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みなさまの中での私の要介護度どうなってるの?
しおりを挟むもうやだ。体感的に一日も経ってない内に社会的に二回死んだ……。
めめんともり……。
思わず両手で顔を覆ってしまう。ユマの話的に長時間居たらヤバイ場所からサルページしてくれた恩人の顔が見えない。激おこぷんぷんまるとか、可愛い表現の効かない真っ赤なお目めが見れません。
圧し掛かるユマことまっさんが小さな裏声で『めめもりっ』とやたらに可愛い声を出してる。止めてくださいまっさん。言い逃れが出来なくなるんで取り合えず降りてください……。
「もーユママー、病人を虐めないんだぞー。おーりーなーさーいー」
私の上に乗り上げたままのユマを、どうやらセラが引っ張り降ろそうとしているみたいだけど、元気なユマは頑固だった。
頑固に私に張り付いている。
……あれ?セラはユマと知り合いなのかな?呼び方が親し気だしじゃあメンズなの分かりますよね!事案ではないです!証明して!お願いします!
「弟君にチクるよ!オーナーが仕事しないって!チクるよ!!むしろあたしの仕事じゃまするってチクるよ!」
「ちぇー」
しぶしぶ、とでも言う様にユマがずり落ちていく。どうでも良いけど裏声やめろ。事案臭が拭えないだろ。
「さくーまた遊びに来るからねー!待ってろよー!」
ばったばたとブーツの音が遠ざかっていく音がするけど、顔を上げられずに相変らず両手で顔面を覆って丸くなる。
一回目の社会的死は、本当に死んだわけだから周囲の人間の反応は目の当たりにしてないけど、今回は、目の前に……!!
「うわっ……え!?」
もうヤダ、恥ずか死ぬ、と言うより信用もなにもないんだろうけど親切にしてくれた人を失望させるのが辛い。
そんな反応を見たくなくて顔を覆ってたら、そのまま掬い上げる様に持ち上げられた。
急な浮遊感にうっかり悲鳴がでる。
意識朦朧としている相手でも、声掛け重要ですよ!病院生活長いから、そういうの、詳しいんだ!
うっかり顔面ガードを避けてしまう。
至近距離に、未だに怒り心頭!とばかりのレアンドの顔。真っ赤な目と近距離で目があう。
ユマが調子に乗ってくすぐるせいで笑い泣きして、後の社会的死の訪れでヤバい顔になってると思う。
……流石に、『出先で物凄い萌を見たけど、表情筋総動員で取り繕った結果のヤバい顔』よりはましだと思いたい。
マシだよね!?
「……泣いてるのか」
泣いてるって言うか、泣き笑いの産物。
あ……。そうだ。昔はお互い、特に私の方の循環器に問題があったから、何を間違えてもくすぐりっこ何て出来る訳無かった。
それが今出来た。ちょっと、体調不良で咳は出るし反撃は出来なかったけど、こんな風にじゃれる事が出来た。
そんな事実に気づいて、何とも言えない感傷が沸き上がる。
ついでにまた涙が出て来た。
「すいません……何でもないやつなんで、気にしないでください」
ほぼはだけた検査着を引っ張って目元を拭う。涙なんて血球の抜けた血液だから、さっきのセラの話的に直で触れない方が良さそうだし。
チッ……。
ぐしぐしと目元を拭って居ると、盛大な舌打ちが聞こえて、思わず身構える。
「あの野郎……」
ぼそりと呟かれた言葉に殺意が籠って居て、ぞわりと寒気が走る。ちょっとした、感慨に耽っていたから圧を持った声のダメージが大きい。
「ありゃりゃ。ユママに泣かされた?しかたない奴だねー。お風呂の準備して貰ったから、そのまま流して来な。君にも影響あるみたいだしね」
出来るだけ水分が残らない様に、目元を擦ってから、ありがとうございます。と伝える。
「場所教えてもらっても良いですか?」
「そのまま持って行って貰って。多分、自力だ途中でへばりそうだし。レアレア宜しく!」
「一人で平気ですよ?私、これよりふらふらの時でも結構動けます。自信あります!転倒しないようにとか得意で、えう」
使って無くて衰えてるだけなら、欠陥のせいで身体が使えない訳じゃないなら!私は動きたい!
あと人間、しかも今はそれなりに背の有る男だ。ずっと抱えてるの結構な重労働だろうと思って辞退の旨を伝えたのに、顔面、というか全身にベッドからはぎ取ったシーツを被せられて一瞬布を吸引ししまった。
周りの景色が良く分からないまま、抱えられて運搬されている様な揺れを感じる。
「お、重くないですか……?」
恐る恐るシーツを押しのけて、顔を出してみる。
本来『彼』は太って居ないし、現在は寝込み明けよろしく筋肉はがた落ちだ。重くは無いだろうけど、決して楽な労働では無いだろう……。
「重くないからじっとしてろ」
一瞬こっちを見てから直ぐに目線を逸らせる。
「あと、シーツ……首まであげとけ」
……あ!私、今現在の恰好痴女……いや男でした。露出狂かよって感じですもんね。ごめん……。これ以上の精神的なダメージを避ける為に大人しく鼻先までシーツを引き上げる。
お手数おかけします……。うぅ。
それにしても、本当にこの建物はあの病院に似てる……。窓のから見える景色は大分違うけど。廊下の感じとか物凄く似てる。
まっさんが40年位ここで『ユマ』をやってたのと関係してるのかな?
