【完結】初恋をこじらせた殿下の溺愛日記【本編完結/番外編SS随時更新】

fatimah

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愛憎渦巻くスクールライフ②

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 教室に向かう廊下を手をつないで歩く2人を幸せオーラが包んでいる。
「今日はHRがあるんだっけ?」
「あぁ、役員決めとか言ってたな。役員って何をするんだ?」
「う~ん、まとめ役みたいな?ほら、この学院ってお祭りとか色々あるから。」
 アメジストの瞳をキラキラと輝かせ、『お祭り』というイアンが可愛くて、アレキサンダーはイアンを引き寄せ頬にキスをする。
「アレク、ここ学校だからちゃんとして!みんな見てるし」
 イアンは笑いながらアレクを押しのけようとアレキサンダーの腕の中でもがく。

「はーい、そこのバカップル。今すぐ離れなさーい。さもないと風紀委員に推薦しますよー。」
 バロンがイアンを救出しながら警告をする。
「風紀委員?そんなのも決めるのか?」
「さあな。俺もよく知らね。」
「なんだそれ。」

 教室に入る直前に、3人は後ろからフィッツに呼び止められて振り向いた。
「よぉ、ちょっといいか?あのさ、殿下とバロン…弓術の授業のことなんだけど…」
 アレキサンダーはフィッツの言い方に何となく歯切れの悪さを感じ、「イアン、先に席をとっておいてくれるか?」というと、バロンに目で合図をしてフィッツと廊下の隅へ移動した。
 イアンは特に気にしている様子はなく、一人で教室に入るとクラスメイトと挨拶を交わした。

「おはよう、イアン。今日も可愛いね。って、これ殿下に聞かれたらヤバい?」
「あはは、大丈夫。ありがとう。ニールも素敵だよ。」
 魔法科のクラスを一緒に受けているニールは伯爵家の三男で、宮廷騎士を務める年の離れた2人の兄に溺愛されている。愛されてすくすくと育ったニールは思ったことを素直に口にする。裏表のない言動が実に爽やかで、すでにクラスのムードメーカーとなっている。イアンも初日に話しかけられ、すぐに打ち解けた。

「なぁなぁ、イアンと殿下、どっちが告白したの?」
「えっ?えっと・・僕かな。」
「マジかぁー、告られても断るって言ってたのに?」
「うん。そうなんだけどさ。ほら、みんなが色々言うから意識しちゃって・・・」
「キャー!」
 ニールが顔を両手で覆ってふざける。

「やめなさいよ、ニール。まったくもう。デリカシーがないんだから。」
「なんだよ、セイラも聞きたいって言ってたじゃん!」
「そんなの・・・聞きたいにきまってるじゃない!でも聞き方とかタイミングとかってものがあるでしょ?」
 イアンそっちのけで2人が言い合いを始めた。
 ニコニコして2人を眺めていると、
「「で?イアン、なんて言って告白したの?」」と2人同時に詰め寄られた。
 イアンが少しふざけて、「ご想像にお任せします。」と笑って返すと、ニールとセイラが同時に「「キャー!」」と言って顔を覆う。

「お前たち、何やってんだ?」
 いつの間にかやってきたアレキサンダーが、呆れた様子で声をかける。
 王子殿下の登場に2人が恐縮する…かと思いきや、ニヤニヤ顔で、「殿下はいつからイアンが好きだったんですかー?」「イアンから告白されたって本当ですかー?」と、タブロイド紙の記者のように次々と質問を浴びせかけた。

「なっ・・・!」
 真っ赤な顔でたじたじになるアレキサンダーを見て、イアンは楽しそうに笑った。
 ――アレクがクラスメイトに絡まれてるってなんか新鮮!いいな~、青春って感じ。

「あーあ―幸せそうな顔しちゃって。羨ましいねぇー。」
 その様子を眺めてバロンがしみじみ呟いた。
「あん?なに?お前も恋しちゃってる感じ?」
「そういうんじゃないけどさ、なんかいいじゃん?人が笑ってる顔ってのはさ。」
「そうだな・・・。とにかく忠告はしたからな。」
「了解。ありがとな。」
「おぅ。」
 フィッツが去り、バロンはふぅッとため息をつく。
 ――あのお嬢ちゃんは諦める気はないってわけか・・・。まっ、兄貴に分別があるってのが唯一の救いだな。

 HRが始まり、クラス代表に誰か立候補はいないかと担任のマクラーレン教授が尋ねるが、誰も手をあげない。クラス代表は自動的に生徒会に属することにもなるため、仕事が増えるのは必然だ。正直みんな面倒くさいと思っている。

「僕やってもいいかな?」
 小声でイアンがアレキサンダーに訊く。
「あぁん?」自分には関係ないとばかりに半分寝ていたアレキサンダーがきき返した。
「だって先生困ってるし・・・。いい経験にもなるかなって。」
 顔を寄せて囁くイアンがとてつもなく愛らしくて、今すぐにでもキスしたくなる。
 アレキサンダーは、「しょうがねぇなー。」と呟いてイアンの髪をくしゅくしゅすると、

「教授、俺がやりますよ。」と手をあげた。

「アレク?」
 イアンがびっくりして目を丸くした。 
 ――あぁ、まん丸いブドウのキャンディドロップみたいだ。
「副代表にはイアン・ステップフィールドを推薦します。ねぇイアン、俺と一緒にやってくれる?」
 アレキサンダーはそう言って、イアンに優しく微笑んだ。

 ――凄い!アレクってやっぱり凄い!どうしよう、どんどん好きになっちゃうよ。

「はい、喜んで。」
 頬を染めて、はにかみながら答えるイアンに、「プロポーズかよっ‼︎」とニールが声を張り上げた。
 一瞬の沈黙の後、
「キャー」
「おめでとう!」
「俺もだれか幸せにしてくれー!」
 と口々に皆が騒ぎ出し、イアンは真っ赤になって下を向き、アレキサンダーはクラスメイトの祝福にドヤ顔で応えていた。
 騒然となったままHRの終わりを告げる鐘がなり、マクラーレン教授はそっと教室を出ると、「またひとつ、陛下にいい報告ができそうだ。」と微笑みながら呟いた。
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