71 / 81
4章
70話 再開
しおりを挟むマグマが沸沸と煮えたぎる火山ゾーン
今も噴火を繰り返す火山内には、溶岩流によって出来た大きな洞窟がある。
その洞窟内に宝玉3つの反応が集まっていた。
「暑いね……」
宝玉の反応を探り、洞窟内までやってきた和歌太郎
溶岩の肌を焦がすような灼熱の熱気に汗が水のように流れる。
火山内の洞窟は、ドーム並みに広く、あちこちにマグマが溜まり、ゴツゴツとした岩が立ち並んでいる。
加えて、洞窟内には硫黄の鼻腔をツンと刺激する臭いが充満し、和歌太郎の嗅覚が意味をなさない。
火山の煙と硫黄の匂いで一切の索敵が効かない状態のまま和歌太郎は進んでいく。
そして
「うん?」
和歌太郎の足が止まった。
前方数十メートルの位置
煙の中に人らしきシルエットが浮かび上がっている。
まだ距離が遠く、お互い共に姿が見えていない。
(誰だ……?)
和歌太郎は異次元BOXより剣を抜き、すり足で剣を構えたまま近づいていく。
それほどまでに慎重に近づいていくのは、煙の向こうにいる存在が放つ重圧ゆえであった。
(離れていても分かる。……かなり強い……そして、この気配…)
「ーーっ!!」
和歌太郎が煙の向こうに存在に意識を向けた時、和歌太郎の本能が警報を鳴らした。
「上かっ!」
頭上に大きな水の龍が大口を開けて迫ろうとしていた。
和歌太郎は横に全力で飛び込むように避ける。
水の龍が大地を抉り消え去る。
地面に1メートルほどの大きな穴が空いた。
(危ない所だった……)
和歌太郎は額の汗を拭い、剣を構える。
「いきなり攻撃とは……誰だよ!」
和歌太郎は攻撃してきた相手、けむりの向こうの存在に話しかける。
「……宝玉……寄越せ…」
返ってきたのは無機質な声
「姿を見せなよ!」
和歌太郎は爆発的な加速で煙の向こうの存在に斬りかかった。
"キンッ"
金属と金属の衝突音が響いた。
和歌太郎の剣が防がれたのだ。
剣の風圧により煙が晴れる。
明らかになる敵の姿
その姿を目にした和歌太郎は固まった。
「……"ヨーキ"…」
煙が晴れたそこに居たのは、和歌太郎と再開の誓いを立てたヨーキであった。
「いきなり攻撃って再会早々危なすぎない?」
「寄越せ、宝玉…」
「えーと、冗談キツすぎるよ…」
一切反応を示さないヨーキに必死に笑いを浮かべながら話しかける和歌太郎。
「宝玉、寄越せ…」
「……なんで」
和歌太郎の顔が悲しみと絶望に染まる。
剣を交えた時に既に分かっていた。
"ヨーキが操られている"という事に。
「宝玉を寄越せ」
まるで壊れたロボットのように何度も同じ言葉を繰り返すヨーキ
「伝わるよ…君が救いを求めているということに。じゃねければ、君がーー」
「涙なんて流すわけないじゃないか!」
ヨーキの目から一粒の涙が流れ落ちた。
「ヨーキとの戦いは宝玉を、願いを賭けてだと言ったのに!……でも、仕方ないよね!俺は君を倒して、君を救う。宝玉を集めて"全てを不幸を俺が無くしてやるんだ!」
和歌太郎は剣先をヨーキへと向け
「ーー最後の勝負だ」
高らかに言い放った。
ついに再開を果たした和歌太郎とヨーキ
だが待っていたのは悲しき現実
それでも尚、和歌太郎は一歩を踏み出した。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

<番外編>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
< 嫁ぎ先の王国を崩壊させたヒロインと仲間たちの始まりとその後の物語 >
前作のヒロイン、レベッカは大暴れして嫁ぎ先の国を崩壊させた後、結婚相手のクズ皇子に別れを告げた。そして生き別れとなった母を探す為の旅に出ることを決意する。そんな彼女のお供をするのが侍女でドラゴンのミラージュ。皇子でありながら国を捨ててレベッカたちについてきたサミュエル皇子。これはそんな3人の始まりと、その後の物語―。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる