機械仕掛けの最終勇者

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幕間 テルの悪夢

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「うわあああああああああ!!」

 絶叫と共に輝久は目覚め、汗だくの上半身をガバッと起こす。

 酷い夢を見ていた。ラグナロク・ジ・エンドに変身した輝久が難なく倒した不死公ガガが、夢の中では恐ろしく強く、一緒にいた女神もろとも惨殺された。

 だが、夢だと分かれば急速に安心し、輝久は改めて周囲を窺う。

 ノクタン平原の草花が広がっている。丘から遠くに見えていた町が随分近い。十数メートルも歩けば辿り着ける距離にいる。

「此処は……?」
「ドレミノの町の前デス」

 淡々とした声が聞こえて輝久は振り返る。

 そこには――首のないマキが佇んでいた。

「ぎゃあああああああああ!?」

 先程と同じかそれ以上の叫び声を上げる輝久。マキは小脇に抱えていた自身の頭部をガチャンと音を立てて首にくっ付けて親指を立てる。

「メンテナンス中デス」
「驚かすな、バカ!!」

 輝久は装着されたばかりのマキの頭をペシーンと叩く。するとマキは両手を顔に当て、指の間から黒いオイルを垂れ流し始めた。

「暴力反対デス……」
「泣くな! お前が悪いんだろ!」

 幼女アンドロイドを軽くではあるが衝動的に叩いてしまったのには訳がある。頭のないマキを見た瞬間、夢の中で金髪の女神が首を噛み切られて殺された光景を思い出したからだ。

(え、と……あの女神……名前は……)

 金髪碧眼で白いドレスの美しい女神。夢の中ではしっかり名前を覚えていた筈なのに、今、その記憶は朧気であった。

 しかし、夢の内容などをいちいち気にしていても仕方ない。ハンカチで顔のオイルを拭いているマキに、輝久は尋ねる。

「なあ。俺、どのくらい寝てたんだ?」
「一時間くらいデス」
「ジエンドだっけ。あの妙な格好に変身したら、そんなに寝ちまうのか」
「体ガまだ適応していなかっタのでショウ。次は大丈夫だト思われマス」

 先程、泣いていたのが嘘と思うくらい、マキはケロッとしている。真面目そうな見かけにそぐわぬ適当アンドロイドに、輝久は深い溜め息を吐いた。

「ってか、マキが此処まで俺を担いで来たのか? 結構、力強いんだな」
「ハイ。頑張っテ、引きズってきましタ」
「引きず……? よく見りゃ俺、擦り傷だらけじゃねーか!」

 自分の手足があかぎれのようになっているのを見て、輝久はまたマキの頭をペシーンと叩いたのだった。
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