DEATH GAME ー宝玉争奪戦

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2章

29話 それぞれの戦い

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side ヨーキ

水色の魔力を全身に纏ったヨーキは、圧倒的な身体能力を持つアロンと互角な戦いを繰り広げていた。

ヨーキの短刀とアロンのランス状の腕が何度もぶつかり合う。

「"粘土創造クレイメイカー!」

戦闘中に同時並行でスキルを発動し、アロンと自分を隔てるように粘土の壁を創造

だが即席の粘土の壁は一瞬にして、アロンの硬質な腕に破壊される。

だが、ヨーキの狙いはその破壊の隙であった。
吹き飛ばされた粘土の破片が身体に当たるのも無視して、粘土の破壊に紛れるようにアロンに斬りかかった。

しかし、異常な反応速度でランス状の腕で防御体勢をとるアロン
ヨーキの攻撃は完全に反応されていた。
にも関わらずヨーキは不敵に笑う

「……かかったぜ」

なんとヨーキの手には、武器が握られていなかった。

ーーアロンの動きが一瞬止まる。
不可思議な現象に処理が追いつかないのである。
だがヨーキの手は武器が無い状態で攻撃のモーションに入っている。

「"乱調斬り"」

 ワンテンポずれて空から落ちてきた短刀を完璧な流れで掴み、そのまま落下と同時に斬り込んだ。

アロンの片腕が地面に落ちる。

「これが俺の一家に伝わる短刀術だぜ」

ついにアロンの武器である片方の腕を付け根から切り落とす事に成功した。
しかし、喜びも束の間

「うん?なんだぜ……」

異常を感知したヨーキはアロンから距離を取る。

『損傷重大。敵プレイヤーの脅威レベルを最大限に設定。デストロイモードに移行しますーー』

アロンの身体に無数の文字列が浮かび上がり、文字が組み変わっていく。

「なっ!!」

アロンの白い身体が黒く染まり、残った方の腕の形状が鋭い剣のように変異し、全身の形状も丸みの帯びたものから角々しい無骨なフォルムになった。

『対象を殲滅します』

アロンがその場から消える。

「くっ……」

何とか反応し、アロンの腕の刃を防ぐが

(より速く、そしてより攻撃になった。これは厄介だぜ)

ここに来てアロンの奥の手に冷汗を流す。


************


一方、その頃

side 和歌太郎

和歌太郎はmadderと対峙していた。

「貴方は何故宝玉を求めるの?」

madderが鋭い視線で和歌太郎に問いかける。

「俺には救いたい人達がいる。そのためにも宝玉は必要なんだ。今回はヨーキに譲るけど、最終的には俺が全てを揃えるよ。」

和歌太郎の願いは村人達の生き返らせる事。

「宝玉を集める意味分かってる?」

madderの眼鏡の奥の瞳が、その言葉の重さを訴えかけている。

「あぁ分かってるよ。その覚悟ならできた。」

ーー覚悟が意味するは"血の道"

「そう、、和解は無理そうね」

一瞬悲しそうな表情を浮かべるmadder

「みたいだね。」

お互いの想いの強さを感じった2人は、戦うしか道が無いこと知る。

「先手必勝!」

まずは和歌太郎は先制を取った。
数メートルを一瞬で埋める速度で接近する。

(今度こそ確実に)

真横からmadderの腹部を狙う。

しかし

「無駄よ」

次の瞬間、視界に映ったのは無骨な鉄のガントレット
まさしくmadderの拳であった。

和歌太郎は強引に身体を捻り避ける。

(何故!?視線はこっちを向いてなかったはずなのに)

その異常すぎる反応の速さに驚愕しながらも再び距離を取る。

「驚いているみたいね。私の電脳処理プログラミングは、対象物に命令式を組み込む事ができる。それによって村人に簡単な命令式を与えていたわけよ。そして、このスキルにはもう一つの能力があるのよ。それは高速演算と情報処理における予知にも及ぶ予測。貴方がどれだけ速くとも私の前では無意味よ」

madderは天才的なプログラマーであった。
故に通常であれば持て余すだけの電脳処理スキルも完全に使いこなせていた。

(ならば、身体が追いつけない速度で攻撃するだけ)

和歌太郎は、madderの周囲を高速で周回する。
さらに周りながらナイフを投げる。

だがmadderは危なげなく全てを的確に打ち落とす。

(くっ!やっぱり完全に読まれている。)

madderの周囲を移動しながら、攻撃の隙を伺うが一切隙を見つけられずにいた。

するとmadderが動きを見せる。
足を肩幅に開きやや腰を落とし、左手はだらりと下げたまま右拳を腰あたりに構え、上体をひねる。
右拳を打ち出す構えである。

(なんかヤバイ気がする。一旦距離を大きく取ろう)

和歌太郎は現状のままでも十分な距離はあったが、自身の直感を信じ、距離を取る事に。

ーーだが

次の瞬間には目の前に右拳の突きを放とうとするmadderの姿が

(えっ!!!)

避けきれないと判断した和歌太郎は腕をクロスにして防御の姿勢を取る。

"ダンッ!!!"

その場から和歌太郎が消えた。
否、消失するが如し勢いで吹き飛ばされたのだ。

弾丸の如く、吹き飛ぶ和歌太郎は家屋を破壊しながら減速していき、2つ目の家屋の外壁で何とか止まった。

「ヴハッ……ッ(痛みで声が出ない。防御したのに)」

口から血を吐く和歌太郎。
madderの一撃は、見た目から想像出来ないほどの重さであった。
肋の数本が確実に折れ、腕も左腕にくっきりとガントレットの凹みが出来ており完全に折れていた。

「息をするのも痛い……(くっ……怪力系のスキルを脚力に使用した?単純な力だけでなく移動にも適応できるなんて…」

痛みを無視し、madderについて考えを巡らせる。

「…まさにチート…だね」

口元に血を流しながら苦笑する。

「でも負けるわけにはいかな…いん、だよね」

痛みを押し殺し立ち上がり、こちらに悠然と歩み来るmadderへと剣を構える。
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