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Another Day 1〜2

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 飛行艇を着陸させると、タラップにて草原に降りてくる透達一行だが、そこにリザード族のヌータウが声をかける。

「オマエ、スゴイ、アンナ、マホウ、ミタコトナイ」
「私もびっくりしたわよ! 爆弾よ、爆弾」
「いやまあ、調子に乗ってあれ使っちゃったからさあ、まあしばらくここの世界にいないといけないわ、飛行艇一旦ナノマシンズに戻すからな」

 そう言って、透はアリスに頼む。アリスは飛行艇を光の粒子に変えて、霧散させる。

「とりあえず、暫くは襲ってこないんじゃない? アイツらも?」
「アア、タスカッタ、アリガトウ」
「で、どうするのだ?」

 ペギーがこれからの行動を透に聞いてくる。透は、

「まあ今日は、よかったらヌータウさん、みんなで泊めてもらえたりします?」

 そう聞くと、ヌータウは、カマワンと言って、みんなで集落へと戻ることになった。
 集落に戻ると、男衆何人かが、ティピーの様なテントを建ててくれ、透とアリス、ナインの三人とアライア親子、そして桜達三人と3つに別れて泊まる事になった。
 その夜は、リザード族の勝利の宴にお呼ばれし夜遅くまで騒いで食べて、寝床に入るのだった。

 次の日、透たちはテントから出てくると、川に向かい、顔を洗ったり、体を吹いたりした後、一旦集まった。

「取り敢えず、一日経ったけどアリス、むこうの世界の時間差はどうだ?」

『はいマスター、こちらとの時間差は若干向こうのほうが遅く、向こうはまだ半日が経過したところです。私達のこちらでの滞在しなければいけない時間は計算上、後3日は必要です』

「と言う事で、どうする? つっても南は悪魔族いるし、北か東か」
「白狼族さん、会ってみたいです!」
「そうね、ユイちゃんの親戚みたいなもんだしね」
「でもどうするでござる? この間のよんだぶるでぃーとか言う乗り物ではこの人数乗れないでござろう」
「そうよね、バスよ! バス」
「いや、道よくないからな。四駆がいいんだよな」

 暫くは考えた透だったが、ふと思い出したかのようにアリスに告げる。

「XC90 北欧のメーカーのやつ、創れるかな?」

『はいマスター、データにあります。サーフとバイク4台リセットしますが、よろしいでしょうか?』

「いいよ、お願いする」

 アリスはテントの外の広いところでナノマシンズを集積させる。小さな光の点が集まりだし、自動車の形を創り出す。そして一際光が強くなり、それは現れた。VOLVOフラッグシップ7人乗りSUV XC90である。

 「うわー、かっこいい! 未来の車なのこれ? ピカピカしてる! 外車よ!外車!」

 21世紀の車に興奮して大はしゃぎの桜をなだめつつ、

「こだわってハイブリッドにしてみました。T8ツイン……なんとかだ!」

『ツインエンジンインスクリプションです。マスター』

「それだ!」
「透! ハイブリッドって何?」
「あそうか、ここにいるみんな、知らんのか。エンジンだけではなくモーターで電気でも走るのだ!」
「えー! そっかだからツインなのね」「んだんだ」

 他の連中はポカーンだったが、何やらすごいことはわかったようだ。

「さっ、乗った乗った。一番後ろはユイとナインかな、少し狭いから」
「なんか高級感漂うのです」「さーふとは違うでありんす」
「やっぱり外車は違うわね」

 桜は助手席に、アリエルはやはり屋根にアライアとペギーは後部座席と定位置に乗り込んだ。

「それじゃあ、ヌータウさんありがとうございました! 止めてまでもらってすいません! また近くに来たらよりますんで!」
「コチラコソ、タスケテ、クレテ、アリガトウ、イツデモコイ」

 リザードマン達に挨拶をして透は運転席に乗り込み、センターコンソールにあるボタンを押しスタートさせる。

「えー、ボタンなの? スゴイ! ていうか何これ、画面よ! テレビみたいよ!」

 二十世紀の人間にはすべてが驚きのようだったが、後ろもみんなもびっくりしていた。

「それは地図なのか? トール、映し出されているのは?」
「そうそう、アリスが探索してたやつを入れてもらったんだ」

 そう言いながら透は車をスタートさせる。モーターでスルスルと動き出し、桜はまたびっくりする。

「音もなく動いたわ!」

 森の民の命の森だから、排気ガスを出したくなかった透の配慮だった。しばらくモーターで走り、森を抜けるとアクセルを踏み飲む、すると軽い音と共にエンジンがかかった。

「エンジンかかったのね、静かだわ! さすが外車」

 桜は未来の車に感心していた。サンルーフを開け、アリエルに声をかける。

「屋根でいいのか? 中でもいいんだぜ?」
「風が気持ちいいのでござる、精霊が喜んでいるでござるよ」
「そっかー、んじゃ、飛ばしますか」

 透たちを乗せた車はスピードを上げ北を目指す。北側は草原の先に高い山脈があり、その麓に白狼族は住んでいるという。ナビを頼りに一行はその集落を目指すのだった。
 しばらく何事もなく順調に道は進み、ちょっと大きめの川の辺りに差し掛かり、ちょうどいいかと昼食休憩にすることにした。

「疲れたー! 材料出すから、桜作ってよ!」
「いいわよ、なんかせっかくだからバーベキューとかしたいわよね、牛肉あるんでしょ」
「いいね! 材料とアウトドア用品一式出すぜ」

 透は自分の亜空間バッグからテーブル、バーベキューコンロ、ガスボンベ、イス、牛肉とアーカンディアで買った野菜一式を出した。ついでにアリスに頼んでコーラを創ってもらった。

「やっぱ炭酸ほしいよな、あと、ナイン、簡単でいいから風呂造って! 入りたいのよ日本人としては」

〈よいでありんすか三人くらい入れるやつ造るでありんす〉

 ナインは浴場造りを始め、桜はユイとバーベキューの用意を始めた。透は疲れていたので、車のシートを倒し寝ていた。
 しばらくして、肉の焼けるいい臭いがし始める。寝ていた透も匂いにつられ、起き上がり車を降りてくる。

「ひゃー、美味そう!」

 串に刺さった玉ねぎ、肉、トマト、ピーマン等の色とりどりの食材がいい具合に焼けてなんとも言えないシズル感である。テーブルにはポテトサラダが皿に盛られていた。

「ポテトサラダ? 作ったの? 桜?」
「マヨネーズと卵もらったしね、じゃがいももきゅうりも透の食材にあったわよ」
「まあなんでも突っ込んでは置いたけど、やるね!」
「バカにしないでよ! 家は私が料理してんのよ!」
「あそうでした。すいません」
「私も手伝ったのです!」
「ユイ、かあーいーかあーいー」

 そんなこんなで準備ができみんなが集まってきた。ナインはまたペギーと風呂作り終え、エルフ親子は散策から戻ってきた。

「特に危険はないようでござるよ」
「あ、ありがとう、すまねえ、寝てて」
「いいでござるよ、一人で動かすほうが大変でござろう」

 透が自分だけ寝ていたのを謝ると、アリエルにそう労われた。

「んじゃ、ご飯食って、風呂ですかね!」
「そうね、さ、食べて、食べて!」

 桜は焼けたバーベキューからどんどんサラに置いていく。みんなでそれを手に取り食べ始める、

「あー、美味しいですわ! 色々な味がしますわ!」

 アライアが感嘆の声を上げる。使ったのはみんな知ってる王道の黄金のタレなのだが、アーカンディアの人たちには食べたことのない複雑な美味しさであった。

「やっぱり黄金のタレ最強だな!」
「確かにね、美味しいわよね」
「このサラダも美味しいな、サクラよ。ジャガラがこんなに美味しくなるとは」
「ティリリさんに感謝ね、マヨネーズと卵もらえたし」
「この飲み物、凄いです! シュワシュワするです! 甘いです」

 コーラもアーカンディアの住人には初めての体験だったようで、好評だった。
 楽しい昼食が終わり、透は久しぶりの風呂に入り、さっぱりして出てきた。

「あーやっぱり、風呂いい!」

 おっさんである。腰に手を当て牛乳を飲む姿も様になっていた。他のみんなも代わる代わる入っていった。

「ナインありがとな、いつもわりーな」

〈わちきもはいるでありんすから、いいのでありんす〉

「そうそう、みんな一緒よ!」

 そう言って腰に手を当て牛乳を飲む櫻とユイであった。

「お前らもかい!」

 久しぶりのツッコミのあと、他の人たちが風呂から上がり、体を休ませてから再び、目的地へと車を走らせる透であった。
 途中、林の中でテントを張って一泊し、山々が間近に見えるところまで来ていた。

「もうすぐ、山麓だな、優しい人たちならいいんだけどなあ」
「それって、透の言う、フラグってやつじゃない? どうせやっかいごとに巻き込まれんでしょう、透の事だし」
「なのです」
「だろうな」
「でござる」
「ですわね」
「ありんす」

『はいマスター』

「えええ、アリスまで言う!」

 なぜか、冗談に聞こえない透であった。

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