上 下
11 / 47

Day 2 ラビ イズ Cash

しおりを挟む

 時間がまだあるので、三人は買取の受付に来ていた。

「ホーンラビットの角って、ここで買い取ってもらえるのかな?」

 透は受付の女性に声をかける。

「はい、こちらで買い取ります。一本、銀貨5枚になります。」
「ああ、ではこれをお願いします。」

 そう言っていつものメッセンジャーバッグから四本の角を取り出す。長さ的に1メートルはある成体の角が小ぶりのB4サイズほどのバッグから出てきたのを見て、受付女性は若干顔を引きつらせながら、受け取った。

「成体の角ですと、銀貨8枚ですので、金貨3枚と銀貨2枚になります。討伐記録はギルドカードにつけときますね、トールさん。ちなみに、ホーンラビットは単体や幼体ですとブロンズランクですが、成体はシルバーランク以上の実力がないと狩れませんよ。」
「情報はや!ええ、お願いします。そうなんですか!覚えておきます。」

 透は、自分の名前を受付の人が知っていることに驚きつつも、お金を受け取る。

「はいこれ、一人金貨一枚ね。」

 と、桜とユイに一枚の金貨を手渡してから

「ユイ、お金の単位ってどうなってるの?」

 と聞いた。

「はいです。鉄貨10枚で銅貨1枚、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚です。普通のパンは銅貨1枚くらいです。」
「んー、銅貨1枚百円くらいかな、雰囲気で言うと?」
「そうね、物価的にそんな感じだわ。」
「ということは、一万円の収入だな。あそうだ、このあたりのホテル…いや宿っておいくらなのかね?」

 先程の受付の女性が後ろから答えてくれた。

「宿にもよりますが、食事付きで銀貨5枚くらいですよ。」
「意外に安い! ユイの家に居座るのもなんだから、泊まろうかな?」
「そんな事ないのです!命の恩人なのですから?いつまでも居てもらって良いのですです!」
「そこまで強く言わんでも…そんなに言うなら、もう少しお邪魔するよ。」
「そうするのです!」

 機嫌が良くなったユイである。

 そろそろ時間かと、三人はギルドの裏庭の様な所に有る、修練場に来てみたのだが、そこには二人の人物が待ち構えていた。ユイは、なぜか二人をみて、アワアワしていたのだが、よくわからない二人は、準備を始めた。

「えっと、試験の相手って事でいいですかあ? どちらがどちらのってあるんですかね?」

 待っていた二人は、おっさん(いかにも筋肉おばけ)と白を基調とし赤のアクセント入ったプレートメイルを着た赤髪で金色の目をした女性騎士だったが、透は一応聞いてみたのだった。

「そちらのお嬢さんは私が相手をしよう!」

 よく通るその顔によく似合った透きとおるような声で女性騎士は答えた。

「坊主は、俺だな!ガハハ!」
「やっぱりか!やっぱりなのか! 汗臭いの嫌い!」

 透は肩を落としていた。

「わかったわ!透、この斬鉄って切れないようにできる?なんか刀ってこの世界にありそうにないし、両手剣使いにくい!」
「ああ、アリス、斬鉄の刃の部分解除してくれる?」
「わかりました、マスター。」
「武器はいつもの武器で構わないぞ!私も自分のモノを使うのでな。」

 と女性騎士は背中から身の丈もあるのではというバカでかい剣を抜いた。

「はあ?斬馬剣かよ!あれふれんの?異世界人こえーよ、まじで。」

 透は、目をぱちくりしながら驚いた。

「あら、相手にとって不足なしよ!」

 そう桜は言いながら、女性騎士と対峙する。

「私の名は ペギーだ。準備がいいなら、いざ!」
「「参る!!」」

 二人は、一瞬のうちに飛び寄り、先に仕掛けたのは騎士の方だった。その長く大きい剣をものともせず上段からいっきに振り降ろす。が、桜はその一撃をまるで柳の枝の様に斬鉄を使い自然に受け流すのあった。そして間合いの外に飛び退くと、抜刀の構えをとる。

「その距離では当たらぬぞ!」ペギーは吼える。
「有海流 一ノ太刀、虚夢幻影の剣。」

 そう静かに言うと桜は抜刀した。目にもたまらぬ速さで抜刀された斬鉄は残像なのかペギーに向かって伸びていくように見えた。

 ガハッ!っとペギーは内臓にダメージを受け訳がわからず膝をつく。そこにすでに桜はニノ太刀を首に突きつける。

「くっ、殺せ!」
「そこで言う!言っちゃうのかよ! ほんとにくっころさんだった!」

 お約束に突っ込まずにはいられない透である。

「いや殺さないから!これで終わりかしら?」

 意外に呆気ない決着に周りの人達は…なぜかいつ来たのかわからないが結構な人数のギャラリーがいた。しかし一同唖然としていた。

「かあー!やっぱり桜こえー!勝てる気がしないわ!あれって発勁的ななにかだよなきっと。」
「剣の間合いでしか勝負できない剣士は二流よ!」
「うへ!おっかねーな。さーて、オイラもやりますか。おっさん!いつでもいいよ!今回は銃は無しにしますんで。」
「おお!いいのだぞ使っても?わしも魔法を使うのでな!」

 そう言うと男は何かをつぶやくと全身に淡い光を放ち始めた。

「身体強化の魔法ですです! トールさん気を付けるです!」

 やっと色々なことから復活したユイにそう注意される。

「いや、いいよ!充分だから、素手でね!」

 そう、透は不敵な笑みを漏らす。こんなキャラではないのだが?

「またディスられた気がする?」
「いくぞ!」「行きますかねっと!」

 男同士の熱い闘いが今、ここに始まる!

「いやそんなに期待感煽らなくていーからね!」

しおりを挟む

処理中です...