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20 勇太
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諦めて、風呂に入ろうかと思ったときに、返信があった。
何も、故障していなかったみたいだ。
ただ、オレが待ちすぎて、まるで永遠のように長く感じていただけなんだ。
安堵とともに喜びが込み上げる。気持ちが浮き立ち、胸がドキドキと大きな音を立てた。耳の奥でもドクドクとうるさいほど大きな音で血が流れている。めまいがするような高揚感。こんな感情味わったことがない。
指が震える。アプリの中ではオレの代わりに小さな猫が飛び跳ねて踊っていた。
簡単なやり取りの後、富山くんっていいやつだなと前よりも好感度が上がった。
本当は初詣に誘ってみたりもしたかったけど、特に大きな接点もないオレがそんなこといきなり言ったらキモいだろうと思うと、とても怖くてできない。
でも、新しい年を迎える浮かれたような空気の中、我慢ができなくなって、やりすぎだと思われないように、あけおめスタンプだけを送ってみた。
富山くんからもスタンプの返信をもらえた。
何だか、うきうきと心が沸き立って、正月中、幸せな気分が続いた。
年も変わったし、少し風向きも変わるかもしれない。
オレは人生初めて、賽銭箱に札を入れて、少しでも富山くんと接点ができますように、恋人なんて無理なことは言いません、何とか友達になれますように、と心から願った。
毎日、富山くんのことを考えている時間が増えていく。
どんどん、どんどん、オレの心が富山くんに侵食されていくように。
きっとオレを真っ二つに切ったら、オレの恋心しか取り出せないに違いない。
そのうち、全身が富山くんへの想いだけになってしまうのではと思うと、少し嬉しいような怖いような気持ちがした。
男に気持ちを寄せられるなんて、迷惑でキモいことだって、誰よりも知っている。
せめて、嫌われたくない。
オレは絶対にこの思いを悟られてはならないと心に決めたんだ。
それからも、富山くんとの接点は特になく。
ただ、週に2回の体育の授業だけが、オレと富山くんをつなぐ細い糸だった。
その細い糸さえも、学年が上がれば途切れてしまう。
進級するとクラス替えがある、という当たり前の行事すら、やりきれなく感じる。
何とか、繋がりを保てないかと考えたが、キモいと引かれてしまうことが何よりも怖く、新しくアクションを起こすことはできない。
せめて、忘れられないように、体育の時間には挨拶することだけが、精一杯だった。
そう、それが、オレの精一杯だったんだ。
時は移り、4月になると、2年に進級し、新しいクラス割が発表される。
クラス替えが近づいてきた頃の俺は、クラス数からも、もう体育の時間すら一緒に過ごすことができない可能性が高いとわかっていたので、実はかなり落ち込んでいた。
どこにいるのかわからない神様に頼んでみるぐらいしかできる事はない。
とりあえず、再度、近所の神社に、札で賽銭を入れておいた。
始業式の前の日は眠れなかった。
なんども寝返りを繰り返す。
不安しかない。
寝不足のため、あまり良い目覚めではなかったが、当然のように朝は来て、学校に向かう。
でも、奇跡もあるかもしれない。
でも、ないかもしれない。
心は戸惑い、揺れる。こんな気持ちは、生まれて初めてだった。
せめて、昨年と同じく体育の授業だけでも同じクラスになれますように、
オレと富山くんをつなぐ、細い細い糸が途切れませんように、
とそれだけを願いながら掲示板を見た。
えっ?
同じクラス?
____________________________________________________
お読みいただきまして、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけたら、嬉しいです。
【お知らせ】
Twitter開設しました。よろしければフォローお願いします。
→ @aine220127
何も、故障していなかったみたいだ。
ただ、オレが待ちすぎて、まるで永遠のように長く感じていただけなんだ。
安堵とともに喜びが込み上げる。気持ちが浮き立ち、胸がドキドキと大きな音を立てた。耳の奥でもドクドクとうるさいほど大きな音で血が流れている。めまいがするような高揚感。こんな感情味わったことがない。
指が震える。アプリの中ではオレの代わりに小さな猫が飛び跳ねて踊っていた。
簡単なやり取りの後、富山くんっていいやつだなと前よりも好感度が上がった。
本当は初詣に誘ってみたりもしたかったけど、特に大きな接点もないオレがそんなこといきなり言ったらキモいだろうと思うと、とても怖くてできない。
でも、新しい年を迎える浮かれたような空気の中、我慢ができなくなって、やりすぎだと思われないように、あけおめスタンプだけを送ってみた。
富山くんからもスタンプの返信をもらえた。
何だか、うきうきと心が沸き立って、正月中、幸せな気分が続いた。
年も変わったし、少し風向きも変わるかもしれない。
オレは人生初めて、賽銭箱に札を入れて、少しでも富山くんと接点ができますように、恋人なんて無理なことは言いません、何とか友達になれますように、と心から願った。
毎日、富山くんのことを考えている時間が増えていく。
どんどん、どんどん、オレの心が富山くんに侵食されていくように。
きっとオレを真っ二つに切ったら、オレの恋心しか取り出せないに違いない。
そのうち、全身が富山くんへの想いだけになってしまうのではと思うと、少し嬉しいような怖いような気持ちがした。
男に気持ちを寄せられるなんて、迷惑でキモいことだって、誰よりも知っている。
せめて、嫌われたくない。
オレは絶対にこの思いを悟られてはならないと心に決めたんだ。
それからも、富山くんとの接点は特になく。
ただ、週に2回の体育の授業だけが、オレと富山くんをつなぐ細い糸だった。
その細い糸さえも、学年が上がれば途切れてしまう。
進級するとクラス替えがある、という当たり前の行事すら、やりきれなく感じる。
何とか、繋がりを保てないかと考えたが、キモいと引かれてしまうことが何よりも怖く、新しくアクションを起こすことはできない。
せめて、忘れられないように、体育の時間には挨拶することだけが、精一杯だった。
そう、それが、オレの精一杯だったんだ。
時は移り、4月になると、2年に進級し、新しいクラス割が発表される。
クラス替えが近づいてきた頃の俺は、クラス数からも、もう体育の時間すら一緒に過ごすことができない可能性が高いとわかっていたので、実はかなり落ち込んでいた。
どこにいるのかわからない神様に頼んでみるぐらいしかできる事はない。
とりあえず、再度、近所の神社に、札で賽銭を入れておいた。
始業式の前の日は眠れなかった。
なんども寝返りを繰り返す。
不安しかない。
寝不足のため、あまり良い目覚めではなかったが、当然のように朝は来て、学校に向かう。
でも、奇跡もあるかもしれない。
でも、ないかもしれない。
心は戸惑い、揺れる。こんな気持ちは、生まれて初めてだった。
せめて、昨年と同じく体育の授業だけでも同じクラスになれますように、
オレと富山くんをつなぐ、細い細い糸が途切れませんように、
とそれだけを願いながら掲示板を見た。
えっ?
同じクラス?
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