21 / 81
2章
20話 開幕
しおりを挟む約束の日より3日が経過し
ついに宝玉奪取作戦決行の日である。
(作戦はしっかり頭に入れた。)
和歌太郎は現在、村近くの草むらに隠れている。
ちょうど村の内部を窺えるかなりギリギリの位置である。
村人達が村内を巡回している。
「……Aゾーン異常なし」
見回りの村人が周囲を見渡し、抑揚のない声で呟く。
(あれが操られている村人か……確かに瞳に光がない。まるで機械だ。)
ヨーキの情報によるとこの村(総勢50名)の村人は全て操られているらしい。そして、その村人の視覚情報は全て"madder"に伝わるとの事。村人達に見つかる=madderに見つかるのと同義なのである。
(えっと、時間的にそろそろかな)
和歌太郎は口と鼻を布で抑え、その時に備える。
すると、村内に煙が立ち込め始めた。
「Aゾーン、いじょっ!……うガァっ」
見回りの村人が地面に倒れ伏し、痙攣し始める。
(効果バツグンだね)
布で口を覆い呼吸を浅くし、倒れ伏していく村人達を静かに草むらが見つめる和歌太郎。
この煙は、ただの煙ではない。
全身に激しい痺れを発生させる効果を持つシビル草を燃やして出る毒性の煙である。
効果は、数時間の痺れと感覚麻痺。しかし、プレイヤーにはある程度の耐性があるらしく効果が薄く、数分で直ってしまう。だが耐性の無い村人達にはかなり有効のようで、煙が漂い数秒で村人達は倒れた。
(おそろしい煙だね。申し訳ないけど少し眠っててね…)
見渡す限り全ての村人達が地面に倒れ伏している。
耐性は無い村人達は数時間はこのままである。
更に数分が経過し、村に立ち込めた煙が風に流され、薄まったのを確認し、草むらより姿を現し、村へと入っていく。
強い感覚麻痺の効果により村人達からの情報は中枢のmadderにいかない。侵入された事は分かってもどこから侵入したかを悟らせない作戦である
「作戦1.村人の無効化と侵入の成功だね。ここからが俺の役割。作戦2、配下のプレイヤーの片割れを倒すだ。」
作戦2は村の情報系統が錯乱している隙に、madderの配下プレイヤー2人を各個撃破するというもの。
そして、ヨーキと和歌太郎は作戦開始時に既に配下のプレイヤーの位置を確認済みである。
「出ておいでよ」
和歌太郎が近くの建物に対して言葉を飛ばす。
すると、建物から変な笑い声が響き
「フヒヒヒヒ……この事態を引き起こしたのは貴様ですか。はぁ~何ともお気の毒であります。」
現れたのは、小太りで眼鏡を掛けたオタクファッション。
ジーパンにチェックシャツをインした男であった。
男は和歌太郎に哀れみの目を向ける。
「何がお気の毒なんだよ」
言葉を返すと同時に和歌太郎は男に対して、"鑑定"を行う。
示された名前はアレクサンダー。種族は人族。
(名前の不一致感がすごいね……)
「おい、貴様。今、僕の事を鑑定し、馬鹿にしたでありますね!分かるんですよ貴様のような人を外見でしか判断しないようなクソカス共をを元の世界では何十人も見たでありますからね。貴様のようなクソカス野郎は死刑であります!」
唾を撒き散らしながら放たれる早口の弾丸トーク
「いや、何を「貴様などmadder様の視界に晒す事さえ汚らわしいであります。あぁmadder様、今からこのクソカス侵入者をぶち殺すであります。貴様にはもう明日はないであります」
和歌太郎の言葉さえも遮り一方的にまくし立てるアレクサンダー
和歌太郎の声に聞く耳を持たないようである。
(なんかムカつくね。あと、こいつ相当プレイヤーを殺している。かなり濃い血の臭いが身体に染みついているし、油断はしちゃダメだけど、、)
和歌太郎のイラつき度数は上昇していく。
「びびって声も出ないでありますか!仕方ないですね苦しまないように一瞬でーー」
「"うるせぇんだよ"」
和歌太郎から言葉共に鋭い殺意が放たれる。
危険を感じたアレクサンダーは口をつぐみ、後ろに距離を取る。
「貴様なんでありますか!!」
話を途中で折られたアレキサンダーは怒り心頭の様子
顔を真っ赤にして怒りの声をあげる。
「お前こそクソカスデブ野郎だね!瞬殺してやるからかかって来なよ」
火に油を注ぐが如く和歌太郎は中指を立て、挑発した。
「貴様ぁぁぁぁぁ!!」
オタク男アレクサンダーは激昂した。
madder配下の1人"アレクサンダーとの戦いの火蓋が切って落とされた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説


【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

元聖女、現在侍女は第二王子との結婚フラグを折りながら世界を救っちゃいます
宮野 楓
ファンタジー
昔、バカな王子に追放されるまで聖国で巨大な結界を張って、他国の侵入を徹底的に防いできた最強聖女は、現在追放されて隣国のルーベンス侯爵家で侍女をしていた。ある日、神託が元最強聖女に聞こえてきて、伝えるだけ伝えて王宮から帰ろうとしたら、第二王子様に気に入られてしまった!そこから始まる、元最強聖女は第二王子との結婚フラグをバキバキに折っていきながらも、世界を救う流れになっちゃう! 「は? それが何か?」な、ご主人様であるミリエル以外には容赦ない元最強聖女に、「俺の女になれよ」という俺様王子のちょっとコミカルな、シリアスもありの無事にハッピーエンドを迎えられるのか?

無能と追放された大賢者様は少女と共に悠々自適な旅をする。
Coco@
ファンタジー
西大陸一の大国とされるヒューゼル王国。
そこにオズ・ウィズリーと言う大賢者がいた。
しかし、彼は魔法も使えず、剣も使えない。
あるのは豊富な知識のみ。
故に無能と言われ追放されてしまう。
それが彼の計画とも知らずに。
1人の少女と出会い二人で旅をする事になり王国には隠していた彼のスキルにより彼は悠々自適な旅を満喫する。
*注意*
この作品は以下の内容を含みます。
・主人公最強
・ざまぁあり?
・無双あり
・不定期更新
・誤字脱字あり
・1話が短めです。(1000~2000文字程度?)
励みになりますのでお気に入り登録、感想を是非お願いします!
感想は100%返信予定です。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる