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Day 8≠Another Day 1

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 クレーターと化してしまった元西大森林中央に飛行艇は降り立つ。乗っていた者皆、口を開く力すら残っていない様子であった。何とか重い口を開いたのはユイであった。

「マーガレット様はいないのです……」
「樹園の皆もいなくなってしまったのですね」
「母上……」
「だからー、大丈夫だって、今から全て取り戻す! あそうそうくっころさんなら…」

 透がそう言うと、飛行艇の中で亜空間のゲートが開いた。そこからペギーが転がり出てくる。

「うわー! ってトール。なんでここに?」
「マーガレット様です!」
「くっころさんにはユイに渡したリストバンドと同じやつ渡しといたからな、緊急退避が起動したんだ」
「とんでもない爆発があったのだが? 気付いたら音のない世界に居てな、よくわからんうちにここに出てきた」
「まあそういうこった、でだ、これからだが」
「どうするの? 透! 樹たちを救うんでしょ」
「ああ、みんなを救う。幸い、こっちには女王様がいる。唯一あのやらしい神様を見ることができる存在だ。次は見つけ出してぶっ飛ばさないと」
「森の民を救えるのなら何でもお手伝いいたしましょう」
「拙者も同じでござる」
「よし、でまず、説明すると今まで亜空間転移ってよく使ってたよな」
「透が空間の歪みに入って出てくるやつね」
「んだんだ、その亜空間ていうのは今いるこの世界アーカンディアと位相が少しずれた場所、つまりアーカンディアなんだけどこっちからは見えていない場所なんだ。俺がいた世界000ってとこではナノマシンズを制御することでこの位相のずれた場所に入る方法が確立されたんだ」
「なるほどね、ワープ空間みたいなものね」
「ん? まあそんな感じで。でだ世界000の研究者のライアンて人がだナノマシンズを研究した結果、もう一つ奥にもう一つの亜空間があることを発見した。そしてそこから見ると世界は隣り合う同じような世界同士が無数に並んでいることを発見したんだ」
「よくわからないでござる?」
「なのです」
「えっと世界の形を台形、上が狭くて下が広い山みたいな形だとしよう」

 そう言って、地面に台形を書く。そして狭い上の方を横に線を引いて区切る。

「下が今いる空間、上の狭いとこが亜空間としよう」

 透はまた少し角度をつけて底辺がついた状態で横に台形を書いていくどんどん書いていき最終的に円に近い多角形が出来上がる

「こうやって円の様に隣り合う世界が出来上がるだろ、この台形以外の隙間が真亜空間というものだな。ライアンさんはこの真亜空間から違う世界に入る方法を発見したんだ、そしてこの異なる世界同士は三次元的に言うと時間の流れがエレベーターの様に上に向かっていたり下に向かっていたりする、つまりすべての世界が同じ方向に流れているわけではないことがわかった」
「わかったわ! つまり隣の世界に行ったとして何日か後にもとの世界に戻った場合過去に戻ってることもあり得るわけね?」
「そういう事。つまり過去に進む世界を見つけられれば、俺たちは爆発する前に戻れるっていう寸法だ」
「でも、だとしたらなぜ、トールがいた世界では戦争を止められなかったのだ? 過去に戻って止めればよいだろう」

『それは私が説明致します。私が世界000初の世界跳躍ジャンプ制御システム搭載AIだからなのです。まだ私は実験中のAIでした。これから臨床試験を行い成功して各兵士に実装されるはずでした、しかし不慮の事故によりマスターを瀕死にしてしまったため、急遽ライアン様が私をマスターの体に適合させ記憶を転写したのです。つまり複数のジャンプを制御するシステムはできていないのです』

「ということ。だからやれるのさ俺たちならね。ただ問題はこの世界のジャンプはいまだ未確認てこと。いきあたりばったりで行ってみないとこっちの時間がどうなるかわからないって事だ。まあ行くしかないんだけど」
「なるほどわかったでござる、すぐに出発するでござる」

 アリエルは、自国の民を救うため一刻も早く行動に出たかったのだった。

「私も行くわよ! いつきを救うためだもの」
「私も行くのです!」
「もちろん私もだ!」
「では、やるか。アリス亜空間ドライブ再起動。真亜空間に潜る」

『はい、亜空間ドライブ起動目標真亜空間』

 飛行艇が浮かび上がる。すぐにゲートが開き飛行艇が飛び込む。

「そういえばナイン、お前帝都に……今更か」

〈今更でありんす、わちきがいたほうがいいでありんすよ〉

「んだな、魔素を感知できるしな」

 するとすぐ、一瞬重力が無くなったような感覚があり、すぐもとに戻ると目の前は光が飛び回る幻想的な上も下も何もない空間だった。

「わーきれいなのです!」
「見たことのない景色ですわ、天界ですの?」

『マスター、真亜空間に出ました、これまでの解析の結果、左10、右10までは別の世界があることがわかっています』

「その左と右ってなんなの? 透」
「俺にもよくわからんが、右は俺達と同じような進化をした世界、つまり人間がいるって事で、左は全く違う進化をした世界らしいよ」
「そうなんだ」
「んじゃ、まず隣の左001にジャンプしてくれ」

『了解しました。ジャンプします』

 一瞬体が浮いたかと思うと、すぐに重力が戻り、目の前の光が流れていくような幻想的な空間に亀裂が入る。





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「出たか」

 ジャンプが終了し、飛行艇は実空間に飛び出る。そこは快晴で緑溢れる森と草原だった。

「よし、ナノマシンズ急速増殖開始、アリス、もとの世界のビーコンは機能してるか? 観測を始めてくれ!」

『ビーコン確認しました。時間推移の観測を始めます。ナノマシンズを急速増殖させていますが、3日ほど次のジャンプまではかかります』

「わかった、ではちょっくら冒険に出掛けてきますか」
「えええ? ここって人間いないんでしょう? 危なくない?」
「危なくなったら、ここに戻るさ、なんたって俺たちは冒険者だぜ! 面白いものあるかもしれないじゃんか、それに食料も採らないといけないだろ!」
「それもそうだな、私も行こう!」

 マーガレットはそう言って、亜空間バッグから斬馬剣の様な大きさの魔導剣を取り出し、背中に背負う。

「久しぶりに見たそれ、でけーなやっぱり」
「私も行くです!」

 黒いいつもの透と同じ装備に着替えたユイがそう答える。

「んじゃ、行きますか。俺達の冒険はこれからだ!」

 まだ見ぬ異世界の平行世界を旅が始まろうとしている、透たちは失った人達を取り戻すことができるのか? 人智を超えた冒険が、今、始まる!















「いやいや、終わらないわよ、第一部 完 でもないわよ」
「そうそう、そういう終わり方しないからね、絶対」

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