DEATH GAME ー宝玉争奪戦

DP

文字の大きさ
上 下
7 / 81
1章

6話 対人戦

しおりを挟む


「陰キャが息巻きやがって!絶対ぶっ殺す!」

額に青筋を浮かべ、声を荒げる茶髪の青年。
歌太郎に対し掌を向け

「焦げろ!ファイヤーボール!」

掌からサッカーボール大の炎の球が飛び出した。

「なっ!!」

 和歌太郎は驚き横に飛び込むように避ける。
 放たれた炎は和歌太郎の横を通り抜け、後ろの木にぶつかり消える。木の表面が黒く炭化している。

(今のは魔法!!あの威力はやばすぎる!正面から向かうには分が悪い)

そう考えた和歌太郎は、近くの木の影に移動した。

「おいおい、びびって隠れんのかよ!!ガチのチキンじゃねぇか」

(挑発に乗ってはダメだ。あいつの魔法には木を貫通する力はまだないはず)

和歌太郎は挑発には乗らず、冷静に木の影から敵を分析する。
すると、どうする?と考えている和歌太郎の視界に"ポンッ"と表示があらわれた。

------------------

【クエスト】
○プレイヤーとの初バトル
クリア条件:敵プレイヤー"ジャン"の死

------------------

(なんだ!?)

 視界に現れた表示、それはクエストであった。
しかもクリア条件の"ジャン"という人物は和歌太郎が対立する茶髪の青年である。

(敵の死か……おそらくジャンとやらは俺を殺しに来る。一人の女性を殺した奴。俺を殺すことに躊躇はないはず。それに対抗するには……)

 人を闘うこと、殺す事に大きな抵抗を感じる和歌太郎。しかし、それは至極当然な事。戦争のない現代日本を生きる人間にとって"殺人"とは犯罪でしかない禁忌の行為。そして、その禁忌の意識は和歌太郎の根底に根付いている。

「おーい。ガチの腰抜けかよ!まだ"あの女"の方が立ち向かってくるだけマシだったぜ。まぁ弱かったから、じっくり楽しんだ後、殺しちまったけどよっ!はっ!しかもよぉ、あの女結構可愛くてよぉ--」

 まるで自慢するかのように話すジャン。
その話は止まらず、より詳細に生々しい語りは、その時の情景を脳に鮮明に浮かび上がらせる。

(くっ……この…)

怒りで握りしめた拳から血が滲む。

「--で最初は嫌がってたんだけどよぉ。途中から求めやがって--」

「黙れよ!」

語りを遮ったのは和歌太郎
ついに怒りが限界を超え、木陰から自ら姿を出す。

「へぇ~やっと出てきたな」

ニタァと笑うジャン
まるで作戦通りだという余裕の表情だ。

「ありがとうね。お前のお陰で覚悟ができたよ。"人殺しの覚悟が"」

和歌太郎も笑い返す。しかし、その瞳には氷のような凍てつく殺意が篭っていた。

「へっ!調子に乗りやがって!死ねよ!ファイヤーボール!」

再び放たれる高速の炎の塊。
しかし、和歌太郎は避ける素振りを見せない

「効かないよ!」

"バシュッ!"

和歌太郎は剣でファイヤーボールを真っ二つに斬ったのだ。

「なっ!ファイー」

「まだ終わらないよっ!」

次の魔法を放つ間もなく、踏み込み一気に接近!

「ひっ!!」

瞬く間に目前に迫り、剣を振りかぶる和歌太郎の姿に悲鳴を上げるジャン

「地獄で悔いろ……クズ野郎」

"シュッ"

躊躇なく振り下ろされた刃、遅れて赤い血飛沫が宙を舞う。
命を絶たれだジャンはその場に崩れ落ちる。

「殺してしまった……」

物言わぬ肉塊とかしたジャンを一瞥しポツリと言葉を溢す。

「でも覚悟を決めた結果だし、もう後戻りはできないしね。」

その言葉には強い決意が篭っていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

処理中です...