DEATH GAME ー宝玉争奪戦

DP

文字の大きさ
上 下
16 / 81
2章

15話 成長

しおりを挟む

 新たなる決意を胸にエニ村を後にした和歌太郎は隣の竹林ゾーンへと進んでいた。
 地図によると竹林ゾーンにも村があり、規模的にかなり大きいため何か宝玉への手かがりがあるのではないかと考えたからだ。

竹林ゾーンにある村はエニ村から徒歩だと2日かかる距離。
しかし、和歌太郎は竹林ゾーンに至るまでに3日を費やした。

それは和歌太郎の歩み方に変化があったからだ。
今までは五感で敵を探知し避けるように進んでいたが、変化後は自ら敵と遭遇するように進んでいる。
全ては自らの戦闘経験を蓄えるためだ。

そして、数十回に及ぶ戦闘は和歌太郎に新たな発見を与えていた。

(剣術スキルを意識して、一つ一つの動きを考えて剣を振るう事で剣術に自分の意思が加わり、自分のものになった気がする)

(更に使えば使うほど剣術のキレが増して行っているのが分かる。)

 闇雲に戦うのではなく、自らの力を確実に把握し、最大限に力を引き出せるように、試行錯誤を繰り返し戦闘を行った。
 "剣術をスキルとして使うのではなく、剣術を自分自身の技にする。"

 結果和歌太郎は剣術スキルが適応されない剣以外の武器でも、ある程度扱う事ができるようになった。

そして、辿り着いた竹林ゾーン

(どこまで行っても竹しかないね)

《竹林ゾーン》
高さ20メートルはある極太の竹林が天を塞ぐように広がるエリア
竹のみが所狭しと密集しており、地面は竹の葉で柔らかい。
和歌太郎が今までいた平原と林ゾーンとは、異なる点が多くあった。

まず一つ目

(うん?それにしても竹の臭いが邪魔で広範囲の索敵ができない)

  竹林の香りが周囲の臭いを隠すため、犬人族の嗅覚が減衰されているのだ。そのため和歌太郎の進行ペースは格段に落ちる事になる。

そして2つ目

"ガサッ"

突然地面から魔物が現れた。

「またっ!」

軽く舌打ちしてバックステップで距離を取る。

(擬態した魔物ばっかりでやりづらい…)

竹林ゾーンの地面には竹の落ち葉が深く積もっている。そして、その地面に潜み獲物を狙う魔物が多くいる。
2つ目の特徴、それは擬態タイプの魔物が多くいること。
嗅覚が効かない状況での急襲は非常にやっかいなものだった。

「"グシャァッー"」

奇襲してきたのは枯葉色の蜥蜴トカゲ型魔物
全長は2m超え、鋭い牙と爪を持っている。

「よぉーし!行くぞ」

金属加工メタルワークで磨き上げた特製の剣を携え、蜥蜴型魔物に対し円弧を描くように駆け、死角に入るように接近する。

しかし、蜥蜴型魔物も死角に入られぬように和歌太郎へ正対する方へと動く。和歌太郎の速度に完全に対応している。

(案外素早いね。一気に近づいて斬っても良いんだけど何かありそうな気がする)

初めて対面する敵に対して慎重に位置取りを行う。

(接近に危険がありそうならこれでどうだ)

和歌太郎は異次元Boxからナイフを取り出す。
それもただのナイフではなく、スキルによって形状を加工した"貫通力"と"投擲"に特化した投げナイフ

そのナイフを2本連続で投げる。
ナイフの軌道は正確に蜥蜴型魔物は額を捉えた。

「グシャァ!!」

蜥蜴型の魔物が叫ぶ。しかし、その叫びばナイフが刺さったことの悲鳴ではなくーー

(防がれたっ!)

ーー魔物の能力の発動の鳴き声であった。
蜥蜴型の魔物の表皮から鋭い刺が何本も生えている。
その見た目は蜥蜴とハリネズミが合わさったようだ。
魔物の刺が和歌太郎のナイフを弾いたのである。

(あの刺は相当硬そうだね……鉄製のナイフを弾くって事は硬度は"ただの鉄'以上。おそらく剣ですら防がれ、逆にこっちが串刺しになる)

「グシヤァーー」

もう一度鳴き声をだし、魔物の刺が表皮に戻り通常状態に戻る。

(刺を出したまま動くことはできないようだね。だけど、どうすればいい。あの硬い刺を攻略するにはどうすれば)

蜥蜴型の魔物の硬い針の守備を突破するために考える
しかし、考えている途中も蜥蜴型魔物は和歌太郎を倒そうと攻撃を仕掛けてくる。

(守備力以外はそれほど強くはないけど、牙と爪は当たったらヤバそうだ)

