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2.5章
42話 強者
しおりを挟むあれから和歌太郎は遺跡ダンジョンで3日間魔物を倒し続けた。
遺跡型のダンジョンは下に下に降っていき、階層でいうと10階分は降っていた。
また10階を越した辺りからトラップ部屋なども増えてきたが和歌太郎は持ち前の嗅覚、聴覚を活かし罠を感知し、順調に進んでいった。
そんなある時、和歌太郎は自身の進む道の先にプレイヤーと魔物の反応を感知した。
(1人と1体かな?うーん、どうしよう……)
和歌太郎は迷う。プレイヤーの反応がある道は和歌太郎の進行ルートと被っている。
(来た道を戻ってもいいけど、今の俺ならバレても逃げれるだろうし……一回様子だけ見に行こうかな?)
今までの和歌太郎であれば危険より安全性を優先したが、今の和歌太郎には多少なりともついた自信が和歌太郎を進ませた。
足音、気配を消し、慎重に近づいて行く。
(えっ!…)
そこには1人の男性とエイプマンと呼ばれる体長3メートルを超えるゴリラのような魔物が対峙していた。
だが和歌太郎が驚いたのは、その"男"の出立であった。
黒の道着のスボンに上半身は裸。
身体は屈強、筋肉を鎧が如く纏っている。
唯一見えている上半身には無数の傷痕が刻まれている。
そして何より武器といえるものを何も持っていなかった。
和歌太郎の鑑定によるとその男の名前は"里石 タオ
人族である。
「ウホォォォオォォ」
エイプマンが胸を叩き、自身の力を誇示するドラミングを行う。
最初に動いたのはエイプマンであった。
その巨体から信じられない程の速度で里石に殴りかかった。
(ーー速い!)
和歌太郎もその速さに驚く。
里石はその速度に反応できていないのか一切動きを見せない。
エイプマンの拳が里石の胸に激突する。
通常であれば内蔵が破裂し死に至るほどの一撃だが里石は笑った。
「んっ!なかなかのパンチだ。猿公。俺からのお返しだ」
逆に困惑するエイプマンの腹に里石の右のパンチを放った。
エイプマンの身体は地面に沈んだ。
和歌太郎は動けずにいた。
(……何だが動けない。)
本能が警鐘を鳴らす。
和歌太郎は完全に里石の放つ空気に呑まれていた。
里石は倒したエイプマンに合掌をすると和歌太郎に背を向けたまま言葉を放った。
「隠れている者よ。何用だ?」
和歌太郎は完全にバレていた。
「(うわぁ、バレてた)えーと、この道の先に行きたくて……」
和歌太郎は素直に理由を口にする。
「そうか、この先にか。いいぞ」
「えっ!いいの!」
あっさりと要求が通ったことに喜ぶ和歌太郎。、
「だが我と試合ってからだ」
「しあって?」
「あぁ、我はそなたと闘いたい」
「もしかして……俺の宝玉を狙ってるの?」
「宝玉になど興味はない。あるのは闘いのみ。我の願いは強者との血湧き肉躍る闘いのみ」
「もし、断ったら……」
「どこまでもそなたを追い闘う。それだけのこと」
雰囲気よりその言葉が嘘ではないことは明らかであった。
里石の要求に対する和歌太郎の答えは1択しかなかった。
「はぁ……闘うよ。ちなみに勝負が決まればそこで終了ってことだよね?」
和歌太郎は無意味な命の奪い合いはしたくはなかった。
そのため闘いのルールの確認を行う。
「あぁ、命までは奪うつもりはない。だがそなたは我を殺すつもりで来て欲しい。スキルや魔法とやらも好きに使うがよい」
「その説明だと何だか里石さんはスキル、魔法を使わないように聞こえるんだけど?」
「あぁ、使わない。というか我はスキルや魔法を持っていない。」
「えっ!なんで!」
思わず声が出る和歌太郎。
スキルや魔法はこのデスゲームにおいて生命線ともいえるべき重要なものだ。
だが里石曰く、キャラメイクの際は自身の種族である人族を選択して、後は何も選択していないとのことだった。
「我の武がどこまで通用するか?また武の極みとは何なのかを知りたいのだ」
「な、なるほどね」
和歌太郎は困惑しつつもこの男の強さの秘密がわかった気がした。
今まで闘って来たどの敵とも違う強さを持つ男"里石 タオ"
この男との出会いが和歌太郎を真の強者へ変えることになる。
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