あれ、そういえば『俺も持ち物の土地が』とか言ってなかったけ……!?
「降ろすぞ」
「あ、はい!お手数おかけしました!」
病院に良くある、横にスライドさせる大きな扉の前でそっと下してもらう。
裸足で瓦礫の上を歩いたせいで付いた切り傷がぷちり、と開いて地味に痛い。掃除とかって私の知ってる日本見たいに、外部の業者を入れているのか。
通常でも血液は汚染物だし、私のなら尚更だよね。
拭いておこう。
屈み込んで、吐いたり涙拭いたりで散々な検査着さんの裾で拭っておく。
「大丈夫か?」
扉の脇に小さな端末をかざし、扉をスライドさせるレアンドが心配そうに尋ねてくれる。
「ほら」
隣に屈んで、腰を支えて貰う。
あまり力を掛けない様にして、立とうと思ったのに、思ったよりも力が入らず縋ってしまう。
……。
支えて貰いながら入った場所は、広い脱衣所だ。
病院みたいな見た目の癖に手すりとかは全然ないから、ちょっと不親切。
んー……病院基準の私の方がおかしんだよね。でもこういう公共のお風呂何て、病院のでしか入った事ない。
温泉とかは、ベンチとか自販機とか、扇風機とかあるイメージだけどそういうのもない。あと現実を叩きつける体重計。体重計は病院にもあった。
「悪い。ちょっと待ってくれ」
はい、と頷いて理解したのを伝える。
座る場所も無いので、直で床よりはマシだろう、という判断でまたスライド式の扉の前のもふもふマットの上に座らせられる。
曇りガラスだから、きっとこの向こうが浴室なんだろうな。なんてぼんやり思う。
それにしても私どんだけ要介護……。酷い時はもっと酷かったけど、ちゃんと生きていたんだけどなぁ。
はぁ……と溜息が出る。
申し訳なさがずんずん募る。まっさんにぼろ負けした対戦型のパズルゲーム見たに、消さないピースが積っていく。
なんでこんなに親切にしてくれるのだろう?本当に、言葉のままに身一つでぽんっと存在している私に、何か支払えるものは有るだろうか……。
ただお金を掛けて、手間をかけて、それでもただ生きて、何も成せないであっさり死んだ身としては、ただただ優しさに甘えるだけなのは、とても、息がし辛くなる……。
なんて思考は本心。
真実本心、この状況に申し訳なさを覚えるのに、お腐れさまという生物は罪深い。目の前に美味しい餌、という名のネタをぶら下げられた瞬間元気になる。
これこそが、現実逃避なのかも知れないけど。
世の中の推しは尊いし、BLもGLも大変うまうまなのだ。顔の良い奴も大好きだ。夢願望はないので、もっぱら壁に成りたい派だったけども。
「……あ、すいません。退きます」
良心という名の、腰のタオル一枚のレアンドを数拍だが、思わずガン見していた。
個人のプライバシーの為に、そのまま流用する事はしないけど、生の!イケメンの!引き締まった肉体は脳内に録画すべきだ。
いつかの参考資料になるかも知れない。
……また絵を描く機会が有るかは分からないけれど、取り合えずまっさんとイケメンが脱いだ!と騒ぎたかった。
なんて当人には公開できない邪な思考で、浴室へ続く扉前の自分が邪魔なんだな、という事を察するが少し遅れた。
立ち上がって居ては時間がかかるので、膝で這って退こうとするが、止められる。
「いや。湯船で溺れても困るから……一緒に入るぞ」
心なしか、レアンドの顔が赤い。
良心付きでも恥ずかしいのかな?男子だった経験は無いけど、こういう時女子同士の方が割と羞恥心とかないかな?修学旅行は行って無いけど……。
入院中、入浴時間被っても、どうも~程度に会釈して普通に脱いだしなぁ。
「……あぁー……」
赤い顔のまま、何かを言い淀む。
何だろう……。ちょっと怖い、冷たい系な年下の照れ顔イイネ!あーRECREC……。私の中で右側に固定されそう。
しばし間を置いて、一つ咳払いしてから思い切った様にいう。
「……脱がすぞ?」
「……?」
脱ぐのは割と自分で出来るよ。着る方が難しいタイプだよ、私。あ、今は何もコード系ないから楽勝なのでは?
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