決して油断はせず、犬人族の強化された身体能力で蜥蜴型魔物から一定の距離を取り続ける。密集した竹林を巧みに使い、蜥蜴型魔物を翻弄する。

しかし、蜥蜴型魔物の爪や牙の攻撃は竹すらも簡単に砕き、両者の周囲が開けた広場になっていた。

「よしっ!決めた」

すると、何を思ったのか和歌太郎は一気に後方に下がり距離を開けた。

そして、一気に接近しながら再びナイフを一投
狙いは再び蜥蜴の額

「"グシャァァ!!"」

ナイフに反応し蜥蜴型魔物の表皮から硬質の刺が現れる。

(よし!刺を出す時は動きが止まる)

和歌太郎の口角が上がる。

「いでよ!マイハンマー!」

和歌太郎は異次元Boxより大きめの木槌を取り出し、そのまま全力で針山を殴りつけた。

木槌の頭が"バキッ"と音を立てて弾け飛ぶ。

「痛った!……けど折れたね!」

針を殴った衝撃が腕に疾る。
だがハンマーが衝突した部分の刺が軒並み折れている。
それにより折れた部分から蜥蜴型魔物の表皮が露出

「ーーこれで決まりだ」

次の瞬間には和歌太郎の手には剣が握られていた。
蜥蜴型魔物が危機に気付いた時には既に遅し

剣が蜥蜴型の魔物を貫いていた。
蜥蜴魔物は絶命した。

投げナイフからのハンマー、そして剣。
和歌太郎は戦闘中に異次元Boxを使用し、武器を高速換装しながら戦う方法を身につけていたのだ。

 加えて、先ほどの木槌は和歌太郎が道中に得意の工作を駆使して作ったもの。
 また木槌など剣以外の武器は剣術スキルが適応されないが、剣術の動きを意識し、研鑽した事で剣以外でも立ち回りもそれなりに使う事ができるのだ。

「よし!倒せた。何となく硬そうだし粘りも無さそうだから折れやすいんじゃないかと思ったんだよね!」

 同金属において硬度が上がるほど、急激な変形に対する耐性が下がるため折れやすく。逆に柔らかい程、金属に粘りが生まれ変形に対する耐性が強くなり折れづらくなる。
 例えるならば、ダイヤモンドは硬いが鉄のハンマーで砕く事ができる。
 和歌太郎のようなエンジニアにとっては基礎的な知識であり、今回はその知識が有効となった。
 粘りの強い木材と質量による衝撃により敵の針を砕いたのだ。

「はぁ…また木槌作っとこ」

和歌太郎はまた木槌を作ることを決意し、竹林ゾーンを進める。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

時々、僕は透明になる

小原ききょう
青春
影の薄い僕と、7人の個性的、異能力な美少女たちとの間に繰り広げられる恋物語。 影の薄い僕はある日透明化した。 それは勉強中や授業中だったり、またデート中だったり、いつも突然だった。 原因が何なのか・・透明化できるのは僕だけなのか?  そして、僕の姿が見える人間と、見えない人間がいることを知る。その中間・・僕の姿が半透明に見える人間も・・その理由は? もう一人の透明化できる人間の悲しく、切ない秘密を知った時、僕は・・ 文芸サークルに入部した僕は、三角関係・・七角関係へと・・恋物語の渦中に入っていく。 時々、透明化する少女。 時々、人の思念が見える少女。 時々、人格乖離する少女。 ラブコメ的要素もありますが、 回想シーン等では暗く、挫折、鬱屈した青春に、 圧倒的な初恋、重い愛が描かれます。 (登場人物) 鈴木道雄・・主人公の男子高校生(2年2組) 鈴木ナミ・・妹(中学2年生) 水沢純子・・教室の窓際に座る初恋の女の子 加藤ゆかり・・左横に座るスポーツ万能女子 速水沙織・・後ろの席に座る眼鏡の文学女子 文芸サークル部長 小清水沙希・・最後尾に座る女の子 文芸サークル部員 青山灯里・・文芸サークル部員、孤高の高校3年生 石上純子・・中学3年の時の女子生徒 池永かおり・・文芸サークルの顧問、マドンナ先生 「本山中学」

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?

仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。 そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。 「出来の悪い妹で恥ずかしい」 「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」 そう言ってましたよね? ある日、聖王国に神のお告げがあった。 この世界のどこかに聖女が誕生していたと。 「うちの娘のどちらかに違いない」 喜ぶ両親と姉妹。 しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。 因果応報なお話(笑) 今回は、一人称です。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

処理中です...