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3 壮介

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「姫」こと白石勇太は良くも悪しくも目立つ奴だった。

成績は真ん中くらい?まあ、フツー。
でもめっちゃ身体能力が高い。
どんな競技でも軽々とこなしていく。
走ってよし、打ってよし、投げてよし。

たまたま、オレのクラスと体育が合同授業だったが、気がついた時には目で追うようになっていた。

サッカーでもバスケでもなんでも器用にこなす。
大きな目を輝かせながらボールを追い、ゴールを決めると大口で笑って喜ぶ。
肩を叩いて喜び合う友人が俺ならいいのに。
 
いつも目で追っているせいか、時折勇太と目が合うことがあった。

俺の中の何かは、その度にカチッと大きな音を立てる。

俺のことを知ってくれないかな。
体育の時間にいるモブ扱いじゃなくって、俺が俺だってことを認識してくれないかな。
どうしたら勇太に近づけるのかな。
勇太が俺のことを背景じゃなく「俺として」認識してくれて、「友達だ」って思ってくれれば、他に何もいらないのに。

勇太との接点は週に2回の体育の授業のみ。
とはいえ、話すことすらない。
せいぜいチーム戦で対戦する程度?
それ以上の接点は、ない。
交友関係も全くかぶらない。
俺は柔道部、あいつは帰宅部。
たまに配布物の配達人として教室に入った時に目で探すだけ。
後ろ姿を見つけると、ラッキーな日だな、と思うだけ。
互いに挨拶すらしない。

時折、一瞬だけ目が合い、そしてすぐに逸らす。
声をかける用事も理由もない。
ただ、体育の時間だけ、すこしだけ接近が叶う。
相変わらずのモブのままだ。

何もできないまま季節は巡り、気がつくともう年末になっていた。

(このままうかうかしていては、2年のクラス替えでは唯一の接点である体育の授業すら合同ではなくなる可能性があるんじゃないか?)

焦る。そして悩みに悩んだ。
でも、俺と勇太の間には、何の接点も見つけられない。
特にひらめかない日々が続き、冬休みに入る前日。


その事件は、起こった。
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