な噂が立つようなことしないで。」
壮介も山田くんも驚いたように固まったままだ。
いたたまれない。
オレは、その空間から逃げ出した。
また、元の生活が戻ってきた。
あの日から1週間経ち、だいぶオレの心の揺らぎも治って来た。
(・・・よし!)
気合いを入れて、学校に行く。
もう大丈夫なはずだ。
絶対にバレないはずだ。
まだ、あいつと彼女を祝福までは出来ないが、顔に出さないレベルまでには回復しているはずだ。
多分。
教室に着くと、壮介がオレの席までやってきた。
オレは、今までと同じように元気に挨拶する。
「おはよう」
「うす。体調は、大丈夫か?」
心配してくれていたようだ。
「もう大丈夫。この間は悪かったな」
「気にするな」
壮介はオレの頭に一瞬だけ手を触れたような、触れないような感触を残し自席に戻って行った。
(~~~ヤバい!)
赤面しそうになる顔を慌てて伏せる。気をつけないと。
昼休みは、教室の外で食べないかと壮介に誘われた。
部室棟の近くにあるベンチはひんやりとした空気が漂っていて、この季節でも結構涼しい。
2人でパンと牛乳だけの簡単な食事を摂り、いつものように喋っていると、なんとなく緊張がほぐれてきた。
最初はオレを気遣わしげにみていた壮介も、心なしか安心したように見える。
「体調が良くなったら、また何処かへ行くか?」
壮介が誘ってくれた。微笑んだ笑みが優しくて、心音が跳ね上がる。
嬉しいけど、いいのかな。
赤くなりそうな顔を必死で抑えようとしながら壮介を見ると、少し、嬉しそうだ。
(行ってもいいのかな・・・)
返事をしようとした時、その声がオレたちの間に割り込んできた。
「あれぇ~?壮介ぇ~~?姫ちゃんとこんなところでコソコソ何やってんだよぉ~?」
柔道部の山田くんだった。
山田くんはニヤニヤしながら、近づいてくると、
「なんかさぁ、もう、愛しちゃってんの~~?2人でいる時の壮介、雰囲気全然違うよなぁ~~?」
「・・・」
壮介は特に反論もせず、牛乳パックを握り潰した。
「ふん」
「ちょっとさぁ、噂になってるよぉ?鬼の富山が姫に墜ちたってさぁ。姫にぴったりくっついて、近づく男は片っ端から威嚇してるってさぁ。本当に面白いよねぇ?」
ニヤニヤ笑う山田くんが、全生徒を代弁しているようにすら思える。
噂になっている?壮介が?オレをかばったせいで?
オレのせいで?
オレのせいで、壮介が噂を立てられている?
そんなの絶対にダメだ!
「違う!」
思わずオレは立ち上がり、叫んだ。
「違うから、本当に、そんなんじゃないから。壮介のことそんな風に言わないで。本当に、違うから」
どうしよう。どうしよう。
オレのせいで、壮介が悪く言われてしまう。
オレは動揺し、世界が足元から回りだしたような気がした。
壮介に向き直ると、壮介は唖然とした顔をしていた。
山田くんも、ポカンとした顔をしている。
「ごめん、もしかして、オレのこと変な目で見るやつらのこと、注意してくれてたの?オレが嫌がってたからだよね?ほんと、ごめん。壮介に迷惑かけるようなことして、ごめん。ありがたいけど、もうしないで。
頼むから。頼むから、もうしないで。お前に変な噂が立つようなことしないで。」
壮介も山田くんも驚いたように固まったままだ。
いたたまれない。
オレは、その空間から逃げ出した。
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