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Side:ジュリア・152a

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 ジュリアは研究職ですが、単純な武器を扱う位問題無ありません。技能を詰め込む容量は沢山空いて居ます。急遽ボウガンの扱いを入れる位なんの問題もないのです。
 銃なんて引き金を引けば良いだけです。でも施設への破損が有るかも知れません。無意味に物を壊すのは良くありません。なのでわざわざボウガンを用意してきました。
 出来れば汚さない方が良いのでしょうが、データは大事です。万一スタンガンなどを使用して神経が不具合でも起こしたら意味がないです。

「サク。意識はありますか」

 背後へ派手に倒れ、後頭部を切ったらしく浴室の床に血だまりを作るサクと突きますが反応しません。貧血と、自身の血に含まれる成分で意識が内容です。

 職務放棄を起してまでこんな所にやって来たセラの管轄下の研究者の無力化は簡単です。
 数射関節に撃ち込めばそれで済みます。もともと中毒症状でまともな思考を出来て居ないので簡単です。
 後はどんな影響が出るか調べる為にラボに持ち帰るだけです。サクと、汚れた浴室はどうしましょうか。成分分析をしていているだけで依存を起すなら、あまり人員を割きたくないです。
 どうでもいい人間が欲しい所ですね。

「ジュリアぁ……そいつ、寄越せ?」

 矢が数本突き立って居ると言うのにとても楽しそうにへらへら笑う男をラボに持ち帰ろうとしたら、ユマが居ました。
 なんでしょう。前にユマ自身が言っていた……。

「ヨウカイ、首置いてけ……?」

 そういう顔です。

「頭と脊椎を抜いた後に渡します。それより適当な人間を用意してください。サクが流血沙汰です」

 ユマが迷う様にジュリアとサクを見比べて、直ぐにサクに駆け寄りました。これはジュリアが貰っても良いという事ですね。勝ちました。
 
「手袋してくださいね」

 一応白衣に突っ込んで置いた手袋をユマに渡します。オーナーが使い物に無くなったら洒落にもなりません。せっかく面白い事をいろいろ知っているのに、勿体ないです。

 ユマに呼ばれたので、無事に獲得出来たサンプルを検査にかけてからサクの病室に向かいました。

「来ました。大丈夫でしたか?」

 主にユマへの影響です。そう言えば、サク自身にも影響が出る様ですが、依存状態に成らないのでしょうか。不思議です。

「俺はね」

 サクの横に座るユマの顔面のパーツが物凄く中心に寄っています。しかめっ面です。

「どうしましたか」

「嫌だけど、めっちゃ嫌だけど……くっそ嫌だけど……!!」

「サクが起きますよ」

 ユマは嫌だけど!と言いながらサクの眠るベッドにごすごすと額を打ち付ける無為な行動をしています。

「死ぬほどいやだけどぉおぉー!!さくをっ、病院から出そうと思う……」

 それが最善だと思います。セラの管轄下に何人汚染された物が居て、ジュリアの使った人間何人の理性のタカが残っているかも不明な状態です。ユマに報告する気もありません。勝手に人体実験を決行したのがバレたら怒られます。予算が減らされます。それは困ります。
 知らせる事は出来ないので、また中毒者が襲撃沙汰を起された後が面倒になります。それなら、早めにこの施設外にサクを出した方がコストが軽く済みます。

「ユマが連れ帰りますか?」

 一番低コストな方法はサク本体を処分する事ですが、ユマはそれをしないでしょう。そこまで固執するのなら当然の様にユマが連れ帰るのでしょう。

「そーしたいけどー。おらぁ弟の助も一緒に住んでるからなぁああー。俺の部屋見せられないしぃ」

 うわああ。と謎の鳴き声を上げたユマは面白い生き物ですね。

「お前も論外だし!一人暮らしとか、絶対させられないし!むしろ目の届かない所にやりたくないし!むしろ俺が家出してさくと駆け落ちするし!海の見える小さな丘でパン屋さん開くしぃ……!」

「ウミ?」

 時々ユマは変な言葉を喋ります。尋ねればそれがどんなものかも説明してくれますが、今はそれどころでは無い様でぶんぶんと頭を振っていて実に楽しそうです。

「エルドレッドに預ければ良いんじゃないですか。無害ですよ。彼は。馬鹿ですけど。護衛にはなりますよ」

「やだぁ!馬鹿だもん!アホだもんあいつ!あほヘタレだもん!無害でもアホだもん!天然ほんわかおにーさんとかさく好きだもん!懐いたらやだぁ!!さくは俺のだもんー!!」

 そこまで言うのに、何故連れ帰らないのでしょう。そこまでサクへの天秤が大きく傾くなら弟の方をどうにかすれば良いと思うのですが。

「あ゛ーもう、最後の手段で、くそ雑魚レアンドんちに……でもアイツ明らさまに俺とさくの間に入って来るしなぁーあああーでも欠陥野郎だし、処分は楽なんだよなぁああ!でもさく取られそうでやだぁああ」

 ジュリアはどうでもいいので、思う存分悩めば良いと思います。でもでもと自分の言葉に否定を重ねる飽きて来ました。
 検査結果も数点で始めて居るかも知れないので、ラボに戻りたくなりました。
 戻りたいので、戻ります。ユマを見て居るのも飽きました。結局何の為に呼ばれたのか分からないので。

「うわー!まてこの野郎!」

 立ち上がったら間髪入れずにユマに白衣を掴まれました。引っ張らないでください。

「さくを取られたくなーいー!知恵を貸しやがれよぉ!」

 ジュリアは感情的なものは苦手です。何故嫌だという意思がはっきりしているのにそれを躊躇うのか分かりません。ユマなら何をやって許され、仮に自分で布いたルールに悖るのなら余人が知らなければいいのです。観測者が居なければその事象は起きて居ません。

「ユマはジュリアに何を言わせたいんですか」

「わかんない」

「……どういう状況……?」

「分かりません。ジュリアが聞きたいです」

 やはり騒いで居たせいで、サクが起きました。目前でジュリアの白衣の裾を掴んで床を転がるユマを見て、不思議そうにしています。ジュリアもこの状況の説明を求めたいくらいです。

「ユマ……床汚くなっ……頭痛い」

「うわーん!さくぅ!!」

 ようやくユマに白衣を離して貰えました。

「お風呂で転んで頭打ったら最悪死ぬよ!?」

「生後一週間にして、私はとうとうご老体の様な醜態を!?」

「気をつけてよ!また俺より先に死ぬ気!?」

 息をする様にユマは嘘を付きます。いつもそうですが。
 
 頭の傷は既に塞がって居ます。確かに傷を作った場所にサクは手を伸ばしているので、痛みは完全に抜けて居ない様です。
 嘘で構成されたユマの言葉にサクははっとした表情を作ります。嘘を汲み取った表情ではありません。

「ごめん……。私、今度はちゃんと居る。ユマを看取る位の気分でいく……!」

「なにそれプロポーズ?エンダァー!!」

 楽しそうですね。どうしてそんなに表情を入れ替えられるのか不思議です。
 むしろ何故そこまで気持ちが動くんですかね。不思議です。

 不思議ですが、分かりやすい人間でいいと思います。
 明らかにユマの気分が上昇して居るのが判断できます。面倒くさい事が終わった様なので、やっとジュリアは脱出できます。はい。

 後はどうぞ、ご自由に騙してください。
 
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