祓え 溝口華南

斉藤 延廣

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1章 妖を祓え

11話

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『 逢ったら最後 』



 男は息を切らしながら細い道を走っている。
「来るな・・・、 来るな・・・!!」
 何者かはゆっくりと歩み寄る。

 男は見つかりにくい場所に身をひそめる。 まわりは金網だらけで人ひとり通るのが精一杯。

「・・・!?」

 目の前に何かが現れる。

 仲間の男達がやって来た時にはすでに襲われたあとで泡を吹きながら絶命している。
 見た者によっては嘆いたりおづいたりする。
「ボスゥ・・・!」
「なんてむごいことを・・・」

 ボスの男は棺桶に入れられ一時的に事務所で保管する。

 廊下を歩く手下の男、目の前にやってくる。
「ぼ、ボス!?」
「よう!」

手下「え? え!?」
ボス「すまんな、ちょっと取り乱しただけだ。」
手下「え、だって、死んでたんじゃ 」
ボス「大丈夫、この通りだ。」
 体を軽快に動かしてなんともないアピール。
ボス「俺も油断しちまってな。 なんだその顔? 信じてないみたいだな。
 だったら棺桶開けてみろよ。」

 手下はボスをあとにつけて棺桶を開ける。
「!??」
 中には襲われた状態で死後硬直したボスの遺体。
「!!」
 手下は振り返ったと同時に襲われる。

 ほかの手下数人が来ると手下は死んでいる。
「・・・・・・・・。 」
 見ていた手下達の背後に何かが迫ってくる。

 機動隊が来たときには手下もすべて全滅。
 中では死体ばかりが転がっていて隊員達も気をつけながら進む。
 窓の外ではうっすら微笑む謎の人影。





 華南は町に来るがあたりは静まり返っている。
 何かが飛んでくるが華南は避ける、それを見ると石。

「人殺しー!」
「出てけー!!」
 少年達が石を投げる。 華南は防ごうとするがあまりの多さに逃げる。
「あ、待て~!!」

 やっとのことで人目のつかないところに身を潜める。
「どうなってるんだ?」
 女性の悲鳴が聞こえる。

 民家に入ると男性は倒れていて女性は震えている。
 窓は開いている。
華南「何があった?」
女性「あんたがやったんでしょ!」
華南「私はいま来たんだが。」
女性「うるさい出てって!」
 花瓶を投げつけて華南は避けるが水は少し散る。

 華南は走って町の人々はあとを追いかける。

 廃屋が連なる場所まで逃げてくる華南。
「嫌われるのには慣れてるが、ここまでとは・・・」
 腰を掛けて休んでるときに見上げると窓に丸まったポスターがある。
 華南は気になってポスターを広げると“ 要注意人物 ”の内容で似顔絵もついている。
「!!」

 周囲に誰もいないことを確認してこっそり広い道に出てくる華南。
 老婆の悲鳴が聞こえる。

 近くには大柄な男もいて大量の荷物は破れている。
 何者かはすでに去っていて華南は二人に声をかけることなく追いかける。
「?」
 老婆は華南の姿を見て疑問に思う。

 華南は追いかけ何者かは曲がり角へ逃げる。
 一瞬だけ見えた姿に違和感も感じる。

 ようやく周囲が壁で登ることすら困難な行き止まりに追い詰めるがそこには誰もいない。

「見つけた、やっぱりお前が。」
 華南は連れていかれる。
 行き止まりの端には雨避けのための溝がある。


 華南は縄で縛られて宙吊りの状態、足元にはネコ避けのトゲ。
 子ども達は下から棒や石で攻撃する。
「こいつが! こいつが!」
「待ってくれ! せめて、何があったのかだけでも教えてくれ。」
「しらばっくれやがって、俺のとうちゃんをコテンパンにしたんだろうが!」
「!?」
「正義感に強かったのにやられて、その上あんな恥ずかしいことにさせられて。
 半年くらい目を覚まさなかったんだぞ!」
「そうしたのは本当に私みたいなやつだったのか?」
「写真はないけど、似顔絵にもある通りだ。」
「頼むから少しだけ猶予をくれ。 必ず戻る。」
 華南は刀で縄を切ると去っていく。

「逃げた?」
「信用していいのかよあんなこと。」
「とりあえず後を追っていけばわかることだ。」

 子ども達三人は追いかける。
 その途中でうめき声を聞く。

 駆けつけると警官が上半身裸で拘束され顔に鼻フックをつけられて倒れている。
「とうちゃん!」
「なんてひどいことを・・・」
「やっぱりあいつがやったんだ! なにが調べるだ!」
 警官はなにかつぶやく。
「どうしたの?」
「(あ、あぶない・・・、 はやく逃げろ・・・)」 ボソボソ
「?」

