6 / 24
幕間 テルの悪夢
しおりを挟む
「うわあああああああああ!!」
絶叫と共に輝久は目覚め、汗だくの上半身をガバッと起こす。
酷い夢を見ていた。ラグナロク・ジ・エンドに変身した輝久が難なく倒した不死公ガガが、夢の中では恐ろしく強く、一緒にいた女神もろとも惨殺された。
だが、夢だと分かれば急速に安心し、輝久は改めて周囲を窺う。
ノクタン平原の草花が広がっている。丘から遠くに見えていた町が随分近い。十数メートルも歩けば辿り着ける距離にいる。
「此処は……?」
「ドレミノの町の前デス」
淡々とした声が聞こえて輝久は振り返る。
そこには――首のないマキが佇んでいた。
「ぎゃあああああああああ!?」
先程と同じかそれ以上の叫び声を上げる輝久。マキは小脇に抱えていた自身の頭部をガチャンと音を立てて首にくっ付けて親指を立てる。
「メンテナンス中デス」
「驚かすな、バカ!!」
輝久は装着されたばかりのマキの頭をペシーンと叩く。するとマキは両手を顔に当て、指の間から黒いオイルを垂れ流し始めた。
「暴力反対デス……」
「泣くな! お前が悪いんだろ!」
幼女アンドロイドを軽くではあるが衝動的に叩いてしまったのには訳がある。頭のないマキを見た瞬間、夢の中で金髪の女神が首を噛み切られて殺された光景を思い出したからだ。
(え、と……あの女神……名前は……)
金髪碧眼で白いドレスの美しい女神。夢の中ではしっかり名前を覚えていた筈なのに、今、その記憶は朧気であった。
しかし、夢の内容などをいちいち気にしていても仕方ない。ハンカチで顔のオイルを拭いているマキに、輝久は尋ねる。
「なあ。俺、どのくらい寝てたんだ?」
「一時間くらいデス」
「ジエンドだっけ。あの妙な格好に変身したら、そんなに寝ちまうのか」
「体ガまだ適応していなかっタのでショウ。次は大丈夫だト思われマス」
先程、泣いていたのが嘘と思うくらい、マキはケロッとしている。真面目そうな見かけにそぐわぬ適当アンドロイドに、輝久は深い溜め息を吐いた。
「ってか、マキが此処まで俺を担いで来たのか? 結構、力強いんだな」
「ハイ。頑張っテ、引きズってきましタ」
「引きず……? よく見りゃ俺、擦り傷だらけじゃねーか!」
自分の手足があかぎれのようになっているのを見て、輝久はまたマキの頭をペシーンと叩いたのだった。
絶叫と共に輝久は目覚め、汗だくの上半身をガバッと起こす。
酷い夢を見ていた。ラグナロク・ジ・エンドに変身した輝久が難なく倒した不死公ガガが、夢の中では恐ろしく強く、一緒にいた女神もろとも惨殺された。
だが、夢だと分かれば急速に安心し、輝久は改めて周囲を窺う。
ノクタン平原の草花が広がっている。丘から遠くに見えていた町が随分近い。十数メートルも歩けば辿り着ける距離にいる。
「此処は……?」
「ドレミノの町の前デス」
淡々とした声が聞こえて輝久は振り返る。
そこには――首のないマキが佇んでいた。
「ぎゃあああああああああ!?」
先程と同じかそれ以上の叫び声を上げる輝久。マキは小脇に抱えていた自身の頭部をガチャンと音を立てて首にくっ付けて親指を立てる。
「メンテナンス中デス」
「驚かすな、バカ!!」
輝久は装着されたばかりのマキの頭をペシーンと叩く。するとマキは両手を顔に当て、指の間から黒いオイルを垂れ流し始めた。
「暴力反対デス……」
「泣くな! お前が悪いんだろ!」
幼女アンドロイドを軽くではあるが衝動的に叩いてしまったのには訳がある。頭のないマキを見た瞬間、夢の中で金髪の女神が首を噛み切られて殺された光景を思い出したからだ。
(え、と……あの女神……名前は……)
金髪碧眼で白いドレスの美しい女神。夢の中ではしっかり名前を覚えていた筈なのに、今、その記憶は朧気であった。
しかし、夢の内容などをいちいち気にしていても仕方ない。ハンカチで顔のオイルを拭いているマキに、輝久は尋ねる。
「なあ。俺、どのくらい寝てたんだ?」
「一時間くらいデス」
「ジエンドだっけ。あの妙な格好に変身したら、そんなに寝ちまうのか」
「体ガまだ適応していなかっタのでショウ。次は大丈夫だト思われマス」
先程、泣いていたのが嘘と思うくらい、マキはケロッとしている。真面目そうな見かけにそぐわぬ適当アンドロイドに、輝久は深い溜め息を吐いた。
「ってか、マキが此処まで俺を担いで来たのか? 結構、力強いんだな」
「ハイ。頑張っテ、引きズってきましタ」
「引きず……? よく見りゃ俺、擦り傷だらけじゃねーか!」
自分の手足があかぎれのようになっているのを見て、輝久はまたマキの頭をペシーンと叩いたのだった。
10
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる