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Day 3 セーラー服と迫撃砲
しおりを挟む「なんじゃありゃ! すげえ事になってんな!」
そう透は呟いた。魔力溜まりは直径500メートル程に縮まり、光り輝く湖のようになっていた。その周りをまるで魔力を浴びたいがために近づいているかのように魔物たちがひしめいていた。
数にしてざっと二千体入るだろうと思われる魔物たちはもうすぐにでも暴走しそうな危うい雰囲気を醸し出していた。
「何かとんでもないことが起きそうだな? 一体原因は何なんだろう?……わからん!」
「わかんないんかい! まったく透はすごいんだかすごくないんだか」
「原因はわからんが、もうすぐやばいってのはわかるぜ、魔物たちが暴れ始めてる!エネルギー満タンな感じだ!」
「あ! あそこの岩陰に人がいるです! 二人で隠れてるのが見えるですです。」
1キロ程先の岩山が崩れたようなところの陰にうずくまっている人をユイは双眼鏡に驚きながらも見つけていた。
「あれだけ離れてると、手を降ってもあっちは見えないでござるな」
「助けに行くとしても、見つかるわね」
「アリス、衛星画像を光の中心から半径3キロを桜たちにも見せてくれ。ユイ、ゴーグルつけてくれ、ござるちゃんはこれ掛けて」
透はそう言って、ゴーグルを渡す。
『衛星画像出します』
その声と同時に透の目の前に衛星から見た魔力溜まりの画像が広がる。
「え? 何これ? 上から見てるの? ていうかSFじゃない、キャプテンフューチャーじゃない!」
「また懐かしいなおい! ペリーローダンじゃないんだな」
昭和の時代の少年少女はハヤカワ文庫が大好物なのである。どちらも古き良きSFスペースオペラなのだ。
「すごいです! 眼鏡に写ってるです。鳥さんになったようなのです!」
「これはすごい魔法でござるな!」
「わかったわかった、んじゃ、今から状況を説明するぞ、アリス頼む」
『はいマスター、現状魔力溜まりは直径200メートルまで収束を早めています、このままいくとすぐに限界になりそうです。それと中央に魔法陣のようなものが、浮かび上がっています』
そう言うとアリスは中心をクローズアップさせ確認させる。そして一同が確認すると画像を戻し、
『魔力溜まりが小さくなっていくに連れ魔物の密度が高くなっているため互いに攻撃しあっています。このままだと矛先が街の方に向く可能性があります。次に、隠れている冒険者の方たちですが魔物たちより2キロほど離れていますが、魔物たちが、逃げたり追っかけたりをしていますので、陰から出ることもままならないと思います』
「大体は中心から1キロ範囲くらいに固まってるのか? 魔物は?」
『はいマスター、離れてる魔物も100体程いますが、大体は集まっています。』
「よし、ユイ、悪いけど、ガイアスさんに連絡してくれ、今の内容と時間がなさそうだから殲滅してみる?ってね」
「何言ってるの! 四人で勝てるわけないじゃない!」
「そうでござる、あの数は軍隊を出してもらわないとでござる」
「まあそうだな、ナブラって自衛の軍隊ってあるんだよね?」
「衛兵隊があるでござるが1000人くらいしかいないでござるよ?」
「ああ、大丈夫だ。撃ち漏らした何体かだけを倒してくれれば」
一同、ポカーンである、透の言っている意味がわからず首を傾げる。
「まあまあ、アリス、A110式戦車って何台出せる?」
『110は現状、3台が限度です。ナノマシンズがそこまで濃くないので』
「3台あれば、無双できるんじゃね? 炸裂弾でどのくらい撃てる?」
『はいマスター、1台当たり50発は使えます』
「なら1キロ辺りは大丈夫だ。すぐ作成してくれ、丘の下に行くぞ、早くしないと魔物来ちゃうよ」
そう透に急かされ塹壕を出て下に降りると、3台の戦車があった。
「何これ、本物の戦車? 運転出来ないよ?」
「大丈夫だ、俺達はみんなで1台に乗る、冒険者助けないとな」
透は三人を1台の戦車に乗り込ませるとハッチを閉め、
「アリス、C4AI起動。これより殲滅戦に入る。っていうか、いいんだっけ? ユイ? ガイアスさんなんて?」
今まで何かとんでもないものに乗らされてると、思考が追いつかない現地人二人は終始呆けて痛のだが、ユイが正気に戻る。
「ガイアスさんから、王国騎士団がこちらに向かってると言われました。連絡をとってこっちに連絡させると」
「そっか、やべぇ早とちりするとこだった、じゃあ連絡待つか」
「それはいいとして、あとの二台は人乗ってないよ? 意味なくない?」
「あ、任せとけよ、もうすぐわかるよ」
透がそう答えると、
『C4AIシステム起動完了、チェックオールグリーン。レッド、ブルー、ミドリ、起きなさい』
『ラジャ』『了解』『にゃし!』
「そこ!グリーンでいいじゃない! 何か変なのいるし」
「なかなかいいツッコミだ、桜、よしお前ら、作戦は敵魔物の殲滅だ。以上」
「何それ、作戦、雑! なんで、これだよこれこれがやりたかったみたいな顔してんのよ!透!」
「いいんだよ、もうアリスから情報は伝わってるから。味方、騎士団からの連絡を待って、冒険者の救出及び魔物の殲滅を行う、この戦車はレッドかな? 指揮を頼むぞ」
『ラジャ! 作戦の指揮を担当及び救出班となります。ブルーとミドリは散開、ステルス起動、作戦位置につけ!』
「この馬車しゃべるんですか? 生きてるのです?」
「生きてはいないよ、アリスと同じ人工知能搭載戦車なんだよ」
そう、A110式戦車 戦略支援AI搭載により自走及び組織的に攻撃が無人にて可能な未来兵器なのだ。
「すごいでござる、トール殿は何者なのでござる?」
「何者って、イロモノよね?」
「おい! 何うまいこと言ったみたいな顔してんだよ桜!」
「別の国の軍人だよ、気にすんな、おっと通信だ」
「こちら騎士団だ、あと6キロメトン程でナブラの城壁に着く」
「くっころさ……じゃなくてペギーさんかよ?やっぱり来たのかよ。あーではこちらも今から殲滅作線に入ります、撃ち漏らし及び最初から散っている魔物たちの殲滅を頼みたいのですがよろしくお願いします」
「わかった、無理はしないでくれ、なるべく急ぐ」
「了解、連絡終わり。さて俺達はブルーとミドリが位置につき次第三方から砲弾攻撃に入る。レッドは岩陰にいる冒険者を救出する。では行きますか」
ブルーとミドリの連絡を待つ間、これから始まる戦闘に緊張していた桜であった。
その時、戦車の中でアラートが鳴る。
『光の中心から何かが現れます。亜空間転移に似た現象のようです』
アリスが衛星画像と共に、状況を説明する。
「待ってる場合ではなくなった! レッド攻撃準備!」
『イエッサー!、ブルー、ミドリ、攻撃開始! レッドは岩陰に近付き救出作戦に入る、各自始め!』
『了解』『にゃし』
戦車の砲撃が始まり、炸裂音とともに魔物が吹っ飛んでいく。透たちの戦車は岩陰に向かい走り出した。ドガーンと言う炸裂音が鳴り響く中で魔物たちが逃げ惑う姿がモニターに映し出される。
「すごいでござる」
一発の炸裂型エネルギー弾で100メートル範囲の魔物が吹っ飛んでいく様にアリエルは息を呑んだ、他の二人も同様である。
そうして、岩陰に近づいたレッド戦車は、後部のハッチから透が顔を出し、冒険者に向かって手を振る。
「こっちだ早く乗れ! 魔物が来るぞ!」
そう叫んで、乗り込むように促す。這いずるようにして、ハッチから冒険者たちを乗り込ませると、速度を上げ、魔物の中心へと向かい走り出す。
「なんだよこれ? ゴーレムか? しかもなんの攻撃なんだ? この音は? ドラゴンでもいるのか?」
状況がつかめない冒険者たちは質問を浴びせてくる。
「とりあえず、今は黙ってろ。なにか出てくるぞ、中から」
そう、光の中心に亀裂が入り、どんどん広がっていっていた。そしてそれは現れたのだ。
「まさか? ベクターだと?!」 『ベクターのようです』
透は絶句するのだった。
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