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今世

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~リリーの母視点~

「ふふ…よく寝てる」
「リリーったら可愛い…」
「体は成長しても寝顔はまだあどけないままね」
「赤ん坊の頃から食が細くて全然成長してくれなくて一時期はどうなることかと思ったけど…」
「あぁ…ちゃんと育ってくれたな」
「…ねぇ?ツィエロくん?なんで君が父親みたいなセリフを言うのかな?それ本来なら僕のセリフじゃない?」
「うるさいわ。リリーが起きるじゃないの」

私はリリーのお腹を優しく叩いた。

小さい頃はこうやって寝かしつけたものね…
懐かしいわ

「…んむぅ…」

あら
起こしてしまったかしら?

「ま…ま…」
「なぁに?」
「…すぅ…すぅ…」

寝言…
でも私のことを夢に見ていてくれるならいいわ

「そういえばツィエロくん。リリーのことでまだ話していないことがあったわ」
「何です?お義母さん」
「…リズ。リリーに確認もとらずに…」
「いいのよ。リリーを守るのは1人でも多いほうがいいわ」
「守る…?」
「…リリーには前世の記憶があるの」
「前世?」

ツィエロくんは首を傾げた。

そうよね
簡単には信じられないわよね

「今の生の…前?いや…でもそんなこと有り得るのか…?」
「有り得るみたい。生まれ変わりは前からいたけど前世の記憶までは持ってなかったのよ。…リリーはどれだけ悩んだのか分からないけど私達に話してくれたわ。私達を信頼してるのよ」
「…そうですね」
「だから私達はリリーの言うことを信じたわ。あなたは信じられる?信じられないのならリリーに関わらないでちょうだい。この子にとって人間は恐怖の対象だったの。私達家族はまだ平気みたいだけど使用人には全然心を開かないわ。それどころか体に触れるのも嫌がったぐらいよ」

…本当に懐かしいわ
メイド長に呼ばれてリリーの部屋に行ったらリリーが泣きながら布団にくるまっていたんですもの
話を聞いたら
『急に触られて怖かった』
ですって
その時にあぁ…この子は人が怖いんだと悟ったんですの

「だからね。ツィエロくん。あなたに心を開いたということはリリーはあなたを信頼しているの。リリーの信頼を裏切ることはやめてちょうだい」
「大丈夫よ!!お義母様!!そんなことしたら即婚約破棄よ!!」
「…アリア。俺はそんな事しないから。どれだけ苦労してリリーに好かれたと思ってるんだ?」

あら
何かしてたのかしら?

「一緒に遊んだり俺の国の言葉を教えたり…まぁ勉強が多かったけどな。だんだんと俺に笑いかけてくれるようになったんだ。誰がこんな天使を離すものか」
「そうだよね!!リリーは天使だよね!!」
「あなた。お黙りなさい!!」
「お父様!!お母様!!リリーが起きるわよ!!」
「…んく…ぅ?」

リリーが目を開いた。

「ま…まぁ…ぱ…ぱぁ?」
「ごめんなさい。起こしてしまったわね」
「…んにゅぅ…」

リリーは私の膝に頭を乗せ丸くなった。
そしてすぐにすぅすぅと寝息も聞こえてきた。

「…可愛い」
「「「うん。可愛いわ」」」
「…本当に天使だな」
「…ほんと後宮の毒にやられなくてよかった…」
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