DEATH GAME ー宝玉争奪戦

DP

文字の大きさ
上 下
26 / 81
2章

25話 madder

しおりを挟む

madderの配下"アレクサンダー"を無傷で撃破した和歌太郎

「よし、中央に向かおうかな。」

気合を入れ、村の中央へと向かおうとした時

--!!

空気を振動させるような爆発音が鳴り響いた。

「この音!?中央の方からだ。………何の音なんだ」

和歌太郎は五感を集中させる。すると、ヨーキの匂いが音のした方からしていた。

「もしかして先に戦いが始まったのかも」

 ヨーキの分析だとmadderは村人を操り、2人の強い配下のプレイヤーへ指示を出し、防衛、攻撃を行う後方支援タイプ。個人の武力は称号持ちといえど低いと見積もっている。
 故に本作戦のキモは、村人を即座に行動不明にし、指示系統を乱し、2人の配下プレイヤーを各個撃破すること

 ちなみに本作戦のターゲットである"madder"への襲撃は、どちらかが配下プレイヤーを倒せない場合も考慮して、先に倒した方が向かう事になっていた。

 和歌太郎は先に着いたであろうヨーキに早く合流するため、急いで村の中央へと移動する。

************

 ついに和歌太郎はヨーキの匂いがする方、村の中央部に辿り着いた。村の中央部は木柵で囲われた広場になっている。
広場の中央には家屋があるのだが、今は倒壊している。

(えっ……女性?)

 その倒壊した家屋の残骸跡に赤縁の眼鏡を掛けた小柄な女性が優雅に椅子に座り、足組みをしている。
 服装は黒のパンツタイプのレディーススーツ。ロングの赤のコートを肩に羽織っている。

「あら、新手のようね」

女性が表情を一切変えず、和歌太郎の方を一瞥して呟く。

(え!?どういうこと!?「あっ!ヨーキ!」

和歌太郎はこの場には不似合いな女性の姿に気を取られるが、ヨーキの姿を見つけ、そちらへと近づいていく。

「来たか。この女が《鮮血の姫王》"matter"だぜ」

「え!?この女性が!?ちなみにその傷は?」

先に来ていたヨーキの上着は破れ落ち、軽い火傷を負っていた。

「家は囮で爆弾が仕掛けられていたんだ。途中で異変に気付いて逃げたが、少しだけ喰らってしまった」

和歌太郎が聞いた先程の轟音は爆発の音だったらしい。
madderがいると思われた場所は、罠であったのだ。

「無事で良かったよ。でも、中々なことするね」

和歌太郎は視線を椅子に悠然とす"madder"に向ける。
その見た目からは即死級の爆発の罠を仕掛けるようには見えない。

(とりあえずは鑑定だ。)

和歌太郎はmadderに鑑定を試みる。
出てきた情報は事前にヨーキから聴いていた通りであった。
種族は人族、名前はmadder、そして、称号という欄があり"鮮血の姫王"と載っていた。

「人の情報を見るなんて無粋ね。私に何かよう?」

鈴を転がすような澄んだ声が響く。
無表情だが瞳はしっかりと和歌太郎とヨーキを観察している。

「えーと、君が持っている宝玉を貰えないかな。正直手荒な真似はしたくない」

和歌太郎がmadderに対して提案する。
その言葉から和歌太郎の無駄な争いをしたくないという優しさが滲んでいる。
しかし、そこでmadderの表情に変化が現れた。

「やはり宝玉というわけね。それは無理。あなた達を殺すしかないみたいね」

淡々と話しつつも、眼鏡の奥の瞳に凍てつく殺意が宿る。

「こっちは2人だ。村人達も配下のプレイヤーもいない。頼みの罠も不発。諦めろ。宝玉を渡せば何もしない。」

ヨーキがmadderの置かれている状況を説明し、降伏を促す。

「君にも引けない訳があるんだろうけど、無駄な戦いは避けたいんだ」

和歌太郎もヨーキの意見を援護する。
今のmadderは1人。
強みであった配下のプレイヤーと村人全員も今はいない。
個人で強いとしても1対2では勝ち目は限りなく薄い。

だがmadderに焦りの色は一切感じられない。
むしろどこか余裕を醸し出すmadder

「何を勘違いしてるのかしらね。あなた達程度が私に勝てると思ってるのかしら……"笑えるわね!"」

眼鏡の奥の目をガッと開いた。
その瞬間、地面から手が突き出て白い何かが這い出てきた。

「あれは何!?」

「魔物、いや、人形?」

地面から出てきたのは白いマネキンのような物体。
だが普通のマネキンとは違い、手の先がランスのように鋭く尖っている。

「"アロン"目の前の2人を殺しなさい」

madderの言葉により、白いマネキンの身体がヨーキと和歌太郎の方へとゆっくり向きーー

「なっ!?」

アロンと呼ばれた白いマネキンは一瞬にして和歌太郎の目前に迫った。
和歌太郎は反射的に剣を目の前に構える。

間一髪、アロンの鋭利な腕と和歌太郎の剣が交錯し、鍔迫り合い。
アロンの腕と和歌太郎の剣が拮抗する。

しかし、徐々に押される和歌太郎。
アロンの力が和歌太郎を上回っているのだ。

(ヤバい…吹き飛ばされーー)

和歌太郎は数メートル後ろへと吹き飛んだ。

「なっ!?何が……」

あまりに一瞬の出来事にヨーキは驚きで固まる。

「残念ね。私は誰にも負けられないのよ。例えこの世界で何人を人を殺めようともね」

吹き飛ばされ倒れる和歌太郎の視界にヨーキと同様の宝玉奪取のクエストが表示された。

ついに宝玉所持者madderとの戦いが始まった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

<番外編>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
< 嫁ぎ先の王国を崩壊させたヒロインと仲間たちの始まりとその後の物語 > 前作のヒロイン、レベッカは大暴れして嫁ぎ先の国を崩壊させた後、結婚相手のクズ皇子に別れを告げた。そして生き別れとなった母を探す為の旅に出ることを決意する。そんな彼女のお供をするのが侍女でドラゴンのミラージュ。皇子でありながら国を捨ててレベッカたちについてきたサミュエル皇子。これはそんな3人の始まりと、その後の物語―。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...