 三人の後ろからなにかが迫ってくる。




 目を覚ますとまわりは真っ暗な空間。
 子ども達は腕や体を拘束されて動くのが困難。


「 いけない子達だ、いつまでも尻なんか追いかけて。 」

 三人の目の前に来たのは緑のボンデージを身につけた華南。

「お前が、よくもとうちゃんを!!」
華南「 正義感があればどんなものにも負けないって言ってたけどたいしたことなかったね。
 泣きながらこう言ってたよ、“ こういうふうにされるのは好きじゃないんだ ”って。 」
「鬼だ! 悪魔だ!」

華南「 さあ、話も長くなったわね。 いい加減しつこくつきまとわれるのも嫌だし、君達のような子をいたぶるのは趣味じゃないけど、やってあげるね。 」

 華南 はゆっくり歩みより子ども達は恐怖に震える。


 勢いよく扉を開けて入ってくる人物。
 みんなの前に来る。

「まさかな、私になりすまして人を襲ってるとは。」

 そこに来たのは華南で子ども達は二人を見比べる。
 ボンデージの 華南 は始め驚くが次第に不適な笑みを浮かべる。

華南 「 なにしに来たの? 邪魔しないでよね、私のニセモノさん。 」
華南「黙れ妖!」


 華南とボンデージの華南は戦う。


 その間に華南は子ども達の拘束を解く。
「早く逃げろ、なるべく遠くにだ。」
 子ども達は華南から何かを受け取って部屋から出る。


 向かってくるボンデージの華南と再び応戦する。

 ボンデージの 華南 は切られると液体になって地面に消える。


 華南は倉庫から出てくるがまだ警戒する。
 離れた場所で液体の状態からボンデージの 華南 に変わる。

華南 「 ちょっと油断しちゃったな~。 」
華南「そうか、お前は・・・、


 メタモルケル!!」
華南 「 あは、バレちゃってる。 まあいいや、説明よろしく。 」



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


[ メタモルケル ]

液状体の妖
すき間を通り抜けたりあらゆる生物になりすましたり体の一部を変形させて武器にすることもできる
ただし体積の都合上、ゾウやクジラのような大型のものにはなれない


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



華南「今までどれだけの人を襲った・・・」
華南 (メタモルケル)「さあね、いちいち覚えてないよ。
 ま、成りすましができるくらいには、かな。

 成りすますにも条件があってね、そいつの体に一度でも入らないといけないわけだし。
 前まではできるようなったら相手は やって たけど、それじゃあ面白くないと思って、最近はアタシの体に毒を入れて体に入ったときに流しこむ、そうすれば苦しむ顔も見れるようになるから楽しいよ。」
 華南は怒りに震える。

メタモルケル「アンタの体にも寝ているときに入って特別猛毒をいれたはずなのに、おかしいな。」
華南「そんなふうになると想定して私も体に解毒剤を仕込んだんだ。」



 華南は怒りのままにメタモルケルに攻撃する。
 しかし液体や形が崩れては人の形に戻るの繰り返し。
「諦めなよ、メタモちゃんには勝てないから。

 そろそろこの姿も疲れるね。」

 顔は華南から違う顔に。

「やっぱり、これが一番いいや。」

 メタモルケルは液状体のまま華南の体に絡みつく。
 華南はもがいているとメタモルケルは上半身のみ人の形になる。
「ねえ、苦しい? 苦しいよね。」

 華南は苦しみながら手を構えると火の玉を出してメタモルケルに飛ばす。

「あぶな!」
 メタモルケルは離れ、液状体になって地面に消える。
 華南は警戒する。

 不意打ちで地面から腕を刃物に変えて攻撃するメタモルケル、華南は変形した腕を掴んで手を構えると火炎放射する。

「ちょっとまずいかも・・・」
 メタモルケルは火を受けると怯んで地面に消える。

 華南も膝をついて疲労する。



 少年の自宅、
「かあちゃん!」
「どうしたのそんなに慌てて。」
「みんなだまされるんだ! 不審者とか言ってるけど、それに成りすましてるニセモノがいて。」
「なにを言ってるの?」
「それとこれ、そのお姉ちゃんがくれたんだ。 これがあればもう襲われることはないって。」
 少年は離れ際に華南からもらったお札を見せると母親に渡す。
「なによこんなもの!」
 母親は札をビリビリに破る。
「え・・・?」



 華南は人通りのない道を歩いている。
 手に持っていた不審者情報の紙を広げると自分の魔術で燃やして去っていく。


[報告書]
怪異調査協会本部宛

変幻自在の妖 メタモルケルを_町からお祓い

溝口 華南
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