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2章
18話 鮮血の姫王
しおりを挟む「よく寝た……」
目を擦りながら起き上がる和歌太郎
日は真上に登り、既にお昼である。
昨晩、和歌太郎はヨーキの建てた家で晩ご飯を食べ、一晩中語り合った。
ちなみに家とはヨーキが粘土創造のスキルで数本の竹の上に家を建てた。ツリーハウスならぬバンブーハウスである。
竹の上に建てた家と聞けば不安を感じるが、大木並みに太い竹、数本を柱に家を作っているため、一切揺れなどもなく、一級品の出来である。
2人はお互いに驚く程息が合い、話が弾み、寝たのは日が登りかけてからである。
この世界の事や、ここに来るまでの生活、この世界に来てからの日々など、お互いに話せること、知っていることを共有した。
特にヨーキは和歌太郎の知らない情報を多く知っており、親切にもそれを教えてくれた。
(それにしても……宝玉の位置を知る方法があったなんてね。)
6つの宝玉の所在
クリアするためには必要不可欠な情報であり、和歌太郎が知らずにいた情報。
その方法とは、地図を取り出し、右端から指を左側にスライドさせると機能メニューが表示される。メニューには目的地設定、ナビゲーション機能など、そして"宝玉位置"を示す機能がある。
教えられた際は、あまりの便利の機能に和歌太郎は声を出して驚いた程だ。
しかし、示される宝玉のは条件があり《持ち主がいる宝玉のみ》
すなわち、宝玉を持った時点でそのプレイヤーの位置は他プレイヤーに明らかになる。そして、宝玉を多く集めるほどその危険は高くなる。故に闘いは避けられないのである。
そして昨晩、ヨーキに言われた言葉が脳裏に蘇る。
『"覚悟はしておけ"これはゲームではない現実なんだぜ』
何についての覚悟かは明確に言わなかったが、その覚悟が何を指し示しているのか、和歌太郎には分かっていた。
(……覚悟を決める。俺は俺を貫く)
和歌太郎は既に自分なりの覚悟を決めていた。
「おーい、昼ご飯用意出来たぜ」
先に起きて昼飯を作っていたヨーキがバンブーハウスの下から和歌太郎を呼ぶ。
「うん、今行くよー」
************
昼飯を食べ終わった後、大事な話があるとヨーキから告げられ、今2人はバンブーハウス内にいた。
「で、今後の事なんだが一つ提案がある」
「うん、それってこの近くの村にある"宝玉"が関係してるのかな?」
和歌太郎は昨夜教えてもらった地図の機能で宝玉のありかを確認したのだ。そして、その宝玉の反応は和歌太郎の居場所から数キロメートル先にある村の位置にあった。
「察しがいいぜ。あぁ知っての通り、現在3つの宝玉が地図上にある。一番遠い一つは点滅していて所在が不明確、2つ目は地図上を絶えず動いている。そして、今いる場所からかなり近い竹林ゾーンの村に一つ。そして、俺はこの宝玉を狙っている」
ヨーキは自らの地図を取り出し、竹林ゾーンの村を指差し、そう言った。
「宝玉の奪取ってこと?」
「あぁ、その通りだぜ」
「でも、何で俺に?近くの宝玉は一つだけだし、ヨーキは強いんだし1人でも可能なんじゃ?」
和歌太郎は何故、自分にその事を相談してくるのかが分からなかった。
ヨーキは頬を指で掻き、気まずそうに言葉を発する。
「うーん、それなんだが……俺は1度失敗している」
「え…!!」
驚きで固まる和歌太郎。
「ちなみにこの村にある宝玉はここ1週間ほどずっとあるんだ」
「それって……」
「あぁ、同じ位置で宝玉を持ち続けると言うことは、それを狙って他のプレイヤーが集まるから危険度は非常に高い。それにも関わらず生き残り続けているのは、単に"強い"からだぜ。今まで奴の前に破れたプレイヤーは10を超える」
「そんなに…….」
1人のプレイヤーですら命賭けの勝利であった和歌太郎はそのプレイヤーに恐れを感じた。
「そのプレイヤーの名は"madder"。"鮮血の姫王"と呼ばれているんだぜ。」
神妙な顔でヨーキが言い放った。
しかし、和歌太郎の反応は予想とは異なっていた。
「えっ……なにその厨二チックな二つ名!?」
「驚くのそこか!?やはりお前は面白いぜ。」
「でも、そんな強い相手から宝玉を奪えるの?」
和歌太郎には不可能という2文字しか浮かばなかった。
それもそのはず、様々な能力を持つプレイヤー、それも宝玉のありかを知る方法を知っている程ののプレイヤーを10人以上を倒した強者を和歌太郎が増えたくらいで倒せるのかという疑問であった。
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